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PRESS RELEASE

2012年12月10日
国立大学法人横浜国立大学
富士通株式会社

大学生の学力向上に向け、行動を可視化する「学習特徴チャート」機能を開発

授業支援システム「CoursePower」の強化により個別指導を支援

国立大学法人横浜国立大学(所在地:神奈川県横浜市、学長:鈴木 邦雄、以下、横浜国立大学)と富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 正已、以下、富士通)は協働で、富士通の大学向け授業支援システム「CoursePower(コースパワー)」に蓄積される学習履歴データから、学生一人ひとりの予習・復習・講義への参加状況を分析し、積極性、計画性、継続性などの学習行動の特徴をチャートで示す機能を国内で初めて開発しました。

これにより教員は、学生のテストやレポートの結果だけではなく、理解度に大きな影響を与えると言われている学習行動の特徴も一目で把握することができ、より適切な個別指導ができます。

富士通は、2011年6月から2012年11月まで、横浜国立大学を中心とした高等教育機関での計3,412講義の学習履歴データを利用して学習行動と成績の関係性の検証を重ねてきており、可視化するべき学習行動が明確になってきました。今回、学習行動の特徴を分析してチャート化する機能を開発し、2013年4月に、横浜国立大学で本機能を搭載した「CoursePower」の本格運用を開始する予定です。

世界的に教育データの分析・活用は教育分野での大きなトレンドとなると予測(注1)されている中、横浜国立大学と富士通は、本機能の活用提案を行い、本分野に積極的に取り組んでいきます。

背景

少子化・グローバル化の進行により大学間の国内外の競争は激化しており、学校教育法では教育の質保証のため、大学の自己点検結果の公表を義務付けています。また、入試制度・高校教育の多様化から、学生の学力と指向が多様化しており、学生一人ひとりの学力に応じた指導が求められています。さらに、文部科学省によりICT活用教育が推進され、学習教材の配信・テストの実施・レポートや成績管理などの情報を統合管理するシステムとして授業支援システム(Learning Management System、以下、LMS)を導入する大学が増加しています。

横浜国立大学でも2010年より富士通の大学向け授業支援システム「CoursePower」を導入しており、富士通はLMSに蓄積される学習履歴データを大学の自己点検や学生の学習行動点検に活用する研究を2年前に開始していました。

横浜国立大学と富士通は教育の質の向上を先導的に実施するため、本機能の研究と開発に取り組みました。

学習行動の可視化の概要

共同研究内容

富士通は、「CoursePower」に蓄積された、資料教材の参照日時、レポート課題参照日時とレポート提出日時などの学習履歴データの分析と機能開発を行い、横浜国立大学は、教育学・統計学の専門的な知見の提供と実用性評価を行っています。

富士通は、理解度が深まると考えられる学習行動をリストアップし、LMSのログからこれらの行動量(参照数・提出数・発言数など)の多いものに高い点数をつけ、成績と相関関係のある60種類の学習行動(注2)を抽出しました。次に、著名な複数の学習モデルを参考に、各学習行動が積極性、継続性、計画性のいずれを示すかによって分類し、学生一人ひとりがひとつの講義に対して行った行動を、積極性、継続性、計画性を指標としたレーダーチャートで表現する機能を開発しました。

また、大学の自己点検ツールとして活用可能な教員ごとの講義数・受講者数統計、LMS利用状況統計などの機能についても横浜国立大学の評価を受け、強化しています。

さらに、富士通研究所も本機能の精度向上のため、受講者数などの講義特性に応じて講義をグループ化し、学習行動と成績の関連性をグループごとに推測する技術を開発しています。富士通は今後この技術を利用し、「CoursePower」の学習支援機能を強化していく予定です。

効果

  1. 個別指導の改善、ドロップアウト防止

    教員は、レーダーチャートの示す形状から学生の学習行動の特徴を把握することができ、面積の大小からは、学生の取り組み状況を把握することができるため、ドロップアウトする可能性の高い学生を早期に発見することができます。クラス全体のレーダーチャート一覧で、学習行動が停滞している学生を発見した場合は、学生個人にフォーカスした詳細な学習レポートを表示し、各種教材の参照状況などから自動的に分析された、「授業日以降に公開された各資料を数週間経過後にまとめて参照する場合がある」、「各予習資料を授業前に参照する率が高い」というような行動特徴を参照することができ、より適切な個別指導や講義の改善に活用できます。

  2. 教員の講義の自己評価、大学の自己点検・評価の支援

    今回の共同研究により、「CoursePower」の統計機能に、教員ごとの講義数・受講者数の推移、教材・お知らせの参照状況、教材の実施状況(進捗、合否など)、受講者全体の出席率の推移などを可視化する機能もあわせて追加しており、教員の講義や学生指導の自己評価、大学の自己点検・評価に活用することができます。

  3. 学生自身の学習行動振り返り

    学生は、学習状況の比較グラフから、自身の出席率、レポート提出率、資料参照率などをクラストップやクラス平均と比較して、講義への取り組みを見直すことができます。また、在学中に累積された学習履歴・行動履歴の一覧から、大学での学習全体を振り返ることができます。

今後

横浜国立大学は、本機能の利用により、講義の振り返りと学生指導を行うよう学内で推進していく予定です。また、構築中の学生ポートフォリオシステム(注3)と「CoursePower」を連携させ、学習ポートフォリオとして発展させていく計画です。

富士通は、「CoursePower」のさらなる有用性の向上を目指し、本機能評価と改善を継続していきます。将来は、卒業後の就職に関するデータも分析対象とし、在学生向けの学習プランニングを含めたキャリア指導を支援する機能や、他の学内システムとの連携によりさらに詳細な学習状況を可視化する機能などの拡充を図り、学習履歴データ活用の面からも、大学教育の充実と発展をサポートしていきます。

本機能のプロトタイプを12月17日(月曜日)から3日間、神戸国際会議場にて開催される「大学ICT推進協議会(注4) 2012年 年次大会」に出展します。また、19日午前の企業セミナーにおいて概要を紹介します。

ご参考: 共同研究役割分担

  1. 横浜国立大学の役割・担当作業
    1. LMSのデータ、成績データ、出席データ提供
    2. 仮説立案に対するアドバイス
    3. 分析結果の実用性評価
  2. 富士通の役割・担当作業
    1. プロジェクト管理
    2. 仮説立案、分析
    3. プログラム開発

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 大きなトレンドとなると予測:
米国最大級の高等教育機関のひとつであるEDUCAUSEにより、教育データの活用が数年後には教育分野でのFacebookやTwitterの活用に続く大きな技術トレンドとなると予測されている。
注2 学習行動と成績の相関関係:
学習行動の点数と成績の相関分析を行い、相関が有意であると判定している。
注3 学生ポートフォリオシステム:
学務情報システム(履修情報、成績情報)と連携して在学中の学習過程を記録・保存・活用し、学習やキャリアデザインの支援を行うシステム。
注4 大学ICT推進協議会:
高等教育・学術研究機関における情報通信技術を利用した教育・研究・経営の高度化を図り、我が国の教育・学術研究・文化ならびに産業に寄与することを目的とした協議会。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

国立大学法人横浜国立大学
情報基盤センター 副センター長 徐 浩源
電話 045-339-4390
受付時間: 9時~17時
(土曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)

富士通コンタクトライン
電話 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分
(土曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)


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