PRESS RELEASE (技術)
2008-0014
2008年2月4日
株式会社富士通研究所
~90nm世代の標準CMOS技術によるミリ波帯高出力増幅器を実現~
本技術の詳細は、米国サンフランシスコで2月3日から開催されている国際固体素子回路会議ISSCC(International Solid State Circuits Conference)にて発表します。(発表番号31.3)
ミリ波は、2点間の距離の高精度な測定機能や大容量のデータ伝送に優れるため、車載レーダーシステムや無線通信システムなどへの適用が進められています。
これらのシステムのRFフロントエンド回路(注3)には、高周波での信号増幅機能や出力性能が必要とされるため、化合物半導体を適用することが一般的でした。一方、デジタル回路の高集積化・高機能化に優れるCMOS半導体は、微細化技術の進展により高速化が進み、化合物半導体並みの高周波動作が可能になりました。
標準CMOS技術のミリ波帯増幅回路への適用は、ミリ波信号の損失が大きいため、実現は困難でした。増幅器の増幅率の向上のためには、回路図には現れない寄生容量(注4)などの影響を正確に把握し、整合回路(注5)における信号損失を抑制することで、増幅性能を最大限に引き出すことが必要です。
今回、以下の2つの設計技術を確立することにより、標準CMOS技術を用いてミリ波帯で動作可能な増幅回路を実現しました。
上記の2つの技術の組み合わせにより、世界で初めて77GHz における増幅器の動作で、8.5dBの増幅率と6.3ディービーエム(以下、dBm)の飽和出力を達成しました(図1)。さらに今回、60GHzの周波数において、8.3dBの増幅率と10.6dBmの飽和出力を達成した増幅器も実現しています。
これにより、77 GHzの周波数を利用する車載レーダーに安価な標準CMOS技術を適用し、さらに、60 GHz帯を利用する無線通信システムの電波通信距離を伸ばすことが可能になります。
また、ベースバンド回路とRFフロントエンド回路とのワンチップ化を実現すれば、高価とされてきたミリ波送受信ICチップをよりいっそう小型化でき、将来、ミリ波帯を利用した車載レーダーや無線システムの普及が期待できます。
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(図1)77GHz動作増幅器
標準CMOS技術を用いて、増幅回路のさらなる高出力化や、変調器などを集積した送受信回路の開発を進め、ミリ波帯を用いた車載レーダーシステムや無線通信システム用ICチップを実現していきます。
以上
株式会社富士通研究所
基盤技術研究所
先端デバイス研究部
電話:046-250-8244(直通)
E-mail: amr@ml.labs.fujitsu.com
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