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PRESS RELEASE (技術)

2010年2月10日
株式会社富士通研究所

地上デジタルテレビ放送受信用の周波数シンセサイザの小型化に成功

携帯電話向け小型ダブルチューナーの実現に一歩前進

株式会社富士通研究所(注1)は、地上デジタルテレビ放送受信チューナー(注2)用の周波数シンセサイザ(注3)について、地上デジタルテレビ放送向けに回路を工夫することによって、回路自身の面積を従来に比べて3分の1に小型化し、外付け部品を不要とすることに成功しました。

今回開発した技術により、地上デジタルテレビ放送受信チューナーの小型化と消費電力削減が可能になります。将来的には、この技術を活かし、小型なダブルチューナーを実現することが期待されます。

なお、今回の技術の詳細は、2月7日からサンフランシスコで開催されている半導体の国際会議「ISSCC2010(International Solid-State Circuits Conference 2010)」にて発表いたしました。(発表番号 13.3)

背景

テレビや携帯電話で用いられるチューナーの内部では、放送局から送られてくる電波を受信し、映像や音声の情報を取りだしています。放送局から送られる電波はそれぞれチャンネルによって周波数が異なるため、視聴者が望む周波数チャンネルの情報を受信するには、その周波数に対応したクロックを生成する周波数シンセサイザが必要になります(図1)。

アナログテレビ放送から地上デジタルテレビ放送へと移行しつつある中、地上デジタル放送受信の用途に特化した周波数シンセサイザの要望が高まっています。


図1. 地上デジタルテレビ放送受信チューナー

課題

地上デジタルテレビ放送受信チューナーは、携帯電話などでのワンセグ視聴のため、小型で消費電力の少ないものが求められています。また、裏番組録画やチャンネルスキャンの高速化などのために、ダブルチューナーの搭載も期待されています。従来、チューナーの主要な部品である周波数シンセサイザは、デルタシグマ型変調器による小数逓倍方式が主流でした。しかし、この方式は、チューナーの受信感度を劣化させるノイズを抑制するための外付けのフィルター回路が必要であり、モジュールを小型化することが困難でした。また、ダブルチューナーにするには、外付けのフィルター回路が2組必要となるため、さらにモジュールが大きくなってしまいます。


図2. 従来のデルタシグマ型変調器を用いた周波数シンセサイザの構成図

技術の概要

今回、地上デジタルテレビ放送受信の用途に特化した周波数シンセサイザを開発しました。これによって、ノイズの抑制と小型化を同時に実現しています。

本技術のポイントは以下のとおりです。

  • 地上デジタルテレビ放送受信という用途に特化して、従来のデルタシグマ型よりノイズの少ない循環レジスタ型の変調器を利用しました。

図3. 循環レジスタ型変調器による周波数シンセサイザ

地上デジタルテレビ放送では、放送の帯域幅6MHzを14のセグメント(テレビのチャンネル12個+ワンセグ1個+空き1個)として利用しています。したがって、14分の6、すなわち、7分の3MHzの間隔でチャンネルが並んでおり、7分の3MHz間隔のクロックを生成することができれば、すべてのチャンネルを受信することが可能になります。

循環レジスタ型では、地上デジタルテレビ放送で用いられる7分の3MHzの周波数間隔を精度良く得るために、7個並列化した回路構成を考案しました。これによって、デジタルテレビ放送で必要となる、7分の1MHzの倍数を効率良く得ることができ、その結果、ノイズを抑えることができます。ノイズを抑えたことにより、外付けのフィルター回路が不要になり、小型化も実現することができました。


図4. 従来と今回のノイズ除去方法

効果

今回開発した技術により、周波数シンセサイザへの外付け部品が不要となり、回路自身の面積を従来に比べ3分の1に小型化しました。開発した技術の効果を確認するために、65ナノメートルのCMOSテクノロジーを用いて周波数シンセサイザを試作しました(図5)。試作した周波シンセサイザでは、ノイズが無視可能なレベルまで除去されていることがわかります(図6)。


図5. 試作した周波数シンセサイザ

図6. ノイズ除去動作の有効性

今後

今後は、先端CMOSテクノロジーへの適用を進め、さまざまなチューナー製品への搭載を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 チューナー:
テレビやラジオの同調回路のこと。選択した周波数(チャンネル)を受信するもの。
  注3 周波数シンセサイザ:
テレビやラジオのチューナー、携帯電話、コードレス電話など、電波を扱うほとんどの機器で使われている発振回路。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
プラットフォームテクノロジー研究所 デザインソリューション研究部
電話: 045-755-7080(代表)
E-mail: pll-pr@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。