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PRESS RELEASE (技術)

2012年9月20日
株式会社富士通研究所

業界初!温度補償機能を搭載したCMOS電力検出器を開発し、
実装面積従来比1/25、消費電力1/10以下を実現

スマートフォンなどの無線通信端末の小型化・低コスト化に貢献

株式会社富士通研究所(注1)は、スマートフォンなどの無線通信端末に搭載するための、小型で低電力な温度補償機能搭載のCMOS電力検出器を開発しました。

無線通信端末において部品や回路の実装面積を削減することは、小型化、低コスト化のために重要ですが、無線通信端末の送信部に用いられる電力検出器は、複数の高周波増幅器で構成されているため、実装面積が大きいという課題がありました。また、電力検出器の小型化のためにダイオードを用いる手法が知られていますが、ダイオードは温度によって特性が変化するため温度補償を実現することが困難でした。

今回、ダイオードを用いて電力検出を行い、同時に温度補償を実現する技術を開発することで、電力検出器の実装面積0.04平方ミリメートル(mm2)、消費電力0.3ミリワット(mW)を実現しました。これにより、従来に比べ、電力検出器の実装面積を1/25、消費電力を1/10以下に削減することができ、今後、無線通信端末の小型化、低コスト化に大きく貢献することが期待されます。

本技術の詳細は、9月17日(月曜日)からフランスで開催される国際会議「ESSCIRC 2012(European Solid-State Circuits Conference 2012)」にて発表します。

開発の背景

近年、スマートフォンやタブレット端末に代表される無線通信端末が急速に普及しています。無線通信端末には多くの部品が用いられているため、部品や回路の実装面積を削減することは、小型化、低コスト化のために重要です。

無線通信端末の送信部分には、端末から基地局へ電力を増幅して送信するためのパワーアンプ(電力増幅器)と、その電力の強度を検出する電力検出器が必要です。近年の無線通信端末は、複数の周波数帯に対応しており、それぞれの周波数帯用のパワーアンプの出力に対して、その個数分の電力検出器が必要になるため、電力検出器の実装面積を削減することは特に重要になっています。

課題

一般的な電力検出器は、分配器を経由して得られたパワーアンプからの小さな信号を高周波増幅器で増幅し、整流などの変換処理を行うことによって検出を行います(図1)。しかし、パワーアンプの広い出力電力に対応して信号を増幅するためには、複数段の高周波増幅器が必要になり、実装面積を小さくすることが困難でした。

また、小型化のための1つの手段としてダイオードを用いて整流する手法が知られていますが、ダイオードは温度によって特性が変化するため、単に組み込むだけでは電力検出器の特性が変化してしまいます。特に、ダイオードを用いた電力検出器とパワーアンプを集積化した場合、パワーアンプの自己発熱によってチップの温度、すなわち、電力検出器が受ける温度が変動します(図2)。この自己発熱量は、パワーアンプの出力電力に応じて変化するため、温度変動によって電力検出の精度が悪化します。


図1 従来の電力検出器


図2 電力検出器をパワーアンプに集積化した場合に受ける温度の影響

開発した技術

今回、高周波増幅器を不要とし、ダイオードを用いて電力検出を行い、同時に温度補償を実現する技術を開発しました(図3)。電力検出は、ダイオードを用いて電力に比例する電流を生成することにより実現します。


図3 今回開発の電力検出器の構成ブロック図

また、温度変動は、温度によって変化する電流を同じダイオードを用いて別途生成し、検出された電流から差し引くことによって補償します(図4)。温度が変化し、ダイオードに流れる電流が変化しても、温度変化に相当する電流を同じ量だけ差し引くことにより、温度に依存せず電力に比例した電流のみが検出できます。


図4 今回開発の電力検出器の動作概要

本技術を適用した電力検出器を90ナノメートル(nm)のCMOSテクノロジーを用いて試作した結果、実装面積0.04mm2(従来、約1mm2)、消費電力0.3mW(同、約 5mW)を実現しました。これにより、従来に比べ、電力検出器の実装面積を1/25、消費電力を1/10以下に削減することが可能になります。


図5 今回開発の電力検出器のチップ写真

また、-30℃~125℃の温度範囲内において、従来と同等レベルの検出精度(検出誤差が±0.5デシベル(dB)以内に収まる入力ダイナミックレンジ(注2)は20dB以上)を実現しました。今回の試作で対応した周波数は、WCDMA(注3)の通信方式で用いられている3つのバンドBandⅠ(2.1ギガヘルツ(GHz)帯)、BandⅤ(850メガヘルツ(MHz)帯)、BandⅨ(1.7GHz帯)ですが、本技術はLTE(注4)の通信規格に適用することも可能です。また、小型で低電力、かつ、温度補償機能を搭載しているため、パワーアンプとの集積化も可能になります。

効果

複数の周波数に対応する市販のパワーアンプに組み込んだ場合、従来に比べパワーアンプ周辺の基板実装面積を大幅に削減させることが可能になり、無線通信端末の小型化、低コスト化に大きく貢献できます。

今後

今回開発した技術を応用し、今後の新しい無線通信規格に対応できるよう、検出可能な電力範囲の拡大および検出精度の向上を進めていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 入力ダイナミックレンジ:
入力信号を対応するデシベル(dB)に変換し、最大と最小の信号レベルの比率を表したもの。
注3 WCDMA:
Wideband Code Division Multiple Accessの略で、第3世代移動通信規格(3G)。
注4 LTE:
Long Term Evolutionの略で、ワイヤレス無線機器における最新の移動通信規格。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
プラットフォームテクノロジー研究所
電話 044-754-2690(直通)
メール powdet@ml.labs.fujitsu.com


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