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PRESS RELEASE (技術)

2012年5月31日
株式会社富士通研究所

光インターコネクト向け小型光トランシーバで、
従来の2倍のデータ転送速度25Gbpsを実現する技術を開発

サーバ内のデータ通信用に活用することで、次世代サーバの性能向上に貢献

株式会社富士通研究所(注1)は、次世代の高性能サーバを実現するにあたり、サーバ内での高速・広帯域なデータ通信用の光インターコネクトに必要となる小型・低コストな光トランシーバ技術を開発しました。

次世代の高性能サーバを実現するためには、現在使われている光トランシーバでは、速度や実装サイズの点で課題がありました。今回、ドライバIC回路とモジュールの実装構造の工夫により、従来の約2倍の転送速度となる、次世代インターコネクトで必要な1チャンネル(以下、ch)あたり毎秒25ギガビット(以下、Gbps)の転送速度を実現しました。

本技術により、サーバ内のCPU間や、CPUと周辺デバイス間でやり取りされるデータを高速・広帯域に転送することが可能となり、スーパーコンピュータや高性能サーバなどの性能向上に大きく寄与することができます。

本技術の詳細は、5月29日(火曜日)から米国サンディエゴで開催される電子部品の実装技術に関する国際会議ECTC2012(IEEE 62nd Electronic Components and Technology Conference)で発表します。

開発の背景

近年、CPUの高性能化にともない、サーバのデータ処理能力が著しく向上しています。さらに、1つのCPUに多数のプロセスを集約させる仮想化技術も進展しており、CPU間や、CPUと周辺デバイス間でやりとりするデータはますます増大しています。このデータ増大の解決策として、すでにサーバ間を1chあたり10Gbps程度の転送速度で接続する光インターコネクトが適用されていますが、次世代の高性能サーバ実現に向けて、さらに高速化した25Gbpsの転送速度への期待が高まっています。また、図1に示すようにサーバ間だけでなく、転送速度の増大に伴い転送が難しくなっているサーバ内のボード間接続を、電気通信に代わって光インターコネクトを適用することで高速・広帯域なデータ通信を実現することが期待されています。


図1 サーバ内での光インターコネクト適用例

課題

サーバ内での光インターコネクトを実現するためには、電気信号を光信号に変換する光トランシーバが必要になります。従来の光トランシーバは転送速度が10~14Gbpsのため、次世代向けに期待されている転送速度25Gbpsを実現するためには光トランシーバそのものの速度向上が課題でした。また従来の光トランシーバはサイズが大きいためCPUなどのデバイスの直近に配置することが難しく、デバイスから光トランシーバまでの電気配線の距離が長くなります。そのため配線損失や配線間干渉により電気信号の品質が劣化し、高速化が難しいという課題がありました(図2)。


図2 サーバ内光インターコネクトのための光トランシーバ課題

開発した技術

今回、サーバ内での高速・広帯域なデータ通信用の光インターコネクトに必要となる小型光トランシーバを実現するために、電気(光)信号を光デバイスにより光(電気)信号に変換する光電変換部を開発しました。開発した技術の特徴は、以下の通りです。

  1. 高速回路技術

    光デバイスを駆動するためのIC回路に、応答性能が劣る安価な光デバイスを用いても発光した光信号波形の立ち上がり立下りを急峻にする回路技術と、電気信号の波形を劣化させる多重反射を抑制する回路技術を搭載することで高速化を実現しました。これにより、1chあたりの転送速度を、従来の10~14Gbpsから25Gbpsまで高速化しました。

  2. 小型光結合技術

    従来、光電変換部と光ファイバーとの間で光信号を効率よく伝達(光結合)するために、光結合部はレンズ部品と光コネクターを用いて構成されていましたが(図3)、レンズ部品のサイズが大きく、コストが高いことが課題となっていました。今回、フレキシブル基板に光デバイス、ICを実装して光電変換部を構成することで光トランシーバの小型化を図り、さらに、安価なフィルム状のレンズシートを開発しフレキシブル基板の裏面に積層する構造にすることで(図4)、本課題を解決しました。光デバイスと光導波路間の光結合を高めることができるため、高速化による受信感度の低下を補うことができます。


    図3 一般的な光電変換部構造(断面図)


    図4 開発した光電変換部構造(断面図)

    本技術を用いて4ch x 25Gbpsの光電変換部を試作しました(図5)。22ミリメートル(mm) x 9mm x 0.86mm(搭載電子部品、光導波路を含む)のサイズで、従来のレンズ部品を搭載した光電変換部に比べ、レンズ部で10分の1以下、光電変換部で3分の1以下の薄型化を実現しました。またこの薄さを活かして、試作した光電変換部を両面に搭載した光トランシーバを開発しました(図6)。送受信それぞれ8ch搭載で、47.8mm x 16 mm x 21.6 mmの小型化を実現しており、プリント基板上のCPUなどのデバイス近傍に小面積で実装することが可能となります。


    図5 試作した光電変換部


    図6 開発技術を適用した光トランシーバの外観

効果

本技術により、次世代インターコネクトで必要な1chあたり25Gbpsを小型・低コストに実現できます。これによりサーバ内でのデータ通信を高速・広帯域化することができます。

今後

開発した技術を高性能サーバに適用するための研究・開発を進め、3年以内にサーバ内での光インターコネクトの実用化を目指します。また、今回開発した技術を広く情報機器・通信機器の高性能化に展開していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所 フォトニクス研究部
電話 044-754-2836 (直通)
メール optical-connect-trs@ml.labs.fujitsu.com


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