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PRESS RELEASE (技術)

2008-0233
2008年11月17日
株式会社富士通研究所

世界初! 車両全周囲の見たい所を見やすくリアルタイムで表示する映像処理技術を開発


車両全周囲の表示映像

株式会社富士通研究所(注1)はこのほど、世界で初めて、ドライバー視界補助向けに車両全周囲を見やすくリアルタイムで表示する映像処理技術を開発しました。ドライバーは運転シーンに応じ、車両全周囲を「見たい所を見やすい視点・視界」で表示した映像により確認することが可能となります。本技術により、駐車時、狭い道でのすれ違い、見通しの悪い交差点への進入や右左折など、さまざまなシーンでドライバーの安全運転を支援することができます。



なお、今回の技術内容は、米国ニューヨークで11月16日から開催されている「ITS世界会議ニューヨーク2008 (15th World Congress on Intelligent Transport Systems & ITS America's 2008 Annual Meeting and Exposition)」において発表予定です。

開発の背景

近年、ドライバーの安全運転を支援するツールとして車載カメラの装着率が拡大し、2007年の国内車載カメラ市場は400万台を超える規模にまで拡大してきています。また、米国では車両の後方視界を確保することを義務付ける法案が今年2月に可決されていますが、その事前調査ではこの解決策としてカメラが最も優れているという調査結果が報告されるなど、ドライバーの安全運転を支援するために、車両周囲を確認する車載カメラシステムへの期待が国際的に高まっています。

車載カメラシステムとしては、バックモニタや見通しの悪い交差点などでの死角の視界表示をするブラインド・コーナー・モニタ、すれ違い時の死角を補助する側方モニタなどの単体カメラを用いた製品に加え、駐車時における視界補助として、車両周囲に取付けた4つのカメラで路面を撮影し、2次元映像としてモニタに映す俯瞰カメラシステムなどが実用化されています(図1)。



図1 従来技術の例

課題

ドライバーが、駐車、右左折、合流など多様な運転シーンにおいて、瞬時に車両周辺を確認できる視覚補助を実現するためには、以下の課題解決が必要となります。


図2 従来技術の表示例
  1. ドライバーの視界確認の負荷軽減

    ドライバーは目視に加え、ルームミラー、左右ドアミラーなど各種ミラー、さらにバックモニタなどの視界補助機器を駆使し、多くの視界を迅速に確認し、安全性の確保に努めなければならず、視界確認の負荷は高くなっています。

    4つのカメラを用いた俯瞰カメラシステム(図2)においても、車両近傍2メートルの路面しか映像化できず、バックモニタの映像を加える必要があり、ドライバーにとって見るべき視界の情報が統合されず、視界確認の負荷は十分に軽減されていません。

  2. モニタ上の映像の視点・視線、視界についてのドライバー認知性の問題

    従来の技術では、カメラごと、機能ごとに異なった視点・視線で異なった範囲を、瞬時に切り替えて表示するため、ドライバーは、どの場所をどこから見ているのかを瞬時に認識し、安全確認を行うことが困難であり、適用できる利用シーンが限られるだけでなく、慣れるためにも時間が必要でした。


開発した技術

上記課題を解決するため、車両の全周囲の映像を自由な視点・視線からモニタに表示し、表示映像の切り替え時において滑らかな視線移動ができる、視界補助向け車載映像処理技術を世界で初めて開発しました。

今回、車両周囲に4つのカメラを設置し、車両周囲のカメラ映像を仮想的な3次元の立体曲面に投影し、その映像を自由な視点からの映像に変換する3次元仮想投影視点変換技術を開発しました。これにより、見たい所を見たい視点で表示した映像で確認することができ、ドライバーの視界確認の負荷を軽減することが可能となります。(図3)



図3 3次元仮想投影視点変換技術の説明

さらに、運転シーンごとに異なる表示映像の切り替え時において滑らかな視線移動ができるよう、切り替え前後の視点・視線・視界を補間する映像を連続的に生成する視点補間技術を開発しました。これによりドライバーは、どの場所をどこから見ているのかを瞬時に認識し、安全確認を行うことが可能となります。

効果

今回、本技術を組込み向け汎用画像処理基盤OpenGL ES(注2)をサポートした、富士通マイクロエレクトロニクス株式会社(注3)の車載向けグラフィックスSoC(注4)(MB86R01)と4つのカメラ映像合成処理LSIとともにシステム搭載し、車載用視界補助システムとして、映像処理時間30ミリ秒のリアルタイム動作を実現しました。

本技術により、多様な運転シーンにおいて、ドライバーは注意が必要な車両周囲の状況を、1つの映像で瞬時に認知し把握することが可能となります。

例えば、駐車時には路面だけでなく周囲の人や車の状況も確認できます(図4)。また、高速道路などへの合流時には、後方、左右を同時に見ることができ自車両の合流スペースの確認などが容易になります。さらに、左折時の巻き込み確認など、運転シーンに応じ、見たい所を見やすい視点から瞬時にリアルタイムで見ることができます(図5)。



図4 開発技術の効果(すべて同じ元映像を利用)


図5 開発技術による表示例

今後

今後、多様な運転シーンでの視界補助の効果検証を進め、自動車向けに、車載グラフィックスSoCと画像処理ソフトウェアなどによる映像ソリューションとして、また、車載カメラ視界補助システムとして、順次製品展開を図っていく予定です。さらに、商用車など運輸関連におけるセキュリティ、安全管理などの業務用映像ソリューションとしてもビジネス化の検討を進めていきます。


商標について

OpenGLは米国および/あるいはその他各国でのSilicon Graphics, Inc.社の商標または登録商標です。
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 OpenGL ES:
コンピュータでグラフィックスを扱うための標準的なプログラム・ライブラリであるOpenGLの組込み機器での利用に向けたサブセット。
  注3 富士通マイクロエレクトロニクス株式会社:
代表取締役社長 岡田晴基、本社 東京都新宿区。
  注4 SoC:
System On a Chipの略、マイクロプロセッサ、チップセット、ビデオチップ、メモリなどの機能が1チップに集積された半導体集積回路。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITS研究センター
電話: 078-934-2429 (直通)
E-mail: omni@ml.labs.fujitsu.com


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