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PRESS RELEASE (技術)

2011年5月2日
株式会社富士通研究所

仮想デスクトップの操作応答性能を向上させる高速表示技術を開発

スマートフォンなどのモバイル環境でも動画や高精細画像がスムーズに動作

株式会社富士通研究所(注1)は、クラウド内にデスクトップ環境を仮想的に配置して、クライアント端末からアクセスする仮想デスクトップにおいて、動画や高精細な画像を扱う際のデータ転送量を従来の約10分の1に削減(注2)することによって、端末利用者の操作応答性能を向上させる高速表示技術を開発しました。

本技術により、仮想デスクトップの用途をスマートフォンなどによるモバイル環境の業務やCAD(注3)などのグラフィック処理に広げることが可能となります。

開発の背景

近年、データのセキュリティ対策やパソコンの運用管理コストの観点から、クライアント端末には情報を置かず、クラウド内にデスクトップ環境を仮想化して配置し、遠隔からアクセスすることで通常の端末の環境と同じように使える仮想デスクトップサービスが注目されています。

さらに、スマートフォンの高機能化と普及にともなって、モバイル環境から仮想デスクトップサービスを利用するニーズも増大しており、いずれもスムーズな操作性が求められています。


図1 仮想デスクトップサービス

課題

仮想デスクトップでは、クラウド内に置いてあるデスクトップ画面データを、画面更新があるごとにクライアント端末に送信することで、遠隔からのアクセスを提供しています。動画やアニメーション、あるいは高精細なCADなどの画像について、パソコン内にもともとインストールされているアプリケーションと同等の操作応答性を仮想環境のクライアント端末で実現するためには、クライアント端末あたり毎秒10メガビット程度のデータ転送が一時的に必要になります。

しかし、ネットワーク使用帯域の問題から、そのような大量のデータの転送は困難な場合が多く、応答性能の悪化により動画が止まりやすくなったりするなどクライアント端末の操作性に不便が生じます。仮想デスクトップ表示においては、クライアント端末の応答性能を向上させるために、デスクトップ画面データの通信量を削減することが求められていました。

開発した技術

上記の課題を解決するために、仮想デスクトップ高速表示技術「RVEC(レベック、Remote Virtual Environment Computing)」を開発しました。本技術の特徴は以下の通りです。

  1. 領域ごとの画面更新

    画面更新が多い領域を抽出して、画面更新の頻度に応じて動画化領域と静止画領域に分類します。それぞれの領域に適した圧縮方式を用いてクライアント端末に送信することで、従来はすべての領域を静止画で圧縮して送信していたのに比較して通信データ量が減少し、応答性能が向上します。


    図2 領域ごとの画面更新

  2. CAD画像圧縮

    CADのように直線が多用された画像について、圧縮による画質劣化を回避して直線をクリアに表示しつつも、高効率に圧縮して転送するCAD画像圧縮技術を開発しました。上記のRVECの静止画圧縮方式にCAD画像圧縮技術を用いることで、CADでの配線や物体の輪郭がクリアに表示されます。


    図3 CAD画像圧縮

効果

本技術を用いることで、従来の仮想デスクトップサービスが苦手とする動画やCADなどの高精細な画像のデータ転送量を削減できます。社内試行環境(縦1,024ドット、横1,280ドットの画面サイズ)において、縦720ドット、横1,280ドットの動画を再生した場合のデータ転送量を、従来方式と同等の表示フレームレートで比較したところ、約10分の1の毎秒930キロビットに抑えることができました。また、2次元のCADを利用した場合、クライアント端末あたり平均で毎秒約670キロビットのデータ転送量で操作することができました。この場合にVNC(注4)で用いられているHextile圧縮方式(注5)と比較して約3倍の静止画圧縮率を達成しました。


図4 本技術の利用シーン

今後

現在、2次元のCADについて社内試行を進めています。2011年度中に3次元のCADにも対応させるとともに商用クラウドサービスへの適用を目指します。また、スマートフォン向けについても、モバイル環境からセキュアに仮想デスクトップにアクセスするソリューションなど、さまざまなモバイルソリューションへの適用を検討していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田 達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 従来の約10分の1に削減:
同等の表示フレームレートで比較した場合。
注3 CAD:
Computer Aided Design。コンピュータによる設計支援ツール。
注4 VNC:
Virtual Network Computing。オープンソースの仮想デスクトップツール。
注5 Hextile圧縮方式:
VNCで用いられている画像圧縮方式。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ヒューマンセントリックコンピューティング研究所 IPサービスシステム研究部
電話 044-754-2667(直通)
メール rvec-2011@ml.labs.fujitsu.com


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