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PRESS RELEASE (技術)

2012年6月20日
株式会社富士通研究所

世界初!窒化ガリウムHEMTを用いた小型・高出力な10GHz帯送受信1チップ集積回路を開発

従来比1/10以下の小型化を実現し、レーダー機器やワイヤレス通信機器の小型化に貢献

株式会社富士通研究所(注1)は、窒化ガリウム(GaN)(注2)高電子移動度トランジスタ(HEMT)(注3)を用いて、10ギガヘルツ(以下、GHz)帯で、6.3ワット(以下、W)出力の送受信1チップ集積回路を世界で初めて開発しました。

従来、高出力な送信信号と微弱な受信信号を1チップ上で同時に扱う場合には、送受信号を効率よく切り替えることと、送信信号が受信信号に与える影響を低減することが必要となりますが、これらを両立することが技術的に困難でした。

今回、GaN-HEMTを用いた低損失な送受切替器を開発し、また、送受信間の信号干渉を抑制する高出力回路集積化設計技術により、これら課題を解決しました。送受信部の大きさを3.6mm×3.3mmと従来の複数のチップを使用した場合に比べ1/10以下に小型化し、10 GHz帯で出力6.3Wを実現しました。

本技術により、単一のチップで高出力の送受信機を構成することが可能となり、レーダー機器やワイヤレス通信機器などのシステムの小型化の実現に貢献します。

本技術の詳細は、6月17日からカナダ モントリオールで開催されるマイクロ波の国際学会「IEEE MTT 2012 International Microwave Symposium(IMS2012)」にて発表いたします。

窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)とは

GaNは、青色LEDの材料として使われており、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)といった従来の半導体材料と比較して、電子の移動速度が高速で、かつ、電圧による破壊に強いという特長を持っています。このため、GaNを用いたトランジスタであるGaN-HEMTは、高出力で高効率の動作が期待されています。

開発の背景

ネットワーク社会の進展に伴い、さまざまな無線システムの電波需要はさらに増加することが見込まれます。たとえば、航空機のレーダーでは、物体までの距離や方向を精密に測定できる10GHz帯を利用しています。

現在のレーダーは、送信機・受信機がそれぞれ別々の装置で構成されていますが、送受信機の機能を統合した送受信チップがあれば1つの装置で対応することが可能となり、システムを小型化できます。


図1 10GHz帯の利用シーン

課題

レーダーなどの機器の小型化に必須となる送受信チップには、通信の大容量化と広いエリアをカバーするための高出力化が求められています。高出力な送信信号と微弱な受信信号を1チップ上で同時に扱う場合には、送受信号を効率よく切り替えることと、送信信号が受信信号に与える影響を低減することが必要となりますが、これらを両立することが技術的に困難でした。

開発した技術

今回、GaN-HEMTを用いて、10GHz帯において、高出力で小型の送受信チップを世界で初めて実現しました。開発した技術の特長は以下の通りです。

  1. 超小型送受切替器

    GaN-HEMTを用いた送受切替器を新たに開発しました(図2右)。サイズは1.8mm×2.4mmと小型で、0~12GHzで伝送損失1.1デシベル(以下、dB)の世界最高レベルの性能を達成しました。従来の磁性体を用いた送受切替器(図2左)に比べ1/10以下の大幅な小型軽量化が可能になります。


    図2 送受切替器の従来品と開発品との比較

  2. 高出力回路集積化設計技術

    トランジスタの周りに接地ビアホールを配置し不要な信号放射をシールドするとともに、電磁波の3次元解析により信号配線・回路を適切な位置に配置し、不要な信号干渉を抑制しました(図3)。本技術により、大きな出力を有する回路を発振などの誤動作を起こすことなく安定に動作させることが可能になります。


    図3 不要な信号干渉を抑制する技術

今回開発した技術を用いて、送受切替器、送信増幅器、受信増幅器を集積した送受信1チップの集積回路を試作しました(図4)。10 GHz帯で出力6.3Wを実現しつつ、チップサイズを3.6mm×3.3mmと従来の複数チップを用いた場合に比べ1/10以下に小型化しました。


図4 開発したGaN送受信チップの写真と構成

効果

本技術を用いることで、単一のチップで高出力の送受信機を構成することが可能となり、広帯域通信やレーダーなどの機器の小型・軽量化が可能となります。

今後

本技術を、高出力で小型化が要求されるワイヤレス機器やレーダーなどに幅広く適用する予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 窒化ガリウム(GaN):
ワイドバンドギャップ半導体で、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)など従来の半導体材料に比べ、電圧による破壊に強いという特長あり。
注3 高電子移動度トランジスタ(HEMT):
High Electron Mobility Transistor。バンドギャップの異なる半導体の接合部にある電子が、通常の半導体内に比べて高速で移動することを利用した電界効果型トランジスタ。1980年に富士通が世界に先駆けて開発し、現在、衛星放送用受信機や携帯電話機、GPSを利用したナビゲーションシステム、広帯域無線アクセスシステムなど、IT社会を支える基盤技術として広く利用。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
基盤技術研究所 先端デバイス研究部
電話 046-250-8229(直通)
メール gan-hemt-press@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。