PRESS RELEASE (技術)
2013年7月4日
株式会社富士通研究所
世界初!物理サーバをオンデマンドで提供可能なIaaS基盤技術を開発
利用者のニーズに合わせた構成の物理サーバを10分で提供可能
株式会社富士通研究所(注1)は、利用者のニーズに合わせた構成の物理サーバを10分で提供可能な物理IaaS(Infrastructure as a Service)基盤技術を世界に先駆けて開発しました。
現在、データセンターに設置した物理サーバを提供する物理IaaS(物理サーバホスティングサービス)では、サービス事業者がサーバの設置やサービス利用者の要求に応じてオプション構成変更を手動で行う必要があり、申し込みから利用開始まで数日を要しています。今回、富士通研究所が開発を進めている「資源プール化アーキテクチャー」(注2)によってオンデマンドで物理サーバを構成し、利用者に迅速に提供可能な物理IaaS基盤技術を開発しました。
本技術により、サービス利用者は、高性能な物理サーバの短時間利用やハードウェア構成の即時変更が可能となり、アプリケーション負荷に応じたサーバ台数の増減やサーバ自体の処理性能向上など、仮想IaaSで用いられている手法を物理IaaSにおいてもオンデマンドで手軽に活用できるようになります。また、サービス事業者においてはハードウェアリソースの利用効率が向上するとともに、自動化による運用コストの低減が見込まれます。
富士通研究所は、7月よりこの技術を用いた社内トライアルを開始し、クラウドサービスの高度化に向けたさらなる研究開発を進めていきます。
開発の背景
物理IaaSは、サービス事業者がデータセンターに設置した物理サーバをお客様に貸し出すホスティングサービスです。近年ではサーバ仮想化技術により、1台の物理サーバ上で仮想的に複数のサーバを仮想マシンとして動作させ、その仮想マシンを貸し出す仮想IaaSも広く利用されています。仮想IaaSは、利用者が必要な時に必要な分のサーバ資源を使用できる一方で、複数の仮想マシンで物理サーバ資源を共有するため、ほかの仮想マシンの使用状況により期待した性能が得られないという問題があります。特に安定した高いディスクアクセス性能が要求されるデータ処理などにおいては、性能にばらつきの起きない物理IaaSが必要とされています。
課題
物理IaaSでは、サービス事業者側がサーバの設置やハードウェアのオプション構成の変更を手動で行っています。このため、サーバの利用申し込みから提供までの時間や、利用開始後のオプション構成の変更に通常数日を要しており、仮想IaaSのようにオンデマンドで利用できないことが課題です。
開発した技術
富士通研究所では、これまで、データセンターのCPU・メモリ・ディスクなどのハードウェアリソースを分離してプール化し、それらを結合することで物理サーバを構成可能な「資源プール化アーキテクチャー」を開発してきました。
開発した資源プール化アーキテクチャーでは、CPU・メモリプールとディスクプールを高速インターコネクトのディスクエリアネットワークを介して接続することで、利用者の要望に応じた物理サーバをオンデマンドで構成できます。
従来の物理IaaSと新技術による物理IaaSのイメージ図
今回、資源プール化アーキテクチャーと、富士通のクラウド基盤ソフトウェアである「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」 (注3)のリソースプール管理機能とを統合した物理IaaS基盤技術を開発し、試作実装しました。開発した技術の特徴は以下の通りです。
- 資源プール化アーキテクチャーからの物理サーバ高速配備技術
「ServerView Resource Orchestrator」のIaaS機能では、利用者の定義したシステム構成に基づいて物理サーバや仮想マシンを提供できます。今回「ServerView Resource Orchestrator」のIaaS機能に、資源プール化アーキテクチャーで動的に構成した物理サーバを提供する機能を統合しました。
利用者の要求に応じて、資源プール化アーキテクチャーから物理サーバを構成し、固有情報(MACアドレスやBIOS設定など)を付与して、利用者にオンデマンドで提供します。構成したサーバへのローカルディスク追加などのオプション構成変更もオンデマンドで実施できます。
今回開発した技術を用いて、48台のサーバと512台のHDD/SSDからなるハードウェアリソースプール上に物理IaaSシステムを構築し、OS配備を含めた利用者への物理サーバ貸出を10分で完了できることを確認しました。
効果
従来、数日かかっていた物理サーバの提供やオプション構成変更を約10分に短縮することで、サービス利用者は、物理IaaSを仮想IaaSの手軽さでオンデマンド利用することが可能になります。高性能な物理サーバの短時間利用やハードウェア構成の即時変更が可能となり、アプリケーション負荷に応じたサーバ台数の増減やサーバ自体の処理性能向上など、仮想IaaSで用いられている手法を物理IaaSにおいてもオンデマンドで活用できるようになります。また、サービス事業者においてはハードウェアリソースの利用効率が向上するとともに、自動化による運用コストの低減が見込まれます。
今後
富士通研究所は、開発した物理IaaS基盤技術を用いた社内トライアルを7月より開始します。機能や性能を検証し、クラウドサービスの高度化に向けたさらなる研究開発を進めていきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 株式会社富士通研究所:
- 代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
- 注2 資源プール化アーキテクチャー:
- データセンターのCPU・メモリ・ディスクなどのハードウェアリソースを分離してプール化し、それらを結合することで物理サーバを構成するアーキテクチャー。
「世界初!高性能と柔軟性を同時に実現する次世代サーバの試作に成功」(2011年9月26日 プレスリリース) - 注3 「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」:
- ダイナミックリソース管理ソフトウェア。ICTリソースの有効活用と運用・管理の効率化を実現するプライベートクラウドの基盤ソフトウェア。
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ICTシステム研究所 システムプラットフォーム研究部
044-754-2177(直通)
mangrove-pr@ml.labs.fujitsu.com
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