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PRESS RELEASE (技術)

2009年7月6日
株式会社富士通研究所

多様な携帯電話用OSで利用可能なIP電話基盤技術を世界で初めて開発!

株式会社富士通研究所(注1)は、Symbian OS™、Windows Mobile®、Android™の各OS上で共通に利用でき、多様なIP-PBX(注2)システムに接続するソフトウェアを少ない工数で開発できるIP電話基盤技術の開発に世界で初めて成功しました。これにより、開発者は、電話網がIP化されるLTE(注3)および4G(注4)時代の多様な携帯端末に対してIP電話機能の早期提供が行え、携帯端末の利用者は、1台の端末で無線LANを使った内線電話サービスなど多様なFMC(注5)サービスを利用できるようになります(図1)。

本技術の詳細は、7月8日から10日、大分県別府市で開催される「マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO 2009) シンポジウム」で発表します。


図1 本技術を適用した端末によるFMCサービスイメージ

開発の背景

近年、企業では通信コスト削減や業務効率化を目的に内線電話のIP化が進んでいます。電話端末も、従来のように席に固定された電話端末だけでなく、携帯型IP電話端末を利用するケースが増えています。また、携帯端末プラットフォームのオープン化が進む中で、さまざまな携帯端末プラットフォームで内線付加機能も利用可能な高機能な携帯型IP電話端末が開発されるようになりました。このような端末を、社外では携帯電話として使い、オフィスでは無線LANによるIP電話端末として使い、家では電話の子機として使うといったFMCサービスの普及が始まります。このFMCサービスは、携帯端末の利用者にとって通信コスト削減と利便性の向上というメリットがあります。

課題

一方で、企業で使われる携帯端末は多様化してきており、FMCサービスを利用するためには各携帯端末へのIP電話ソフトウェアの搭載が必要になります。しかし、各携帯端末プラットフォームはOSやハードウェア機能など種類が多岐にわたっており、開発済みのIP電話ソフトウェアを異なるプラットフォームへ移植する際でも、新規に開発する必要がありました。また、ソフトウェア方式での機能追加も、同様に携帯端末プラットフォームごとに開発を行う必要がありました。さらに、IP電話の音質などの性能について、各携帯端末プラットフォームに合わせて移植したソフトウェアを個別に検証しなければなりませんでした。

このように、移植開発や機能追加は開発工数や検証期間が膨らむことから、現状では決められた端末で単一のFMCサービスしか提供できないという課題がありました。

開発した技術

上記の課題を解決するために、IP電話の音質を保障しつつOSの違いも含めた多様な携帯端末プラットフォームの違いを吸収するOS差異吸収モジュールを開発し、Symbian OS、Windows Mobile 6、Android、の各OS上でIP電話ソフトウェアが共通に動作するIP電話基盤技術の開発に世界で初めて成功しました。本技術の特長は以下の通りです(図2)。

  1. マルチプラットフォーム対応

    各OS固有の動作を共通した動作に置き換えるOS差異吸収モジュールを利用することにより、IP電話の基本処理に関わるモジュールの大部分を共通化しました。特に、音声制御については、IP電話の音質に影響を与えずに各OSで共通化可能な処理を抽出しました。開発者は、共通化されたモジュールを使うことで移植開発工数を削減できます。例えば、IP電話ソフトウェアの場合、約60キロステップのモジュールを共通化しており、開発者はさまざまな携帯端末プラットフォームに合わせて、その10分の1の5キロステップ程度を開発するだけで移植開発が行えます。また、音声制御も共通化することで、各OS上での音質チューニング時にモジュールの修正箇所を少なくすることができ、音質チューニングが容易になります。

  2. マルチSIP仕様対応

    IP-PBXベンダーごとにSIP(注6)標準仕様と差異がある個々の内線付加機能を追加するだけで異なるIP-PBXとの接続を可能にする機能差分追加機構を導入しました。開発者は、数百ステップ程度の差分開発だけで複数のIP-PBXへの対応が可能となります。また、今後、LTEや4G、NGN(注7)に対応するIP電話端末を開発する場合にも、同様に差分開発だけで各SIP仕様に対応可能となります。

    さらに、開発者は、IP電話機能だけでなく、SIPを用いた機能として、プレゼンス管理(注8)やインスタントメッセージング、さらに暗号化通話機能などを、SIP機能差分として容易にこの基盤に追加することができます。


    図2 IP電話端末基盤アーキテクチャー

効果

本技術を用いることで、IP電話ソフトウェアを他の携帯端末プラットフォームへ移植する場合に、すべてを新規開発するよりも10分の1程度にまで開発工数を抑えることができます。同時に、IP電話の音質チューニングも容易になります。また、これまで開発工数が膨らむため簡単には実現できなかった、多様なFMCサービスが利用できるソフトウェアの携帯端末への搭載が、本技術により開発工数を短縮することで実現できるようになります。このような結果、携帯端末の利用者は1台の端末で多様なFMCサービスを利用できるようになります(図1)。

今後

LTEおよび4G向け端末搭載や、FMCサービスと連携した他端末へのライセンスビジネス展開を目指し、適用する携帯端末プラットフォームの拡大について検証を進める予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 IP-PBX(Internet Protocol Private Branch eXchange):
IP電話の回線交換を行なう装置およびソフトウェア。
  注3 LTE(Long Term Evolution):
2010年頃からサービス開始予定の第3.9世代とよばれる携帯電話の高速データ通信規格のひとつ。
  注4 4G(4th Generation):
第4世代移動通信システムの略称。
  注5 FMC(Fixed Mobile Convergence):
固定通信と移動体通信が融合した通信サービス形態。
  注6 SIP(Session Initiation Protocol):
IP電話などで利用されるセッション確立プロトコル。
  注7 NGN(Next Generation Network):
IP技術を利用した次世代の通信ネットワーク。
  注8 プレゼンス管理:
相手が在席か、忙しいかなどの状態情報がリアルタイムに把握できる仕組み。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ヒューマンセントリックコンピューティング研究所 IPサービスシステム研究部
電話: 078-934-8248(直通)
E-mail: sip-pf-2009@ml.labs.fujitsu.com


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