PRESS RELEASE (技術)
2010年2月10日
株式会社富士通研究所
University of Toronto
世界初!デジタル処理によってGbpsクラスの高速な送受信ICを実現
ICの開発期間を大幅に短縮し、タイムリーな品種提供を可能に
株式会社富士通研究所(注1)とトロント大学(注2)は、Gbps(ギガビット毎秒)クラス(注3)の高速動作でデータをやりとりする有線通信の送受信ICに関して、従来のアナログ回路を用いた構成を一新し、デジタル回路による新しい処理方式を開発しました。
アナログ処理では、転送する信号の伝送距離や振幅の大きさといった特性にあわせて回路を最適化する必要がありましたが、今回のデジタル化によって回路の最適化を自動的に行う仕組みを実現できるため、一つの回路をさまざまな有線通信に適用できます。これにより、開発期間を従来に比べ、約2分の1と大幅に短縮することが可能になります。
今後は、データセンターにおける10Gbps高速イーサネット通信など、さまざまな有線通信への応用が期待できます。
なお、今回の技術の詳細は、2月7日からサンフランシスコで開催されている半導体の国際会議「ISSCC2010 (International Solid-State Circuits Conference 2010)」にて発表いたします。(発表番号 8.7)
開発の背景と課題
写真データや音楽ファイル、動画ファイルなど、通信データの大容量化に伴い、機器間の有線データ通信を高速化するニーズがますます高まっています。
しかし、従来の送受信ICはアナログ回路を用いて実現されており、転送する信号の伝送距離や振幅の大きさといった特性にあわせて回路を最適化する必要があるため、用途に応じて複数の送受信ICの設計が必要でした。高速でデータを送受信する機器は多様化していますが、従来の技術では機種ごとの特性にあわせた最適化がボトルネックとなり、短い開発期間で多様な機器にあわせた送受信ICを開発することは容易ではありません。
技術の概要
今回、送受信ICをデジタル回路の構成にする技術を開発しました。デジタル化することにより、さまざまな高速有線通信回路の最適化を自動的に行う仕組みを実現できるため、開発期間を従来の約2分の1へと大幅に短縮することができます。
開発技術は以下のとおりです。
- 信号判定のタイミングを自動的に調整
データ通信時に発生する入力信号の時間方向の揺らぎ量を検出し、その結果に応じて受信信号である「0」「1」の判定タイミングを自動的に調整します(図1)。データ通信は、高速化によって揺らぎ量も増えるため、この技術は正しくデータのやりとりをするために必要となります。今回は世界で初めて、Gbpsクラスの高速通信で、アナログ要素回路を用いることなく、信号判定のタイミング調整を完全にデジタル化することに成功しました。
図1. 信号判定のタイミングを自動的に調整 - 信号品質の劣化を自動的に補償
ケーブルを伝わった信号は波形が劣化しますが、高度なデジタル信号処理によって、劣化した波形を補償します(図2)。
図2. 伝送線路での信号品質の劣化を自動的に補償
効果
世界初のデジタル回路による高速な送受信技術により、Gbpsクラスの高速送受信ICの設計・開発期間を従来に比べ約半分と、大幅に短縮することができます。これによっ て、さまざまな通信機器に向けてタイムリーな品種提供が可能になります。
さらに、今回のデジタル技術を用いた方式は、アナログの方式と比較して、半導体の微細化プロセスの進化による小型化が容易です。
今後
デジタル信号処理の最適化を行い、さらなる低消費電力化を進めます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 株式会社富士通研究所:
- 代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
- 注2 トロント大学:
- University of Toronto。大学長 David Naylor、所在地 カナダ オンタリオ州トロント。
- 注3 Gbpsクラス:
- 通信信速度の単位のひとつで、1秒間に何十億ビットのデータを送れるかを表す。10Gbpsは100億bps(=10,000Mbps)で、1秒間に100億(=10の10乗)ビットのデータを送れることを表す。
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
プラットフォームテクノロジー研究所 デザインソリューション研究部
電話: 044-754-2635(直通)
E-mail: hsio_adc_pr@ml.labs.fujitsu.com
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