PRESS RELEASE (システムプラットフォーム)
2009年4月2日
富士通株式会社
JAXA様の新スーパーコンピュータシステムが本格稼働
～ 世界最高となる91.19％の実行効率を達成 ～
当社は、このほど、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(理事長：立川 敬二、本社：東京都調布市、以下、JAXA)様の新スーパーコンピュータシステムの構築を完了し、本システムは4月1日より本格稼働を開始しました。
本システムで実施したLINPACK(注1)(リンパック)ベンチマークによる性能測定では、110.6テラフロップス(注2)(以下、TFLOPS)の実行性能と、91.19％の実行効率(注3)を達成しました。この結果は、最新のTOP500リスト(2008年11月発表）において、実行効率で世界1位、実行性能では日本1位、世界ランキングでも17位に位置づけられるものです。
［関連リンク］ハイエンドテクニカルコンピューティングサーバ「FX1」
新スーパーコンピュータシステムの特長
 新スーパーコンピュータシステム（写真提供：JAXA様） |
新スーパーコンピュータシステムの中核であるハイエンドテクニカルコンピューティングサーバ「FX1」は、合計3,392ノード、総理論ピーク性能135TFLOPS、総メモリ容量100テラバイト、総ストレージ容量11ペタバイトの大規模システムです。
この他、大規模メモリ空間を利用した数値シミュレーションのためのベクトル計算機やスカラSMP計算機など複数のサブシステムを設けることで、利用目的に応じた最適かつ効率的な計算環境を実現しています。
測定結果
本スーパーコンピュータのメインシステムである、3,008ノードの「FX1」によるLINPACKベンチマーク性能測定において以下の結果を達成しました。
| 内容 | 測定結果 | 最新のTOP500リストとの比較 |
|---|---|---|
| 実行性能 | 110.6TFLOPS | 日本1位、世界17位 |
| 実行効率 | 91.19％ | 世界1位 |
| 実行時間 | 60時間40分 | 世界1位 |
高性能を達成した背景
この結果は、当社のテクニカルコンピューティングサーバ「FX1」の高性能ハードウェア技術と、その性能を引き出すハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ミドルウェア「Parallelnavi(パラレルナビ)」およびシステム構築技術が結びつくことで実現したものです。
また、今回の測定では、「FX1」の高い信頼性を前提に、実行時間に制約を設けずに、メモリ容量の許す最大規模の処理にチャレンジしました。3,008ノード(3,008CPU、12,032コア)という大規模構成で、計算機にとって過酷な高負荷条件となる90％を超える効率で連続60時間以上かかる測定を完遂したことは、当社ハードウェアの高い信頼性を証明するものです。
宇宙航空研究開発機構 情報・計算工学センター センター長 藤井 孝藏 様からのコメント
世界トップの実行効率をもつこの新スパコンシステムを活用し、これまでと同様に航空分野での利用を進めるとともに、ロケットエンジン解析、ロケットプルーム音響解析や宇宙機の概念設計への適用を通じて、宇宙開発や宇宙科学・惑星探査分野での数値シミュレーション技術の本格利用と開発への実質的貢献を目指したいと考えています。
ハイエンドテクニカルコンピューティングサーバ「FX1」について
「FX1」は、マルチコアCPUの性能を最大限に引き出す新しいアーキテクチャーを採用し、当社にて開発した最新の高性能クアッドコアCPU「SPARC64™Ⅶ」とバランスの取れた高いメモリバンド幅を実現するチップセット、システム性能を最大限に引き出すための高性能コンパイラにより、既存のマルチコアCPUのシステムでは実現困難な非常に高い実行効率の計算を可能にします。
また、通信経路上で通信データに対して種々の演算を施すことが可能な高機能インターコネクト(注4)を活用することで、並列アプリケーションのスケーラビリティーを飛躍的に向上させるとともに、長年のテクニカルコンピューティング分野での経験で培われた「Parallelnavi」が提供するさまざまな運用機能・豊富な開発環境ツール群により、高性能並列計算環境を容易に利用することを実現します。
HPCミドルウェア「Parallelnavi」について
「Parallelnavi」は、科学技術計算に必要なコンパイラや数学ライブラリなどの開発環境に加え、実行環境、ファイルシステムなどを備えたHPCミドルウェアで、当社の提供する各種HPCプラットフォームに対応しています。
特に、数学ライブラリはLINPACKの処理性能を大きく左右するもので、今回の測定においても、世界最高の実行効率の達成に寄与しました。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 LINPACK：
- コンピュータの性能計測プログラム。LINPACKベンチマークはスーパーコンピュータの性能比較プロジェクト「TOP500」の標準ベンチマークとして採用されている。
- 注2 テラフロップス：
- 1テラフロップスは毎秒1兆回の浮動小数点演算速度。
- 注3 実行効率：
- 理論性能に対する実行性能の比。
- 注4 高機能インターコネクト：
- 文部科学省の委託事業「ペタスケール・システムインターコネクト技術の開発」の成果の一部を活用したノード間ネットワーク。
関連リンク
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