富士通

 

  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. 異なる通信プロトコルの間で負荷分散を実現するメッセージ中継技術を開発
  • English

PRESS RELEASE (技術)

2009年年3月12日
株式会社富士通研究所

異なる通信プロトコルの間で負荷分散を実現するメッセージ中継技術を開発

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、ネットワーク機能を持ったソフトウェアの部品をアプリケーションに提供するService Delivery Platform(以下、SDP)において、端末やアプリケーションの増加に対してサーバの負荷分散を実現するメッセージ中継技術を開発しました。本技術は、複数のサーバにソフトウェア部品を配置して負荷分散を行う際に、異なる通信プロトコルを用いる数多くの端末やアプリケーションとソフトウェア部品との間でやり取りされるデータ(以下、メッセージ)とソフトウェア部品とを対応づけることで、適切なサーバのソフトウェア部品にメッセージを受け渡すことができることを特長としています。本技術により、ソフトウェア部品を活用するアプリケーションの提供者は、アプリケーションの利用者や端末の増加を気にすることなく、さまざまな新しいサービスを提供できます。


開発の背景

ネットワーク技術が多様化し、固定電話や携帯電話の通話サービス、インターネットサービス、企業向けVPNサービスなどのさまざまなネットワークサービスが広く利用されています。また、高画質の映像配信などを可能にしたNGN(注2)サービスのようなネットワークサービスは、今後、増加すると考えられています。従来のネットワークサービスでは、サービスごとに個別のシステムとして構築されているため、通話サービスの録音内容をインターネット経由で確認するといった、それぞれを連携させたネットワークサービスを提供することは困難でした。

この問題を解決する考え方として、情報の収集や配信といったさまざまなネットワークサービスに共通のネットワーク機能を持ったソフトウェア部品(以下、サービス部品(注3))を提供し、それらのサービス部品を組み合わせてアプリケーションから活用可能にする共通基盤、すなわちSDPが注目されています。SDPはネットワークサービス事業者(注4)やキャリア(注5)などによって提供され、アプリケーションサービス提供者(注6)はSDPを活用することで、サービスを連携させたアプリケーションの開発量を低減し、開発の迅速化・効率化を図ることができます。

富士通研究所では、SDPに関する技術開発を行なっており、サービス部品として、RFIDタグやセンサーから得られる人やモノの現場情報をリアルタイムに収集・配信するための情報の格納技術を開発しました。


課題

SDPを活用したアプリケーションが提供するサービスにおいて、アプリケーションの種類だけでなく端末やセンサーの数が増加すると、サービス部品の処理がボトルネックとなり、アプリケーション利用者の操作性などを損なう可能性があります。この問題を解消するために、サービス部品を複数のサーバに分散して配置し、端末やセンサー、アプリケーションとの間でやりとりされるメッセージを各サーバへ均等に振り分けることで、サーバの負荷を分散する必要があります。


図1 従来技術

しかし、従来の負荷分散の方式では、異なる通信プロトコルを介し、複数のサーバに分散したサービス部品を共有する場合、それぞれの通信プロトコルの間で、サーバとサービス部品の結びつきを保証することができません。例えば、図1のように、SIP(注7)を介してセンサーから登録した位置情報を管理する位置管理サービス部品に対して、位置探索を行なうアプリケーションからSOAP(注8)を介して利用する場合、その位置情報が登録されたサーバを特定することができません。また、メッセージの中で位置情報を入れる箇所や表現形式が通信プロトコルごとに異なっていることから、ある通信プロトコルのメッセージの中を見て振り分けたサーバの情報と位置情報との対応関係を、別の通信プロトコルで利用することができません。


開発した技術


図2 開発した技術

上記課題を解決するため、次の様な特長を持つSDP向けメッセージ中継技術を開発しました(図2)。

  1. 端末・アプリケーション情報収集機構

    端末やアプリケーションからサービス部品にアクセスした際に、メッセージの中から得られるそれぞれの端末やアプリケーションを識別する情報(以下、識別情報)と、サービス部品が負荷分散により振り分けられたサーバを特定する情報の対応関係を収集します。

  2. サービス経路制御機構

    新たな端末やアプリケーションから適切なサーバのサービス部品にアクセスできるように、異なる通信プロトコルの負荷分散を行なう装置に対して、端末・アプリケーション情報収集機構で収集した識別情報とサーバの対応関係を事前に設定し、サービス部品へのアクセス経路を制御します。

このような特長により、センサー・端末とアプリケーションが、異なる通信プロトコルで共用するサービス部品を、サービス規模に応じて複数のサーバに配置する負荷分散環境が実現するだけでなく、通信プロトコルの追加やアプリケーション間の仕様変更を、既存の通信プロトコルを変更せずに対応することが可能になります。



効果


図3 本技術を適用したSDP基本構成

今回、ある施設内を移動する訪問客の位置情報に応じて、従業員を最適に配置するサービスのアプリケーションを試作しました。複数の訪問客の位置情報を、SIPを介して複数のサーバに登録し、その位置情報を、SOAPを介して参照するアプリケーションのメッセージが、それらのサーバの中から対応するサービス部品が実行されている適切なサーバへ振り分けられ、サーバの負荷分散が実現できることを確認しました。

サービス部品と今回開発したメッセージ中継技術により構築したSDPを活用することで、アプリケーションサービス提供者は、さまざまな新しいサービスをアプリケーション利用者や端末の数の増加を気にすることなしにサービスを提供できます(図3)。


今後

今後、本技術の性能検証を行っていくとともに、ネットワークサービス事業者やキャリア向けSDPに適用する製品の具体的な検討を進める予定です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 NGN:
Next Generation Networkの略で、IP技術を利用した次世代の通信ネットワーク。
  注3 サービス部品:
さまざまな端末・センサーとの通信を行い、複数のアプリケーションが共用・再利用できる機能。
  注4 ネットワークサービス事業者:
設備を借りて通信サービスを提供する通信事業者。
  注5 キャリア:
自前の設備で持って通信サービスを提供する通信事業者。
  注6 アプリケーションサービス提供者:
SDPを活用して開発したアプリケーションで顧客にサービスを提供する事業者。
  注7 SIP:
Session Initiation Protocolの略で、IP電話、テレビ会議、チャットなどのマルチメディアの通信制御するための手順。
  注8 SOAP:
Simple Object Access Protocolの略で、XMLとHTTPなどをベースとした、他のコンピュータにあるデータやサービスを呼び出すための手順。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
サービスプラットフォーム研究センター
電話: 044-754-2629(直通)
E-mail: pr-sdp-pf@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。