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PRESS RELEASE

2008年3月28日
国立大学法人東京工業大学
株式会社富士通研究所

次世代FeRAM向け新メモリ材料を開発

~1,000億回の書き換え回数とリーク電流の低減を実現~

国立大学法人東京工業大学(以下、東京工業大学)(注1)と株式会社富士通研究所(注2)は、次世代FeRAM(エフイーラム)(注3)向けの新しいメモリ材料を開発しました。

この新材料は、次世代FeRAMの材料として期待されているビスマスフェライト(以下、BFO)(注4)の成分の一部を置き換えたものです。今回、この材料を用いることで、1,000億回の繰り返し書き換えおよびリーク電流の低減に成功しました。新材料は、180ナノメートル(以下、nm)世代の製品で採用されているものと同じ構造のままで、90nm世代以降のFeRAMに適用することができ、大容量FeRAMの実用化を可能にします。

なお、本技術について、東京工業大学は文部科学省科学技術振興調整費を受けています。

開発の背景

ユビキタス社会において、携帯電話やICカード、RFIDタグなどは、高いセキュリティを保持しながら、大量な情報をよりスピーディーに処理することが求められています。高速かつ低消費電力で動作する不揮発メモリ(注5)として、それらの製品に採用されているFeRAMに対しても、大容量化が期待されています。

課題

FeRAMの大容量化には、先端テクノロジーによる微細化が必要となります。

現在、180nm世代テクノロジーのFeRAMのメモリ材料としてチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZT)(注6)という強誘電体(注7)が用いられています。しかし、PZTは微細化を進めると、情報の記憶に必要となる電荷量が得られなくなってしまい、130nm世代テクノロジーへの適用までが限界と言われています。

これに対し、BFOは、PZTより大きな電荷量を蓄えられる強誘電体であるため、新しいメモリ材料として注目されています。しかし、BFOを適用した場合、PZTに比べ、書き換え回数が不十分で、リーク電流が大きいことが、実用化に向けての課題となっていました。

今回開発した技術

今回、BFOの成分の一部を置き換えたゾルゲル溶液を用いて、BFOを結晶化するゾルゲル法(注8)と呼ばれる技術を2種類開発しました。

  1. ビスマス成分の一部をサマリウム(注9)で置き換えることで、書き換えによる劣化を抑える技術。
  2. 鉄成分の約半分をクロムに置き換えたゾルゲル溶液を用いて、BFOを結晶化し、リーク電流を低減する技術。

効果


図  今回開発した新材料のリーク特性

新材料の評価結果は、以下のとおりです。

  1. ビスマス成分の一部をサマリウムへ置き換えたメモリ材料は、書き換えによる劣化が大幅に改善し、PZTでの書き換え回数の限界を超す、1,000億回まで動作することを確認しました。
  2. 鉄成分の半分をクロムへ置き換えたメモリ材料は、従来のBFOに比べ、リーク電流は数千分の1に低減し、PZTと同等に抑えることができました。(図参照)

本成果により、BFOはPZTに替わるFeRAMのメモリ材料として有効であり、さらに90nm世代から65nm世代においても、現行の180nm世代の製品で利用されているものと同じ構造で実用化することが可能となり、大容量化の見通しを得ることができました。

今後

新しく開発した両技術の融合を目指します。さらに、強誘電体の薄膜化により、低電圧化を進めていきます。

以上

注釈

  注1 国立大学法人東京工業大学:
学長 伊賀 健一、本部 東京都目黒区。
  注2 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注3 FeRAM:
Ferroelectric Random Access Memory。低消費電力で、高速書き込み、書換え可能回数が膨大という特長の不揮発性メモリ。「FRAM」とも言う。
  注4 ビスマスフェライト(BFO):
BiFeO3の化学式であらわされるビスマス、鉄、酸素からなる結晶。
  注5 不揮発性メモリ:
電源を切っても記憶を保持できるメモリ。
  注6 チタン酸ジルコン酸鉛(PZT):
Pb(Zr,Ti)O3の化学式であらわされる鉛、ジルコニウム、チタン、酸素からなる結晶。
  注7 強誘電体:
外部から電場を加えていなくとも電気分極を持ち、電場に応じてその向きを変えることができる物質。
  注8 ゾルゲル法:
セラミクスや結晶体を簡単に得る方法。金属の有機化合物溶液を塗布・薄膜化し、加水分解により金属酸化物あるいは金属水酸化物のゾル(微粒子)を形成し、さらに反応が進みゲル(ゼリー状固体)となり、それを加熱することにより得られる。
  注9 サマリウム:
ランタノイド系希土類元素のひとつで、磁石、触媒に使われる。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

国立大学法人東京工業大学
大学院総合理工学研究科 石原研究室
電話 : 045-924-5148
E-mail : ishiwara.h.aa@m.titech.ac.jp

株式会社富士通研究所
シリコンテクノロジ開発研究所 混載メモリ開発部
電話 : 046-250-8377 (直通)
E-mail : info-fram@ml.labs.fujitsu.com


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