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PRESS RELEASE (技術)

2011年10月17日
株式会社富士通研究所

注目エリアを正確かつ高速に探索する時空間データ処理技術を開発

人や車の位置情報のタイムリーな把握により、新しいサービスの提供が可能に

株式会社富士通研究所(注1)は、緯度や経度などの位置情報を含むデータの中から、注目の出来事が発生しているエリアを正確かつ高速に探索する時空間データ処理技術を開発しました。

近年、GPSやRFIDなどのセンサーを用いて人や車などの位置情報を大量に取得することが可能になり、これらを活用するサービスへの関心が高まっています。大量の位置情報をタイムリーに活用するためには、データを高速に処理して、ただちにサービスに反映する必要があります。

しかし、従来の技術では、データの特徴や分析の目的に応じて、あらかじめ適切なメッシュ(格子状の領域)を事前に設定するか、もしくは、無数のエリアをくまなく調べるために長い時間を要することが課題となっていました。今回、メッシュの設定をすることなく、従来手法に比べて約60倍高速に複雑な形状と多様な広さを持つエリアを探索できる技術を開発しました。

本技術により、人や車の分布状況に応じて、注目のエリアを正確かつ瞬時に発見することが可能になります。これにより、位置情報に基づく新しいサービスの実現が期待されます。


図1. タクシー利用が多く見込まれるエリア(雨天の夜の例、東京都)
(背景地図データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたもの)

開発の背景

近年のICT技術やセンサー技術の進歩にともない、携帯電話や車載機に搭載されたGPS、物品に貼付したRFIDなどを用いて大量のセンサーデータを収集することが可能となり、人や車の位置情報を活用したサービスが注目されています。時間と位置は、業務や分野に関わらず重要な情報であり、これらを用いた新たなビジネス創出が期待されています。

課題

人や車の動きを分析してタイムリーに情報を提供するサービスでは、情報の正確さと速報性が重要です。たとえば、タクシーの配車支援サービスでは、現時点でタクシー利用が頻発しているエリアを即座に、しかも的確に把握する必要があります。

しかし、行政区や格子状のメッシュを用いてデータを集計する方法は、あらかじめ適切な細かさのメッシュを設定する必要があります。つまり、メッシュが粗すぎると大まかな分析結果しか得られず、反対に細かすぎるとメッシュの境界に強く影響を受けるため、その中間の適切なメッシュが必要です。ただし、メッシュの適切さはデータの特徴や分析の目的に依存するため、これを決めるためには、データに対する知識と分析のノウハウが求められます。特に、センサーデータのように変動し続ける対象を扱う際に、適切なメッシュを決め続けることは困難です。

また、できるだけデータに対する知識や分析のノウハウに頼らず、個々のデータに基づいて最適なエリアを発見するために、汎用的なデータマイニング手法を利用することができます。データマイニング手法では、あらゆるエリアの候補を探索し、データの集計値が最大になるもの発見します。ところが、探索するエリアの候補がきわめて多く存在するため、現実的には計算することができません。たとえば、探索する候補を長方形の範囲に限定しても、処理に長い時間を要することが課題でした。

開発した技術

今回、位置情報データの中から、注目する出来事が高い確率で発生するエリアを、正確かつ高速に探索する技術を開発しました。汎用的なデータマイニング手法に比べ、正確性を向上させ、約60倍高速に注目エリアを探索できます。開発した技術の特徴は以下の通りです。

  1. 探索する注目エリアの正確性を向上

    本技術では、あらかじめ適切なメッシュを定義することなく、広さや形に関して自由度の高いエリア探索が可能です。データの特徴と集計の方法に応じて、エリア全体を必要十分に細かいエリアに自動的に分割したのち、これらを組み合わせたエリアを候補として、集計値が最適となるものを探索します。これにより、長方形などに限定されることなく、広さが異なるエリアを組み合わせた、凹凸を含む複雑な形状の注目エリアを、的確に探索することができます。

  2. 探索速度の高速化

    本技術では、新たに開発したアルゴリズムを用いて、非常に高速な注目エリアの探索が可能です。エリアの組み合わせを逐一列挙する代わりに、探索中の候補エリア内での出来事の発生確率に基づいて、候補に含まれることのない個々のエリアを除外する処理を繰り返し行います。これにより、列挙された候補エリアを大幅に削減し、確率の高いエリアのみを効率よく探索できるため、代表的なデータマイニング手法に比べて約60倍以上の高速化を実現しました。その結果、「乗客に出会えるエリア」のように、動的に変化するエリアもタイムリーに探索することが可能になりました。

効果

本技術により、刻々と変化する注目エリアを正確かつ高速に探索することが可能になります。エリアによる電力需給の違いに基づく効率的な配電制御、運転注意地点や防犯マップの高精度化などに役立てることが期待されます。さらに、リアルタイムで正確な商圏分析に基づくマーケティングなど、手持ちの位置情報データを活用した業務改善や、新しいサービス開発への応用が見込まれます。


図2. 本技術により探索できるエリアと見込まれる利用例
拡大イメージ

今後

富士通株式会社は2011年6月に、位置情報を活用した新しいサービス「SPATIOWL(スペーシオウル)」を発表しました。SPATIOWLは大量の位置情報をベースに、位置に関するさまざまなデータを統合的に管理、活用するサービスの提供を目指しています。今回開発した時空間データ処理技術は、お客様が保有する位置情報データの分析や、SPATIOWLが提供する位置情報レイヤーとの統合・活用とを目指し、2011年度中を目標にSPATIOWLへの機能搭載を予定しています。また、2011年10月に米国のオーランドで開催されるITS世界会議でも紹介する予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ソフトウェアシステム研究所 インテリジェントテクノロジ研究部
電話 044-754-2652 (直通)
メール spatiotemporal@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。