PRESS RELEASE (技術)
2008-0177
2008年9月5日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社
~プリンタやドキュメントスキャナなどの、開発効率化や信頼性向上に貢献~
近年、プリンタやドキュメントスキャナ、コピー機、ATM(現金自動預け払い機)など、ゴムの摩擦力を利用して、コピー用紙やはがき、紙幣といったシートの搬送・分離を行う機器は、多量なシートを高速に処理する必要があるため、高い信頼性が要求されています。従来、製品開発の際には装置を試作して何度もシート搬送機能の評価・改良を繰り返す必要があり、開発にかかる工数が膨大でした。
装置の開発工数の削減には、シミュレーション技術が有効ですが、シート搬送機構において発生する摩擦挙動や静電気による用紙吸着現象のシミュレーションを行うことは困難でした。
一般的な摩擦現象では静摩擦係数が動摩擦係数より大きいのに対して、ゴム部材とシート(特に紙)においては動摩擦係数が大きくなるという特殊な摩擦挙動を示す場合があり、通常の摩擦係数を定義するだけでは十分に現象を再現することができませんでした。
また、レーザープリンタなどでは、粉末のトナーで生成した画像を静電気の力で用紙に写し取って印刷しますが、この静電気力が用紙の安定な走行に与える影響も調べておく必要がありました。しかし、この調査も非常に困難でした。
上記課題を解決するため、以下の2つのシミュレーションを行う技術を開発しました。
ゴムとシート間における特殊な摩擦挙動のシミュレーションを行う技術を開発しました。「LS-DYNA」の機能を使って、接触定義(注5)の最適化およびゴムとシートが接触した時に生じる力を表現する方法を開発することにより、特殊な摩擦挙動のシミュレーションを行うことが可能になりました。
レーザープリンタなどにおいて、紙にかかる静電気力の理論式を導き出してプログラム化し、「LS-DYNA」の外部プログラム追加機能に適用することにより、静電気力による用紙吸着現象のシミュレーションを行う技術を開発しました。
今回開発した技術を、ATMの紙幣収納機構の開発に適用して実証実験を行ったところ、収納・積載スタッカ(注6)において、排出されてきた紙幣を高速回転するゴム製羽根車で引き寄せて端部を揃える挙動のシミュレーション画像と、高速度カメラによる実写映像がほぼ一致し (図1、図2)、シミュレーションが実機現象を再現していることを確認しました。
このATMの実証実験においては、2本のゴム羽根同士が接触しながら紙幣に接触している状態やゴム羽根のしなり形状などの動的なシミュレーションが行え、実機では測定できなかった紙幣の引き寄せ力・挙動などが詳細に評価できました。これにより、製品の設計開発段階でゴム羽根の本数を減らすことができ、コストダウンが可能になりました。
また、連帳紙(注7)用高速レーザープリンタ開発の実証実験では、実際には観測不可能な装置内の用紙挙動のシミュレーションを行うことができ、静電気力によって用紙が浮き上がる現象が解明できました。これにより、製品の信頼性向上に貢献しました。
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本技術により、積載シートの摩擦分離やシート搬送・収納機構の挙動解明・性能評価などで装置の試作回数を低減することができ、開発の大幅な効率化と信頼性の向上が図れます。
富士通株式会社は、自動車の衝突解析や電機製品の落下解析の分野を中心に「LS-DYNA」の販売・コンサルティングを行っていますが、2008年度下期より、今回開発した技術を活かし、プリンタやドキュメントスキャナをはじめとする機器のシート搬送・収納機構解析分野への販売・コンサルティングも行う予定です。
LS-DYNAはLivermore Software Technology Corporation の商標です。
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
[技術に関するお問い合わせ]
株式会社富士通研究所
基盤技術研究所 センシングシステム研究部
電話: 046-250-8224 (直通)
E-mail: phsim@ml.labs.fujitsu.com
[「LS-DYNA」に関するお問い合わせ]
富士通株式会社
テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部 計算科学ソリューション統括部
電話: 043-299-3240 (直通)
E-mail: dyna-sales@strad.ssg.fujitsu.com
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