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PRESS RELEASE (技術)

2010年4月21日
株式会社富士通研究所

クラウド向けデータストアを最適配置する技術を開発

サービスの迅速な立ち上げとビジネス規模に応じた柔軟なシステム提供が可能に

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、クラウド上でデータストアを最適配置し、利用者からのアクセス数の変動に柔軟に対応できるシステムを構築する技術を開発しました。今回開発した技術は、従来一般的に使われてきたリレーショナル・データベースや、クラウド時代に台頭してきたキーバリュー型データストアなどの複数のデータストアの特徴を活かして、業務データの特性に応じた適切なデータストアを自動的に選択し、さらにクラウド上にシステムを自動的に構築します。

本技術により、負荷の変動に柔軟に対応できるサービスを提供することができ、需要変動型の業務を容易かつ短期間に提供できます。安価なクラウドの仮想マシン(VM)の組み合わせでシステムの性能を向上できるため、システム構築時の初期費用を抑えたスモールスタートと、ビジネス規模に応じた適正な投資を可能にします。

本技術は、5月13日(木曜日)、14日(金曜日)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催される「富士通フォーラム2010」に参考出展いたします。

開発の背景

ICTシステムではアプリケーションのデータを保存するデータストアが重要であり、従来はリレーショナル・データベース(以下、RDB)が用いられてきました。RDBは、銀行取引などで必要となるデータの一貫性を保証するかわりに、需要の変動に応じて柔軟にサーバの台数を増やすことで性能を得るのは困難です。

クラウドコンピューティングにおいては、サーバの台数を増やすにつれて性能が上がるシステムが求められており、多数のサーバで高速に分散処理することができる、キーバリュー型データストア(以下、KVS)が注目されています。KVSは、RDBに求められる一貫性保証などの機能を必要としない場合に、サーバの台数に応じた性能を得ることが可能です。

アプリケーションが扱うデータには、大量の書き込みが行われるものなど、RDBでの管理に適さないものも多く、またRDBで管理する必然性のないデータも存在します。クラウド時代のシステム構築にあたっては、RDBとKVSという性質の異なる技術をアプリケーションの特性に合わせて適切に使い分けるNoSQL(注2)という考え方によって、システム全体の性能の向上を図ることが重要になっています。

  スケーラビリティ 一貫性 複雑な検索・集計
リレーショナルデータベース 非対応 即時 対応
キーバリュー型データストア 対応 緩やか 非対応

図1. RDBとKVSの比較図

課題

RDBとKVSを適切に使い分けるためには、データに一貫性がどの程度必要か、データとデータの関連性、参照や更新の頻度などに基づいて、総合的にそれぞれのデータをどのデータストアに配置するか決める必要がありました。しかし、その配置を最適に決定することは難しく、時間のかかる作業となっていました。

また、開発者がデータへのアクセス方法を、プログラムや設定ファイルの中で明示的に記述しなければなりませんでした。これでは、使用環境が変化したときに、同じプログラムを共有することができません。

開発した技術

今回、複数のデータストアを適切に使いわけるために、プログラムのコード中にデータの特性情報やデータ間の関連情報を記述する手法を導入しました。システム構築時には、この特性情報や関連情報に基づいて、適切なデータストアを自動的に決定します。これにより、同じプログラムで負荷の変動に対応したシステム運用が可能になります。

開発した技術は以下の2つです。

  1. 適切なデータストアの自動選択技術

    プログラムにデータの特性情報やデータ間の関連情報を記述する手法を導入しました。プログラムロジックはそのままで、付属情報としてデータのアクセス特性を追加で指定します。この付属情報はプログラムごとに柔軟に定義することが可能です。さらに、データの一貫性やデータ間の関連性を記述できる仕様も提供しています。

    クラウド側では、付属情報で指定された業務データのアクセス特性に応じて適切なデータストアを選択する技術を開発しました、それに合せてVMをプロビジョニングし、クラウド上の実行環境システムを自動的に構築します。これにより、銀行取引のようにデータの一貫性が必須な情報はRDBで管理し、ショッピングカートなどのデータはKVSで管理する、といったシステムを短期間で構築することができます。

  2. データストアアクセス先の自動切替え技術

    開発者がデータストアへのアクセスを明示的に記述しなくても、アクセス先を自動的に切り替える技術を開発しました。開発者は、共通の標準インターフェースに基づいてプログラムを記述するだけで、プログラムロジックを変えずに、実際にアクセスされるデータストアを意識することなく、適切なデータストアにアクセスすることができるようになります。


図2. データアクセスの説明図

効果

本技術により、クラウド上でシステムを運用するお客様は、エンドユーザからのアクセス量の増減に対応できるシステムを構築することができます。これにより、初期費用を抑えたスモールスタートをおこなって、ビジネス規模の拡大に応じてシステムを拡張することが可能です。

アイデア次第で簡単に市場に参入できるので、より付加価値の高いサービスや新ビジネスの提供が可能になります。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
  注2 NoSQL:
Not only SQL、SQL(RDB)だけでなく、異なる種類のデータストアと、その使いこなしが重要という考え方。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
クラウドコンピューティング研究センター
電話: 044-754-2575 (直通)
E-mail: cloud-apps@ml.labs.fujitsu.com


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