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PRESS RELEASE (技術)

2011年10月13日
株式会社富士通研究所
欧州富士通研究所

世界初!データセンター全体をまるごとモデル化して、
省電力効果を瞬時に検証できるシミュレーション技術を開発

株式会社富士通研究所(注1)と欧州富士通研究所(注2)は、多くのサーバが稼動するデータセンターにおいて、サーバや空調の運転状態を変更した際に、データセンター全体の消費電力がどのくらい変化するかを瞬時に検証できるシミュレーション技術を世界で初めて開発しました。

災害時の事業継続や各企業における節電への要求からデータセンターの利用が増加しており、データセンターそのものの省電力化が大きな課題となっています。データセンターの省電力化には、ICT機器や空調などの設備を含めた総合的な対策が必要です。しかし、刻々と運用状況が変わる稼働中のデータセンターにおいて、ICT機器や空調などの運転状態を変更した際に、どのように全体の消費電力に影響してくるかを予測するのは困難でした。

今回、建屋内における熱の流れを従来と比べて1,000倍以上高速に計算できる技術と、稼働中のデータセンターのICT機器や空調などの設備をまるごとモデル化する技術を開発し、消費電力の正確な計算を実現しました。本技術により、稼働中のデータセンターに適用する前に、どのような対策が省電力に効果があるかを検証することが可能となり、データセンター全体での大幅な省電力化が見込めます。

開発の背景

クラウド・コンピューティングの普及や災害時の事業継続などによりデータセンターの利用が増え続けており、それに伴うサーバの増強や高性能サーバの導入により、データセンターの消費電力も増加の一途をたどっています。

一方、データセンター内では、サーバの計算負荷は昼夜や季節に応じて刻々と変動しています。省電力の観点からは、計算負荷を特定のサーバに集中させて稼動サーバの台数を減らすことが有効です。また、空調はデータセンターの消費電力の30%程度を占めるため、その省電力対策が必要です。現在、空調は一定の室温に保つように運転されていますが、サーバの稼動状況に応じて適切に制御できれば、消費電力の削減が期待できます。このようなサーバと空調の制御を連携することで、データセンター全体の消費電力を最大40%削減できる見込みです(図1)。


図1 データセンターのサーバ・空調の制御

課題

計算負荷の変動に対してサーバの負荷配分や稼動サーバの台数を制御したり、サーバの稼働状態や温度に応じて空調を制御したりすることを、実際に稼働しているデータセンターを使ってテストすることはできないため、コンピュータ上でのシミュレーションによって制御の影響を確認することが期待されています。しかし、従来のシミュレーション技術では、計算に時間がかかりすぎてリアルタイムに効果を検証できませんでした。

開発した技術

今回、データセンター全体をまるごとモデル化し、サーバの負荷集中や空調制御によって消費電力がどのように変化するか瞬時にシミュレーションできる技術を世界で初めて開発しました。

開発した技術の特徴は以下の通りです。

  1. 高速な熱流体シミュレーション技術

    建屋内の熱の流れを解析する熱流体シミュレーションにおいて、事前に温度や熱の流れのパターンを自動抽出することにより計算量を減らし、従来と比較して1,000倍以上高速に計算できます(図2)。


    図2 データセンター内の熱流体シミュレーション
    拡大イメージ

  2. まるごとシミュレーション

    ICT機器、空調機器、電源系統などにおける電力と熱の流れをモデル化することで、データセンター全体の消費電力を5%以下の誤差で正確にシミュレーションすることが可能です(図3)。


    図3 データセンター全体のモデル化

効果

本技術により、実際に稼動しているデータセンターでは検証が難しかった、データセンター全体に影響する省電力化技術を正確にシミュレーションすることが可能になります。たとえば、計算負荷が低い場合には、一定箇所のサーバに負荷を集中させて、その他のサーバの電源を切るとともに空調の出力を下げるといった対策をいくつか検証し、その中で最も効率のよかった対策を実行することで、大幅な省電力化が期待できます。

また、データセンターが立地する地域の気候条件(気温、湿度)を考慮し、最適な空調方式の検討なども可能になります。寒冷地では外気を建屋に直接取り込む冷却方式が有効であり、サーバの動作を保証する温度・湿度範囲であれば、外気冷却により空調の消費電力を削減することができます。

さらに、昨今の国内電力供給不足により、稼働中のデータセンターに対して緊急の節電要請が生じた場合、さまざまな対応策を短期間にテストすることが可能となります。

今後

富士通のデータセンターでの実証実験および適用を進め、データセンターの省電力化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 欧州富士通研究所:
Fujitsu Laboratories of Europe Limited。代表取締役社長 丸山文宏。本拠地 英国ロンドン。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITシステム研究所 デザインイノベーション研究部
電話 044-754-8830(直通)
メール dc-simulation@ml.labs.fujitsu.com


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