このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. 業界初、水性塗料をICT機器のプラスチック筐体に適用

PRESS RELEASE (環境)

2013年3月4日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

業界初、水性塗料をICT機器のプラスチック筐体に適用

溶剤系塗料と比較し、石油使用量54パーセント、揮発性有機化合物(VOC)を80パーセント削減

富士通株式会社(以下、富士通)と株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)はこのほど、業界で初めて、サーバやパソコンなどのICT機器のプラスチック筐体に適用可能な水性塗料を開発し、2013年発売のUNIXサーバ「SPARC M10(スパーク エムテン)」の「SPARC M10-4」、「SPARC M10-4S」2モデルの本体フロントパネルに適用しました。

今回開発した水性塗料は、2種類の樹脂からなるコアシェル構造(注2)の採用、揮発状態の調整により、樹脂粒子間の融着、低温乾燥での塗装を実現しています。本水性塗料は、従来の溶剤系塗料と比べて、新たに使用する石油の使用量を54パーセント(以下、%)、揮発性有機化合物(注3)(以下、VOC)を80%削減できます。

今後も、サーバ、ノートパソコンなど自社製品への適用拡大を図り、省資源化と環境負荷の低減に取り組んでいきます。

背景

VOC は、大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の一つとされています。VOCは塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれており、その排出量の約40%を塗料が占める(注4)ため、塗料に含有されるVOC削減が地球環境保全において重要な課題となっています。

塗料は、塗膜になる成分として色や光沢を出す顔料と膜になる樹脂があり、また塗膜にならず揮発する成分として塗料を希釈し塗りやすくする溶剤と助剤で構成されます。VOCの大部分が溶剤に含まれることから、VOC削減には、溶剤によって樹脂を溶かす溶剤系塗料から、水に塗料を混ぜて使う水性塗料への切り替えが有効です。

課題

現在、サーバやパソコンなどのICT機器の塗装には溶剤系塗料が用いられていますが、水性塗料に切り替えるためには、樹脂粒子を融着させるための塗装乾燥、またICT機器の筐体塗装に求められる塗膜性能の点で課題がありました。

まず、溶剤系塗料は、塗膜となる樹脂粒子が溶剤に溶解しているので、塗装面に密着しやすい一方、水性塗料は、樹脂粒子が水に溶解せず微粒子として存在しているので、樹脂粒子間を接近、融着させるために、水分を蒸発させる必要があります。通常の水性塗料は、水分を蒸発させ乾燥するために、乾燥温度を100度以上にする必要がありますが、ICT機器で使われているプラスチック筐体は、高い乾燥温度に耐えることができず、変形してしまうという問題がありました。さらにICT機器の筐体塗装では、硬度、密着性、耐薬品性、耐候性、意匠性などの高い塗膜性能を持つ必要がありました。

開発した技術


溶剤系塗料と水性塗料の組成比較

富士通研究所では、プラスチック筐体の形状が変形しない乾燥温度で、樹脂粒子を融着させることができ、またICT機器に適用可能な塗膜性能が得られる水性塗料を開発しました。

今回開発した水性塗料は、揮発状態を調整することで、プラスチック筐体の形状変形が発生しない65度の低温乾燥を可能としました。また、コアシェル構造を構成する2種類の樹脂を用いて、シェル部(殻)に柔らかい樹脂を適用することで樹脂粒子間の融着を促進し、コア部(核)に硬い樹脂を適用することで、ICT機器に適用可能な硬度を得られる硬く強い膜を形成し、ICT機器の筐体に求められる塗膜性能を実現しています。

本水性塗料を使用することで、VOC排出量を従来の溶剤系塗装と比較して80%削減できます。さらに本水性塗料は、溶剤を用いないことで、非再生資源である石油の使用量を54%低減し、省資源化に寄与します。このたび、業界で初めて富士通のUNIXサーバ「SPARC M10-4」と「SPARC M10-4S」の本体のフロントパネルにこの水性塗料を適用しています。


(左)「SPARC M10-4S」(右)水性塗料の適用部分

今後、「SPARC M10」以外のICT機器への適用拡大を図ることにより、より一層の省資源化と環境負荷の低減に取り組んでいきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 富田 達夫。
注2 コアシェル構造:
2種類の化学種の一方が核(コア)を形成し、もう一方の化学種がその周囲を取り囲んだ殻(シェル)である構造のこと。
注3 揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds):
常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称。環境中へ放出されると、公害などの健康被害を引き起こす。
注4 VOC排出量の約40%を塗装が占める:
PDF 2010年環境省資料

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

環境本部 環境技術統括部
電話 044-754-3417(直通)


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。