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PRESS RELEASE (技術)

2010年12月9日
株式会社富士通研究所

光と熱の両方から電力を作り出すハイブリッド型発電デバイスを開発

周りの環境から自給自足で電力を作り出すエネルギーハーベスティングの普及に大きく貢献

株式会社富士通研究所(注1)は、光と熱のいずれからも電力を取り出せる新しいハイブリッド型の発電デバイスを開発しました。これにより、エネルギー源として従来は別々に利用していた光と熱を1つの発電デバイスで利用することが可能になります。さらに、コストを抑えることができ、効率のよい発電デバイスを普及させることができます。

本技術は、周りの環境からエネルギーを収穫して電力に変換するエネルギーハーベスティング(環境発電)の分野での応用が期待できます。電気の配線や電池の交換などのメンテナンスが不要になるため、センシングネットワークで用いられるさまざまなセンサーの電源や医療センシングへの適用が可能となるほか、今まで入り込めていない分野や地域へのセンサーの活用などが期待されます。

本技術の詳細は、米国時間の12月6日(月曜日)から米国・サンフランシスコで開催されている国際会議「IEDM 2010 (International Electron Devices Meeting 2010)」にて発表いたします。

エネルギーハーベスティングとは

周りの環境からエネルギーを収穫して電力に変換する技術で、環境発電とも呼ばれる次世代の新しいエネルギーとして注目されています。従来は電気エネルギーとして、発電所からの電力か電池を利用しており、電気の配線や電池交換などのメンテナンスが必要でした。近年、新しいエネルギー源として、身近に存在する光、振動、熱、電波などが提案されており、それぞれのエネルギー源に対応した発電デバイスが開発されています。電力を自給自足するエネルギーハーベスティングが実現すると、電気の配線や電池交換などのメンテナンスが不要になります。


図1. エネルギーハーベスティングとは

開発の背景

身近に存在する光、振動、熱、電波などからエネルギーハーベスティングで発電できる電力は、発電所や電池から供給される電力と比較して微少であるため、ICT機器で利用するためにはより多くの発電が可能なデバイスが必要です。また、光や振動は常に周りの環境に存在するものではないため、その都度存在する周りの環境から効率よくエネルギーを収穫することで、24時間365日利用できるデバイスへのニーズが高まっています。

課題

エネルギーハーベスティングで得られる発電量は小さいため、十分な量の電力を収穫して利用するために、光と熱、光と振動など複数のエネルギー源に対応する発電デバイスが検討されています。しかし従来は、それぞれに対応したデバイスを複数組み合わせる必要があったため、コストが高くなってしまうという問題がありました。

開発した技術

今回、エネルギーハーベスティングのエネルギー源として、最も身近で応用範囲が広い光と熱に着目し、そのどちらにも対応できるハイブリッド型発電デバイスを新たに開発しました。これにより、複数の発電デバイスを組み合わせることなく、1つの発電デバイスで光と熱の両方からエネルギーを収穫し発電することが可能になります。また、安価な有機材料を利用していることで、製造コストの削減も可能になります。

開発した技術は以下の通りです。

  1. ハイブリッド型発電デバイスの新機構

    光環境と熱環境時それぞれの場合に、2つの半導体材料(P型とN型)の接続を回路的に切り替えることで、光電池と熱電素子の2つの機能を実現しました(図2)。

  2. ハイブリッド型発電デバイス向けの有機材料の開発

    光発電と熱発電の両方で発電可能な有機材料を開発しました。室内光でも発電能力が高く、熱でも発電が可能です。安価な有機材料により製造コストが大幅に削減できます。


    図2. 1つのデバイスが光発電モード(左)と熱発電モード(右)の両方で動作

効果

これまでは、光で発電する光電池と温度差による熱で発電する熱電素子を別々のデバイスで用意する必要がありました。今回の技術により、1つのデバイスにもかかわらず、従来に比べて光環境と熱環境という2倍の環境で発電可能となります。これにより、たとえば病室で体温や血圧、心音などの計測をセンサーをつけて監視するような場合、光環境と熱環境が存在してはいるものの、従来のように片方の環境だけでは十分にエネルギーが収穫できないことがありましたが、今回開発したデバイスにより両方のエネルギーで補うことができます。また、電気の配線や電池の交換の課題のために普及しなかった観測空白地域での気象センサーも、今回開発したハイブリッド型発電デバイスを利用することで普及が見込まれます。


図3. フレキシブルな基板上に試作した本デバイス
拡大イメージ

今後

ハイブリッド素子の性能向上と量産化技術の開発を行い、2015年頃の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田 達夫、本社 神奈川県川崎市。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
環境・エネルギー研究センター エネルギー技術研究部
電話: 046-250-8362 (直通)
E-mail: nano-mate@labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。