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PRESS RELEASE (技術)

2011年10月13日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

次世代光アクセスシステムに向けた光増幅技術を開発

双方向10Gbps級光アクセスシステムの加入者数を4倍、伝送距離を2倍に

富士通株式会社(注1)(以下、富士通)と株式会社富士通研究所(注2)は、局とユーザーとの接続に光ファイバーを用いる光アクセスシステムについて、加入者数を4倍、伝送距離を2倍にできる光増幅技術を開発しました。

ネットワーク機器で増大し続ける消費電力の削減に向けて、局と多数のユーザーを電気変換を介さず光信号のまま接続する光アグリゲーションネットワークが提案されています。現在普及している伝送速度1Gbpsより10倍高速な双方向10Gpbs級PON(注3)の商用導入が進められていますが、これを光アグリゲーションネットワークへ展開するには、一般的なPON の仕様である端末装置(大型ビルや集合住宅、基地局など)の接続数32ヶ所、伝送距離20kmが制約となります。

今回新たに、半導体光増幅素子(注4)を用いた光バースト信号(注5)の光増幅技術、アレイ集積素子(注6)のモジュール実装技術、冷却機構の不要化技術の開発を行いました。これら3つの技術を利用することにより、光アクセスシステムの端末側の接続数を4倍に、局内の通信装置から各端末装置までの伝送距離を2倍にすることが可能になります。

これにより、次世代光アクセスシステムを低消費電力かつ低コストの光アグリゲーションネットワークとして使用し、クラウドのインフラ強化を進めることが可能となります。なお、本成果の一部には、独立行政法人情報通信研究機構(理事長:宮原 秀夫、本部:東京都小金井市、以下 NICT)から富士通が委託を受けて開発した成果(注7)を適用しています。

本技術の詳細は、現地時間の9月18日(日曜日)からスイスのジュネーブで開催された「37th European Conference and Exhibition on Optical Communication Conference (ECOC2011)」にて発表いたしました。


図1 本技術による光アクセスシステムの接続数と伝送距離の拡大

開発の背景

クラウド時代を迎え、より多くの端末装置や情報機器がネットワークに接続されるようになり、低消費電力・低コスト・低遅延で接続する技術が不可欠となっています。

インターネットのトラフィック増加にともない、ルータなどのネットワーク機器での電力増加が課題となっており、消費電力の削減手法として光アグリゲーションネットワークが提案されています。光アグリゲーションネットワークは、ネットワークを構成する多数のルータを大容量ルータに集約して、多数のユーザーを光伝送で接続するもので、大幅な消費電力削減が可能になると期待されています。

課題

現在普及している伝送速度1Gbpsより10倍高速な双方向10Gpbs級PONの商用導入が進められていますが、これを光アグリゲーションネットワークに用いるには、一般的なPONの仕様である端末装置への接続数32ヶ所、伝送距離20kmという制約があり、今後増え続ける利用者数に低コストで対応するためには改善する必要がありました。

開発した3つの要素技術

今回開発した3つの技術により、光アクセスシステムの規模拡張に必要な上りの光バースト信号伝送の特性改善が実現できます。これにより、光アクセスシステムの端末装置の接続数を4倍に、局内の通信装置から各端末装置までの伝送距離を2倍以上にすることが可能になります。

開発した技術の概要は以下の通りです。

  1. 光バースト信号の光増幅技術

    端末装置の接続数や伝送距離の拡張のために、局と端末装置の間にあるリモートノード(注8)に光増幅器を設置し、システム損失を補償することが検討されています(図1)。今回、光増幅器に入力される光信号を検出して光増幅器を高速にオフからオンにして増幅する技術を開発しました。従来であれば光増幅器を複数搭載した場合、その分だけ雑音が増えて局内の通信装置で正しく受信できなくなるところを、たとえば4個の光増幅器をリモートノード内に搭載(1個の光増幅器で32分岐)しても、光バースト信号が入力される光増幅器のみをオンにするため、32分岐と同じレベルの低雑音特性で128分岐が可能です(図2)。

  2. アレイ化された複数の半導体光増幅素子(SOA)をモジュール化する技術

    世界で初めて、4個の半導体光増幅素子を1つのモジュールにまとめることを可能にしました。4個の半導体光増幅素子を一括して4本の光ファイバーのアレイと結合することで、小型実装することができます(図2の写真)。これにより、1個あたりの実装面積の削減と低コスト化が可能となります。

  3. 冷却機構の不要化による小型・省電力化技術

    リモートノードで用いる半導体光増幅素子の光信号を増幅する活性層に、高温時にも高い増幅率が得られるアルミニウムを混合した材料を採用することで、世界で初めて温度制御を不要にしました。これにより、1個の半導体光増幅素子が内蔵されたモジュールで比較して、体積で従来比5分の1の小型化、また、約6分の1の省電力化を実現しました(図1の写真)。85℃の環境温度まで安定した光増幅動作が可能となり、電信柱や側溝など屋外に設置され、厳しい耐環境特性が要求されるリモートノードへの搭載にも適します。


図2 上り光バースト信号の光信号対雑音比。大きな合流損失(例、128分岐)で光バースト信号が減衰する前に、4分岐の手前でその信号が通過する光増幅器のみをオンにして光増幅することにより、高い光信号対雑音比を維持。
拡大イメージ

効果

本技術を用いることで、次世代光アクセスシステムである光アグリゲーションネットワークにおいて、端末装置の接続数を現在の4倍の128分岐に、また、局から端末装置までの伝送距離を2倍の40km以上にすることが可能となります。

今後

今後、本技術を適用した光アグリゲーションネットワークの研究開発を進め、トラフィックを効率的に収容するクラウドネットワークへ展開して行きます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 富士通株式会社:
代表取締役社長 山本 正已、本社 東京都港区。
注2 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田 達夫、本社 神奈川県川崎市。
注3 PON:
Passive Optical Network。光加入者網やモバイルバックホールに用いられている。
注4 半導体光増幅素子:
SOA (Semiconductor Optical Amplifier)とも呼ばれる。半導体材料に化合物半導体を用いており、増幅率の温度変化が大きいためにモジュール内に冷却用部品を搭載して、SOA素子の温度が一定になるように制御して使用されている。
注5 光バースト信号:
PONでは、局内の通信装置と多数の端末装置とを1対多光接続しており、多数の端末装置から、1~100マイクロ秒長程度の光信号(光バースト信号)が互いに衝突しないように局に向けて送信される。
注6 アレイ集積素子:
複数のSOAがアレイ状に集積された半導体光増幅素子。
注7 富士通が委託を受けて開発した成果:
本成果の一部には、富士通がNICTより受託した委託研究「高機能フォトニックノード技術の研究開発」(平成17年度から平成21年度)ならびに、「光統合ネットワークの管理制御およびノード構成技術に関する研究開発」~光統合ネットワークの制御技術と光パケット安定処理技術の研究開発~(平成22年度から平成25年度)の成果の一部を適用しています。
注8 リモートノード:
局と端末装置との間にあって、分岐/合流を行う光カプラや光増幅器で構成される装置。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所 フォトニクス研究部
電話 044-754-2643 (直通)
メール photo-aggre@ml.labs.fujitsu.com


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