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PRESS RELEASE (技術)

2009年10月5日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

電子ペーパーを利用した外来患者案内ソリューションの実証実験を実施

省電力かつきめ細やかな待ち人数配信で、病院の負担と患者様の不安を軽減

株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)(注1)は、このほど富士通株式会社と共同で、電子ペーパーを利用した外来患者案内ソリューションの実証実験を行いました。本ソリューションは、富士通研究所が開発したカラー電子ペーパーと独自の無線システムを搭載した電子カードホルダーを電子カルテと連動させ、外来患者様ひとりひとりに、待ち人数などを配信するものです。

今回、富士通病院(注2)で実証実験を行い、本ソリューションが実際の病院での運用において、毎秒10台以上への情報配信を実現しながら、電子カードホルダーの充電は1週間に1度という省電力を実現し、病院の運用コストを低減できることを確認しました。さらに、患者様の待ち時間に対する不安を軽減することができるというアンケート結果も得られました。

背景


電子ペーパーを利用した電子カードホルダー

近年、医療の世界においても情報化が進み、電子カルテなどの導入が進んできました。その中で、患者様の利便性を向上させるためのシステムも開発され、待合室に待ち人数などを示す案内表示装置などの情報システムが普及しています。従来の案内システムは消費電力の大きな大型表示装置を導入する必要があり、導入後の病院の運用コストにおいても負担がかかっていました。

そこで、病院の運用コストに配慮しながらも、患者様ひとりひとりに個別の情報を配信するシステムが期待されています。富士通研究所では、患者様がICカードの診察券を挿すだけで、受診までの待ち人数や行き先をリアルタイムに表示する電子カードホルダーと電子カルテとを連携させた外来患者案内ソリューションを開発しました。

この外来患者案内ソリューションには次のような特長があります。


  1. 電子ペーパーを搭載した低消費電力の無線端末

    ICカードの読取機能付の電子カードホルダーに、富士通研究所が開発した書換え時以外は電力を使用しない低消費電力のカラー電子ペーパーを搭載することで、PHSや無線LANなどの携帯端末に比べて10分の1以下の消費電力となりました。

  2. きめ細やかな配信を可能とする無線システム

    医療用途へも利用可能な低送信出力の無線通信規格IEEE802.15.4(注3)に準拠し、当社独自のプロトコルを追加することで、1台の無線アクセスポイントで毎秒14台の電子カードホルダーに案内情報を通知可能な無線配信システムを開発しました。

実証実験と結果

今回、本ソリューションを7月より富士通病院に導入し、(1)実運用時の省電力性能と運用コストの削減効果、(2)無線配信性能の評価、(3)患者様に対して、診察までの待ち人数や診察室への呼び込みを通知する配信サービスを行い、病院スタッフや患者様による配信サービスの評価を調査しました。この実証実験により下記のような評価結果が得られました。(図1)

  1. 省電力による運用コストの削減:

    今回の実証実験では、電子カードホルダーへの平均配信間隔は4分であり、電子ペーパーの搭載と無線系消費電力の制御により、平均消費電力は0.1ワット以下という低消費電力動作を確認できました。これにより長時間動作が可能になり、従来のPHSなどを用いた場合、毎日必要と考えられる充電間隔は、本電子カードホルダーでは一週間で十分となり、運用コストの削減につながることがわかりました。

  2. きめ細やかな配信能力は大規模システムにも十分対応可能:

    今回の実証実験で、1台の無線アクセスポイントがカバーする待合室で稼動する100台の電子カードホルダーに対して、個別に変動する待ち人数などの情報を10秒以内に配信できることがわかりました。これにより、大規模システムにも十分対応できることがわかりました。

  3. 患者様の高い評価

    今回の実証実験では、357名の患者様に対してアンケート調査を行ったところ、
    ・待ち人数の更新や診察室への呼出しはわかり易い・・・85%
    ・待ち人数の表示は必要だと思う・・・95%
    という評価が得られ、待ち人数や呼び出しの通知サービスの有効性を確認できました。


図1 実証実験での配信サービスの実例

効果

上記の結果により、従来の大型表示装置を代替することで、省電力による運用コストの削減が可能となります。また、診察への待ち人数などをきめ細やかにお知らせすることで、患者様の待ち時間に対する不安を軽減し、病院内のどこでも待てることにより、待ち時間の有効活用を図れます。

今後

病院の運用コスト削減や再来受付装置の代替による患者サービスの向上を追求すると同時に、入院患者様や病院スタッフ向けの情報配信ソリューションへの応用検討も進めます。

なお、本ソリューションは、2009年10月6日(火曜日)~ 10月10日(土曜日)に幕張メッセ(日本コンベンションセンター)で開催されるCEATEC JAPAN 2009 の富士通ブース(ホール4)に出展します。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 富士通病院:
院長 三宅 仁、所在地 神奈川県川崎市。富士通株式会社の企業立病院として許可を受け1951年に開設。
  注3 無線通信規格IEEE802.15.4:
PAN(personal area network)向けの近距離無線規格。空中線電力はPHSや無線LANの約10分の1で、1ミリワット以下。

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技術に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
電子ペーパープロジェクト部
E-mail: ech_pr_res@ml.labs.fujitsu.com


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