このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. CPU間の大容量光インターコネクトに向けて小型のシリコンフォトニクス光源を開発

PRESS RELEASE (技術)

2011年9月16日
株式会社富士通研究所

CPU間の大容量光インターコネクトに向けて小型のシリコンフォトニクス光源を開発

光送受信器の送信部小型化と温度調整機構の不要化により、大容量光インターコネクトの実現に一歩前進

株式会社富士通研究所(注1)は、CPU間での大容量・高速通信を可能とする光によるインターコネクト(データ伝送)を実現するために必要となる、光送受信器(注2)用の小型シリコンフォトニクス光源(注3)を開発しました。

従来は、光送受信器に搭載される、光を放つシリコンフォトニクス光源と、光源から発せられた光に情報を乗せる光変調器(注4)に温度変化が起こった場合、光源の発振波長と光変調器の動作波長にずれが生じることにより、光に情報が乗らなくなる懸念がありました。そのため常におたがいの動作波長を一致させるための温度制御が不可欠でした。今回、光源の波長と光変調器の動作波長を自動的に一致させる機構を新しく取り入れることで、従来技術では必要であった温度調整機構を不要とすることに成功しました。この技術により、光送受信器の送信部において小型化および従来比2分の1の低消費電力化が可能となります。

今回開発した技術により、小型で低消費電力な光送受信器をCPUパッケージに搭載可能になります。将来のエクサフロップス級スパコン(注5)やハイエンドサーバなどにおけるCPU間の光インターコネクトへの適用により、超高速コンピュータの実現が期待されます。

本技術の詳細は、9月14日(水曜日)から16日(金曜日)までイギリス・ロンドンで開催された国際会議「8th Group IV Photonics (GFP 2011)」にて発表いたしました。

開発の背景

近年、スパコンの演算処理速度は1年半の間に約2倍のペースで高速化しています。そして2020年ごろをターゲットに、エクサフロップス級のスパコンの検討が進められています。超高速での演算を実現するには、計算機のCPUから数十テラビット毎秒におよぶデータを入出力するための大容量・高速インターコネクト技術が必要です。しかし、従来から利用されている銅配線による電気インターコネクト技術では、伝送速度の高速化の限界が近いと言われています。このため、CPU間を光で接続する光インターコネクトの適用が検討されています。

このようなCPU間の光インターコネクトには、CPUモジュールに搭載可能な光送受信器の小型化と大規模集積化を実現する、シリコンフォトニクス技術(注6)が非常に適しています。また、シリコン半導体の製造技術を利用するため、大量生産による低コスト化も期待できます。


図1. 大容量光インターコネクト技術


図2. CPUモジュール内の光送受信器

課題

光送受信器の送信部は、光を出す光源とその光に情報を乗せる光変調器で構成されます。光変調器は、低消費電力化および小型化に有利なリング共振器(注7)を用いた構成が望まれます。一方、光送受信器はCPUの近くに配置されるため、CPUからの発熱の影響などにより、光源からの発振波長とリング共振器型光変調器のおたがいの動作波長が合わなくなると、光に情報が乗らなくなるという問題がありました。これを一致させるためには温度調整機構が必要となり、光送受信器の小型化・低消費電力化を妨げる要因となっていました。

開発した技術

今回、光源と光変調器に用いるリング共振器のサイズを共通化することで、CPUの発熱などによる温度変化に対する、光源の発振波長と光変調器の動作波長の動きを一致させることに成功しました。これにより、従来は必要だった光変調器の温度調整機構が不要となり、光送受信器の送信部が小型・低消費電力になりました。この送信部の長さは1 mm以下と小さく、これを多数並べることにより、CPUモジュールに搭載可能なサイズで、大容量光インターコネクトを可能とする光送受信器の実現が期待できます。


図3. シリコンフォトニクス光送受信器の送信部

効果

開発した技術を用いることで将来のエクサフロップス級スパコンやハイエンドサーバに用いる大容量光インターコネクトの大規模化、低電力化が可能となり、超高速のコンピュータの実用化が期待されます。

今後

今後も、大規模集積技術との融合により、大容量光インターコネクトを実現する技術の開発を進めて行きます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 光送受信器:
電気信号を光信号に変換して送信し、受信した光信号を電気信号に変換するモジュール。
注3 シリコンフォトニクス光源:
シリコンフォトニクス技術を利用した発光部品。本技術ではシリコン基板上に設置した化合物半導体から増幅した光を取り出し、シリコンミラーが発振波長を決定している。
注4 光変調器:
電気信号を光信号に変換する光部品。光の強度信号に変換する強度変調器や光の位相信号に変換する位相変調器がある。
注5 エクサフロップス級スパコン:
浮動小数点演算を1秒間に100京回行うことができるスーパーコンピュータ。
注6 シリコンフォトニクス技術:
幅と高さが数百ナノメートルと小さなシリコンの光導波路に光を閉じ込めることで、光回路を小型化できる技術。シリコン半導体上に光回路と電子回路を一体形成することもできる。半導体の製造技術を利用して製造されるため、大規模な集積化が可能。
注7 リング共振器:
リング型光導波路で構成される光共振器。シリコンフォトニクスの場合、半径数ミクロンのサイズまで小型化することが可能。リングの共振作用を利用することで高効率な光変調器を構成することができる。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
次世代ものづくり技術研究センター
電話 046-250-8251(直通)
メール si-photonics-2@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。