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PRESS RELEASE

2011年10月25日
富士通株式会社

東京大学宇宙線研究所様の新PCクラスタシステムを受注

「スーパーカミオカンデ」によるニュートリノ研究を支える実験解析システム

当社は、東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設(所在:岐阜県飛騨市、施設長:鈴木 洋一郎、以下、神岡宇宙素粒子研究施設)様より、ニュートリノ(注1)の観測を通じて宇宙の仕組みを解明する「スーパーカミオカンデ」の実験解析システムを受注しました。

実験解析システムは、「スーパーカミオカンデ」の検出器にある1万1,000本以上の光電子増倍管から集められる膨大なニュートリノに関するデータを蓄積・解析するシステムで、検出器とともに、研究施設の根幹を成すものです。

今回の新システムは、当社のブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」142台を用いたPCクラスタシステムと、ストレージシステム「ETERNUS DX80 S2」、スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FEFS」を用いた高速分散ファイルシステムを中心に構成されています。システム全体の演算性能はSPECint_rate2006で33,000(注2)となり、従来システムの約2倍(注3)、ディスク容量は従来の約4.4倍、データ転送速度は約7倍向上し、消費電力は約22%削減(注4)される予定です。

当社は、新システムにより、神岡宇宙素粒子研究施設様のニュートリノ研究の効率化を支援し、ニュートリノの性質、さらには宇宙の成り立ちの解明に貢献してまいります。

新実験解析システムは、2012年3月に稼働する予定です。

新実験解析システム導入の背景

神岡宇宙素粒子研究施設様では、宇宙の誕生や物質生成の謎の解明のため、岐阜県飛騨市神岡町に建設した「スーパーカミオカンデ」を用いて、素粒子ニュートリノの観測を続けています。実験解析システムは、「スーパーカミオカンデ」が観測したニュートリノの膨大なデータを蓄積し、解析するためのシステムです。太陽ニュートリノや大気ニュートリノのほか、超新星ニュートリノなど数十年に1度、十数秒ほどしか訪れないケースも確実に観測するため、24時間365日の安定稼働と、高速な解析処理、そして、1日あたり500GBに及ぶ膨大な観測・解析処理後のデータを確実に格納することが求められています。また、数ヶ月から数年分のデータをまとめて再解析するために、過去の膨大なデータに高速にアクセスできることが必要となります。

新システムでは、これらの要件を満たすため高信頼性、データ転送性能や解析性能の向上、また、今後5年間の観測に必要なストレージ容量の大幅強化と、負荷が集中した場合の解析リソース配分などいっそうの解析の効率化、そして消費電力の削減が求められました。

新実験解析システムの概要

新実験解析システムは、計算サーバ、高速分散ファイルシステム、ファイルシステム管理サーバ、坑内実験サイトデータ処理システムからなり、最新CPUおよび最新ディスクを用いたシステムにより、従来システムより演算性能で約2倍、ディスク容量で約4.4倍、データ転送速度で約7倍向上しています。また、スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FEFS」、HPCミドルウェア「Parallelnavi」など、ハードウェア、ソフトウェアとも当社製品で構成し、信頼性の高いシステムで、解析の効率化を進め、さらに精度の高い観測を目指します。

新システムにより、観測データを蓄積し、そのエネルギーや進行方向などの解析を行います。この解析により、ニュートリノの性質を解明し、宇宙の初期に物質がどのように作られたかという謎に迫り、また、陽子崩壊現象の発見による大統一理論(注5)の実証を目指しています。

  1. 計算サーバ

    ブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」 142台(284プロセッサ、1,704コア)からなるPCクラスタシステムにより、SPECint_rate2006で33,000となり、従来より2倍の演算性能を実現する予定です。

  2. 高速分散ファイルシステム、ファイルシステム管理サーバ

    ストレージシステム「ETERNUS DX80 S2」、テープライブラリ「ETERNUS LT270」2台からなり、ディスク容量は3.1ペタバイトで従来より4.4倍の容量です。用途に合わせてディスクアレイとテープライブラリで保存方法を選択し、業務の効率化を支援します。

    また、スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FEFS」により、284プロセッサ、1,704コアからなる並列に置かれた計算サーバからの同時大量アクセスに対し、従来システムの約7倍に相当するデータ転送性能を提供し、特定ユーザーによるI/O処理帯域の占有回避、ノードごとのI/O処理帯域保証が可能になり、利便性が向上します。

    さらに、システム全体の性能が向上した一方、消費電力は従来より約22%削減される予定です。

  3. 坑内実験サイトデータ処理システム

    岐阜県飛騨市神岡鉱山内に設置されるPCサーバ「PRIMERGY」40台、ストレージシステム「ETERNUS DX80 S2」からなり、「スーパーカミオカンデ」の検出器にある光電子増倍管が捕らえた観測データが本システムに送られてきます。観測データは本システムを通じて、ファイルシステムに転送されるため、24時間365日の安定稼働が求められる高信頼なシステムです。

東京大学宇宙線研究所 准教授 早戸 良成 様からのコメント

新システムの CPU やメモリ性能が強化されたことで、超新星爆発時に飛来するニュートリノの解析に要する時間が短縮、さらには検出感度も向上するなど、これまで以上に精度の高い測定が行うことが可能となります。また、計算規模が大きい、大気ニュートリノのデータを用いた、ニュートリノと反ニュートリノの振動の違いについての詳細な研究も効率的に進められるようになります。ディスク容量が増加したことで、より低いエネルギーの太陽ニュートリノのデータを取得、その解析を進めていこうとしています。これらの研究により、ニュートリノの性質についての理解をいっそう深め、宇宙の成立ちの謎に迫ることができると考えています。さらに、これまで発見されていない陽子崩壊の探索も進め、まだ誰も成し得ていない大統一理論の実験的検証を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 ニュートリノ:
素粒子の1種。「ニュートラル」は中性、つまり電気を帯びていないという意味、「イノ」はイタリア語で小さいという意味。もっとも基本的な粒子の一つでありながら、その性質は、いまだわからない点が多い。
注2 SPECint_rate2006で33,000:
推定値。SPECint_rate2006はCPUの性能を表す指標の1種。
注3 約2倍:
SPECint_rate2006値での比較。
注4 約22%削減:
消費電力約240kWから約185kWへ削減。
注5 大統一理論:
素粒子に働く3種類の力(電磁気力、強い力、弱い力)が、宇宙初期の超高温状態では同じであったとする理論。この理論が実証されれば宇宙の物理現象を統一的に理解できる。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

テクニカルコンピューティングソリューション事業本部 TC統括営業部
電話 03-6252-2550


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