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PRESS RELEASE (技術)

2011年3月10日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

冷却不要の直接変調レーザーで毎秒40ギガビットの光伝送に成功

従来と比べて消費電力を半分以下にし、次世代高速光通信に向けて大きく前進

富士通株式会社(注1)と株式会社富士通研究所(注2)は、冷却不要の直接変調レーザー(注3)で毎秒40ギガビット(以下、Gbps)の光伝送に成功しました。高速動作に適した構造と、駆動電流を低減して高温動作を可能とする構造を組み合わせることで、従来の40Gbpsの伝送光源において消費電力の半分以上を占めていた温度調節素子を不要にしました。

今回開発した技術により、次世代高速光通信の低消費電力化に向けて大きく前進しました。

本技術の詳細は、3月6日から米国ロサンゼルスで開催の国際会議「OFC/NFOEC 2011 (The Optical Fiber Communication Conference and Exposition and The National Fiber Optic Engineers Conference 2011)」にて発表いたしました。なお、本研究の一部は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)に委託されたプロジェクト「次世代高効率ネットワークデバイスの技術開発」にて実施されたものです。

開発の背景

クラウド・コンピューティングサービスや高精細画質の映像配信サービスなど、ネットワークを流れるデータ量が急速に増大しています。年々増大するデータ伝送量に対応するため、データセンター内では伝送速度10Gbpsを超える高速光通信の導入が始まっており、環境負荷低減のために低消費電力の光通信が求められています。

課題

大量の情報を光に乗せて高速に伝送する光通信では、電気信号を光信号に変換するために、光強度を変調できる光源が必要です。変調方式には、半導体レーザーへの注入電流を変調する直接変調方式と、半導体レーザーの外部に光変調器を用意して変調を行う外部変調方式の大きく2種類があり、主に低速・短距離用では直接変調方式、高速・長距離用では外部変調方式がそれぞれ用いられています。

現在、伝送速度10Gbpsまでは、温度調節素子を必要としない、冷却不要の小型・低消費電力の直接変調レーザーが実用化されています。一方、10Gbpsを超える高速伝送では、10km程度までの短距離用でも外部変調方式の電界吸収型変調器集積レーザー(注4)が用いられています。しかし、電界吸収型変調器集積レーザーを安定して動作させるには、温度調節素子によって冷却する必要があり、この素子は消費電力の半分以上を占めるため、消費電力の低減が課題になっていました。

開発した技術

今後普及していく大容量の光通信を小型・低消費電力な装置で実現するためには、直接変調方式の半導体レーザーを10Gbpsを超える高速領域において冷却不要で動作させる必要があります。そのためには、低駆動電流で高速直接変調を実現させる必要があります。

今回、冷却不要で40Gbps動作する波長1.3マイクロメートル(以下、μm)帯の直接変調レーザーを開発しました。

開発した技術は以下の通りです。

  1. 高速動作に適した構造

    半導体レーザーのレーザー光を生み出す活性層に、高速動作に有利なアルミニウム・ガリウム・インジウム・砒素(AlGaInAs)系の多重量子井戸活性層を用い、光の導波路構造として高速化に適した低容量の高抵抗埋め込み構造(注5)を採用しました(図1)。

  2. 駆動電流を低減して高温動作を可能とする共振器構造

    活性層の長さを100μmと短くし、その前後に反射鏡を集積した共振器構造を新たに開発しました(図1)。直接変調レーザーの高速化には、活性層領域の長さを短くすることが有効ですが、従来のレーザー構造では、活性層領域の長さを短くすると、駆動電流が増大する問題がありました。

    今回、短い活性層領域の前後に長さ100μmの高反射率反射鏡(後側)と長さ50μmの低反射率反射鏡(前側)を集積し、光を活性層へフィードバックすることにより、高速変調に必要な駆動電流を低減しました。これにより高温動作が可能になり、温度調節素子が不要になりました。


    図1 今回開発した直接変調レーザー

    今回開発した技術により、25℃から70℃までの動作温度で、40Gbps信号光のシングルモード光ファイバー5km伝送に世界で初めて成功しました(図2)。


    図2 シングルモード光ファイバー5km伝送前後の光波形

効果

今回開発した技術を用いることで、現在の40Gbps伝送光源に用いられている温度調節素子が不要となり、従来と比較して消費電力を2分の1以下に削減することが可能です。また、部品点数削減による低コスト化も可能です。

今後

今後はさらなる高温動作化や伝送距離の長距離化に向けて、デバイス構造や作製プロセスの改良を進め、実用化に向けた研究開発を推進します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 富士通株式会社:
代表取締役社長 山本正已、本社 東京都港区。
注2 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注3 直接変調レーザー:
半導体レーザーの注入電流を変調し、光強度を変調する通信用光源。主に短距離通信用に使われる。
注4 電界吸収型変調器集積レーザー:
電圧によってバンドギャップが変化しレーザー光を吸収する変調器を集積した半導体レーザー。主に長距離通信用に使われる。
注5 高抵抗埋め込み構造:
半導体レーザーの電流狭窄構造の一種で、ストライプ状に加工された導波路の両側を高抵抗層で埋め込んだ構造。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
基盤技術研究所 デバイスイノベーション研究部
電話 046-250-8251(直通)
メール DML_press@ml.labs.fujitsu.com


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