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PRESS RELEASE

2013年3月14日
富士通株式会社

宇宙に最も近い大型電波望遠鏡「アルマ」のスーパーコンピュータが稼働

自然科学研究機構国立天文台(所在地:東京都三鷹市、台長:林 正彦、以下、国立天文台)様は、富士通グループと共同で、チリで進められている世界最高の感度と分解能を誇る大型電波望遠鏡アルマ(正式名称:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、以下、アルマ)のプロジェクトにおいて、専用スーパーコンピュータ 「ACA相関器システム」を開発し、このたび稼働を開始しました。チリの現地時間3月13日には「アルマ望遠鏡開所式」が開催されます。

本システムは、当社のPCサーバ「PRIMERGY」35台と専用計算機で構成され、望遠鏡のアンテナが受信する毎秒5,120億個の電波信号データを、毎秒120兆回の計算速度でリアルタイムに処理する性能と、標高5,000メートル、0.5気圧という過酷な環境での安定動作が求められるチャレンジングなシステムであり、16台のアンテナ群が受信する大量の信号のデータ処理を一手に引き受けています。


アルマ望遠鏡 完成予想図

アルマは、東アジア(日本:国立天文台様が主導)、北アメリカ、ヨーロッパが協力して、チリの標高5,000メートルの高原に建設した、世界最高の解像度の天体電波画像を得ることができる大型電波望遠鏡です。山手線の内側と同程度の規模である、直径約18.5キロメートルの敷地にパラボラアンテナを66台配置し、アンテナから受信したミリ波・サブミリ波(注1)の信号を計算機で処理することで、最大直径18.5キロメートルの巨大なパラボラアンテナを使った場合と同等の高画質な電波画像が合成できます。これにより、宇宙ができて間もない頃の生まれたての銀河や、星の誕生や太陽系のような惑星系の誕生、有機分子などの生命に関連した物質など、光(可視光)では見えない暗黒の宇宙が見えてきます。

国立天文台様と富士通グループは共同で、高感度の観測が可能な「アタカマコンパクトアレイ」(注2)のデータ処理を担う、専用スーパーコンピュータ 「ACA相関器システム」を開発しました。

本システムは、当社のPCサーバ「PRIMERGY」35台と、株式会社富士通アドバンストエンジニアリング(所在地:東京都新宿区、社長:小原 恒明)が開発した専用計算機で構成されます。このシステムでは、遠い天体などからの非常に微弱な受信電波を、約50万の周波数帯域に分割して処理し、観測に適したデータとして出力することができます。これは宇宙に存在するガスが毎秒5メートルの速さで動く様子まで捉えることが可能な分解能です。

「ACA相関器システム」の特長


ACA相関器システム

  1. 大量のデータをリアルタイム処理

    「ACA相関器システム」に入力されるデータは毎秒5,120億個(毎秒約200ギガバイト)にものぼり、これは家庭用光回線(毎秒100 メガビット)2万本分に相当します。

    この大量のデータを、毎秒120 兆回という超高速計算でリアルタイム処理します。できるだけ計算回数を減らし効率的に データを処理するためのさまざまな工夫を行っています。

  2. 過酷な環境で安定動作

    標高5,000 メートル、0.5気圧という過酷な環境での安定動作を実現しました。本システムの設計においては、0.5気圧による冷却効率の低下を克服するため、4,096個の同一処理LSIユニットを並列配置し、1,024本の光ファイバーで相互接続することで、冷却に必要な空気の流れを確保し、発生熱量の偏在と高密度化を防止しています。

  3. 安定運用を支えるリモートメンテナンスシステム

    エンジニアが常駐することが難しい高地での安定運用を支えるため、2,900m地点にある山麓施設や日本からリモートで、機器の診断やソフトウェアなどのレベルアップといった保守作業を行う必要があります。

    リモートでの迅速かつきめ細かいオペレーションを可能とするため、データ処理の流れを相関器内の多数のポイントで常時監視・記録する機能や、内蔵した大量のテスト用データを使って実運用状態を再現し、障害の特定精度を高める機能などを搭載しています。

  4. 高い価格性能比

    従来の相関器は、LSIを専用に開発して実現されることがほとんどで、そのために多大な費用を要していました。

    本システムでは、FPGA(注3)と呼ばれる汎用LSIを採用し、アンテナから受信するデータを250マイクロ秒ごとに分割し、4,096個のLSIに分配する、並列演算方式を新たに開発することで、高い価格性能比を実現しました。

国立天文台 アルマ室長 井口聖 教授からのコメント

アルマ望遠鏡による観測で、銀河がどのように生まれ進化してきたのか、太陽系のような惑星を持つ惑星系はどのようにして生まれるのか、さらには生命の起源は宇宙にあるのか、といった謎に迫れることを期待しています。「ACA相関器システム」のデータ処理は、このような電波天文学の研究には不可欠な存在です。

アルマ望遠鏡により、天文学の新しい世界が切り拓かれると私は確信しています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 ミリ波・サブミリ波:
電波の中で、1~10mmの波長帯がミリ波、1mm以下の波長帯がサブミリ波。ALMAはこの波長帯の電波を捉え、可視光では見ることができない暗黒の宇宙を描き出す。
注2 アタカマコンパクトアレイ:
アルマ望遠鏡の画質向上のために導入される小口径の干渉計システム。日本が開発と製造を担当する。直径7メートルの超高精度アンテナ12基と単一鏡観測仕様の超高精度12メートルアンテナ4基からなる。このシステムを導入すれば電波強度を正確に測定でき、物質の量についての定量的な解析が可能となる。
注3 FPGA:
Field-Programmable Gate Array。製造・出荷後に構成を設定できる集積回路。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部 TC統括営業部
電話 03-6252-2550(直通)


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