このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. ペタスケールコンピューティング用数学ライブラリ開発プロジェクトを発足
  • English

PRESS RELEASE (システムプラットフォーム)

2010年11月9日
富士通株式会社
欧州富士通研究所

ペタスケールコンピューティング用数学ライブラリ開発プロジェクトを発足

次世代スーパーコンピュータ(愛称「京」)の性能を最大限に活用

富士通株式会社(以下、富士通)と欧州富士通研究所(Fujitsu Laboratories of Europe Ltd.)は、世界各国の大学や研究機関などと連携し、ペタFLOPSクラスの演算性能を持つスーパーコンピュータ(以下、ペタスケールスパコン)上で動作するアプリケーション開発の基盤となる数学ライブラリ(注1)を開発するプロジェクト「オープン・ペタスケール・ライブラリ(OPL)」を開始します。本プロジェクトで開発した成果は、オープンソースとして公開されることにより計算科学コミュニティーに貢献するとともに、2012年度中に運用が開始される「次世代スーパーコンピュータ(愛称「京(けい)」)(注2)におけるアプリケーションの開発を促進し、ライフサイエンス、新材料やエネルギー開発、防災・減災、ものづくり、宇宙の起源の解明などに貢献することが期待されます。

OPLは、NAG社(注3)様 、サイエンティフィック・システム研究会(SS研)(注4)様をはじめとする欧州・米国・アジア・オセアニアの10の大学・研究機関などを、当初の参加機関として発足しました。今後も、OPLの趣旨に賛同し、貢献いただける機関の参加を期待しています。

OPLは、全世界のスーパーコンピュータ関係者が集まる「SC10(注5)」の開催に合わせて、11月14日(日曜日)に米国のニューオリンズにおいて第一回のワークショップを開催し、活動を開始します。

[関連リンク]OPLプロジェクトWebサイト

背景と課題

「次世代スーパーコンピュータ」に代表されるペタスケールスパコンは、一般的なコンピュータでは解くことが困難な大規模で高度な計算を高速に処理できるコンピュータであり、ライフサイエンス、新材料やエネルギー開発、防災・減災、ものづくり、宇宙の起源の解明など、人類社会の重要課題を解決するためのツールとして必須のものです。

しかしながら、多くの計算コアを持つCPUとこれを数万以上接続した大規模な並列計算を行うペタスケールスパコンの性能を最大限活用するためには、合計数十万以上の計算コアを効率的に協調させて並列計算させるようなアプリケーションを開発する必要があり、アプリケーション開発者にとって大きな課題となっています。

そこで、各分野のアプリケーションで共通的に利用され、その計算時間の大部分に活用される数学ライブラリをペタスケールスパコン向けに高速化することが、多くのアプリケーション開発者から期待されています。この開発には、これまでのスパコン用アプリケーション向け数学ライブラリ以上に、超並列型のコンピュータアーキテクチャーとアプリケーションに関する深い知識が必要であり、その研究開発は緒についたばかりです。

開発プロジェクト(OPL)について

OPLでは、計算科学者とアプリケーション開発者が連携できるオープンソース・ソフトウェアの形態で、ペタスケールスパコン用アプリケーション向け数学ライブラリを開発します。富士通と欧州富士通研究所は、OPL参加機関にペタスケールスパコンの技術情報と開発環境を提供します。OPLでの開発成果はオープンソース・ソフトウェアとして公開されることで、幅広い分野で活用されることが期待され、さまざまなペタスケールスパコンの応用分野に貢献していきます。

[ OPLの当初参加機関(計10の大学・研究機関など) ]

サイエンティフィック・システム研究会(日本)、オーストラリア国立大学(オーストラリア)、
インペリアル大学(英国)、テネシー大学(米国)、NAG社(英国)、オックスフォード大学(英国)、
STFCダレスバリー研究所(注6)(英国)、ロンドン大学(英国)、富士通、欧州富士通研究所
(参加検討中:理化学研究所 (注7)(日本)、国立情報学研究所(注8)(日本))

[ アドバイザリー・パネル(4名の有識者) ]

OPL全体の進め方について、技術的観点ならびに戦略的観点よりアドバイスをいただくアドバイザリー・パネルを設置して、下記4名の有識者の方々に参加いただきます。

理化学研究所 計算科学研究機構 平尾公彦機構長(注9
テネシー大学 ジャック・ドンガラ教授(注10
イリノイ大学 ビル・グロップ教授(注11
オックスフォード大学 アン・トレフェゼン教授(注12

開発対象の数学ライブラリについて

本プロジェクトではペタスケールスパコンの代表的なアプリケーション分野ごとに必要となる数学ライブラリの開発を行います。ターゲットとなる計算機は、「次世代スーパーコンピュータ」と、スパコンとして標準的に利用されているPCクラスタです。また、ライブラリの並列効果を高めるため、ペタスケールスパコンで効果的なハイブリッド並列プログラミングモデル(注13)を採用しています。アプリケーション開発者は、本プロジェクトの成果を活用することで、ペタスケールスパコンの性能を最大限に利用することが可能になります。

理化学研究所 計算科学研究機構 平尾公彦機構長のコメント

21世紀の科学は、人類社会の持続性に寄与し、人を支える科学技術であらねばならない。スパコンは現代の科学技術の発展にとって不可欠な基盤技術であり、スパコンを用いた科学技術の成果や知識は、人類の利益という観点から活用されるべきであるので、国際的な連携協力がますます必要となる。本プロジェクトはその方向に沿うものであり、計算科学研究機構としても積極的に参画し、成果創出に貢献したい。

テネシー大学 ジャック・ドンガラ教授のコメント

OPLは正しい方向への前向きな一歩である。このようなオープン・ソフトウェア活動は標準に準拠した高品質のソフトウェアの開発と、新たなパートナーシップの構築に成功してきている。富士通の取り組みは、ペタスケール・ソフトウェアやそれらを超えたコラボレーション・コミュニティーの発展過程において大きな前進であると認められるべきである。

以上

注釈

  注1 数学ライブラリ:
アプリケーションに共通の線型代数・微分方程式などの科学技術計算を行う処理を、容易にアプリケーションに組み込める形にまとめたもの。
  注2 次世代スーパーコンピュータ(愛称「京(けい)」):
文部科学省「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築」計画のもと、富士通が理化学研究所様と共同開発しているスーパーコンピュータ。8つの計算コアを持つCPUとこれを8万以上接続した大規模な並列計算を行うペタスケールスパコンである。
「京」は理化学研究所様が2010年7月に決定、発表した「次世代スーパーコンピュータ」の愛称。「京」は、開発目標性能の10ペタFLOPSを表す万進法の単位。また、「京」はもともと大きな門を表し、“計算科学の新たな門”という期待も込められている。
  注3 NAG社:
正式名称The Numerical Algorithm Group Limited。英国オックスフォードに本拠を置く、数学ライブラリで世界的に著名な非営利企業。
  注4 サイエンティフィック・システム研究会(略称:SS研、会長:村上和彰 九州大学教授):
大学、研究所などの科学技術分野のコンピュータ利用機関を主体とした研究会。1978年より、コンピュータ・サイエンスに関する技術情報の交換、研究活動による成果創出などを通して、会員相互の利益を図ることを目的として活動している。
  注5 SC10:
2010年11月13日から19日まで米国ルイジアナ州ニューオリンズで開催されるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野における国際会議。
  注6 STFCダレスバリー研究所:
英国STFC(Science and Technology Facilities Council)配下の研究所(所在地:英国ワーリントン)。
  注7 理化学研究所:
独立行政法人理化学研究所(本所:埼玉県和光市、理事長:野依良治)。
  注8 国立情報学研究所:
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(所在地:東京都千代田区、所長:坂内正夫)。
  注9 理化学研究所 計算科学研究機構 平尾公彦機構長:
「次世代スーパーコンピュータ」に関して、利用者視点に立った共用施設としての運用と、計算機科学分野と計算科学分野の連携、融合により先進の科学的成果と技術的ブレークスルーを生み出す国際的な研究拠点の形成を行う計算科学研究機構の機構長。
  注10 テネシー大学 ジャック・ドンガラ教授:
LINPACK、LAPACK、ScaLAPACKなどの著名な数学ライブラリ開発者であり、世界のスーパーコンピュータ性能ランキングであるTOP500の提唱者の一人。
  注11 イリノイ大学 ビル・グロップ教授:
並列数値ライブラリであるPETScの創作者であり、MPI開発の立役者の一人。
  注12 オックスフォード大学 アン・トレフェゼン教授:
数値計算アルゴリズムとソフトウェア、計算科学とハイパフォーマンスコンピューティングを専門とし、オックスフォード・eリサーチ・センターのディレクターを務めている。
  注13 ハイブリッド並列プログラミングモデル:
並列プログラミングモデルの1つ。MPI並列と呼ばれる分散メモリ型並列計算機向けの並列手法と、スレッド並列と呼ばれる共有メモリ型並列計算機向けの並列手法を組み合わせた並列プログラミングモデル。このモデルに従ったプログラムは、「次世代スーパーコンピュータ」に代表される、多くの計算コアを持つCPUとこれを数万以上接続した大規模な並列計算を行うペタスケールスパコンを効率的に利用することができる。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

富士通株式会社
TCソリューション事業本部 計算科学ソリューション統括部
電話: 043-299-3243(直通)

[HPCビジネス全般について]
富士通株式会社
TCソリューション事業本部 TC戦略室
電話: 03-6252-2483(直通)
E-mail: contact-hpc@cs.jp.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。