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PRESS RELEASE (技術)

2007-0190
2007年9月14日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社

チップ部品のめっき中に含まれる鉛の効率的な分析手法を開発

~RoHS指令対応の強化と検証の効率化を実現~

株式会社富士通研究所(注1)と富士通株式会社は、RoHS(注2)指令において従来対応が困難であった、規制対象外物質の鉛ガラスなどに隣接する電極はんだめっき中の鉛を効率的に分析する手法を開発しました。

本手法によって、製造現場や調達品の受入れ現場で広く利用されている蛍光X線分析装置(以下、XRF)を用い、短時間に電極はんだめっき中の鉛を分析することが可能となり、RoHS指令対応の強化と検証分析の効率化、低コスト化が実現できます。

今後、富士通グループの製造拠点へ展開を図るとともに、各種のめっきを含む部品などへの適用も検討していきます。

なお、本手法の詳細は、9月17日(月曜日・祝日)から19日(水曜日)、京都大学で開催される「第43回X線分析討論会」(ICXOM:19th International Congress on X-Ray Optics and Microanalysisと併催)にて発表する予定です。


背景


図1 チップ抵抗電極部断面(例)

2006年7月からEUにおいてRoHS指令が発効し、さらに、世界各国でも同様の規制が発効または検討されています。RoHS指令では、電気・電子機器に一定以上の濃度の有害6物質を使用することを禁止していますが、技術的に他の物質への代替などが困難な用途については、除外用途として使用禁止の対象からはずされています。

しかし、図1のチップ部品のように、保護膜や抵抗体などに使われる鉛ガラスは除外用途であっても、隣接する電極のはんだめっき中の鉛は規制対象という場合があります。はんだめっきには鉛が含まれている可能性が高く、こうした部品の鉛分析も効率よく行う必要があります。


課題

調達品の受入などの際、RoHS指令への適合の検証には、XRFによるスクリーニング分析が広く実施されています。しかし、本来XRFは、均質な材料を試料とする分析方法のため、チップ部品のように、複合材料で構成され、特に薄い層が重なった電極部分のはんだめっきを高精度で効率的に分析することは容易ではありません。また、ICP-AES(注3)などの汎用的な化学分析法では、試料の前処理ではんだめっきを溶解する際に、鉛ガラス中の鉛も溶出することがあり、はんだめっきのみに含まれる鉛の濃度を高い精度で測定することは困難でした。

技術の概要


図2 フィルム上のはんだめっき

今回開発した手法は、スクリーニング分析に現在広く使用されているXRFを用いて、はんだめっき中の鉛を効率的に分析するものです。部品のはんだめっき部分を、ラッピングフィルムで研磨し、フィルム上に移った粉末状のはんだめっき(図2)をフィルムごと測定試料とすることで、除外用途の鉛の影響を排除した分析が可能になります。

本技術のポイントは以下のとおりです。

  1. プラスチックフィルム基材の使用により高感度な分析を実現

    XRFによるはんだめっきの分析に影響しない炭素、酸素、水素、アルミなどの軽元素からなるプラスチック製のラッピングフィルムを利用しました。これにより、はんだめっき以外の物質の影響をできるだけ排除して、高感度な分析を実現しました。

  2. すずによる強度補正により鉛定量値のばらつきを低減

    はんだめっきの主成分であるすずの強度により鉛の強度を補正することで、フィルムに移したはんだめっき量の多少による鉛定量値のばらつきを低減しました。

  3. 作製した測定試料の適性度を評価

    測定試料を短時間で作製でき、また、試料の良し悪しを分析と同時にチェックできます。XRFで感度不足の場合は、追加研磨してはんだめっき量を簡単に増やすことができます。また、はんだめっきの下地層の元素(たとえば銀)の有無で、研磨のしすぎを確認することもできます。

効果

本手法は、広く利用されているXRFと安価なフィルムを使用するもので、特別な機械や工具などは不要です。さらに測定試料の作製も簡単なため、外部に分析を委託する必要はありません。これによりチップ部品の電極はんだめっき中の鉛の定量分析を、製造現場や調達品の受入れ現場で、低コスト、短時間、高精度で実施できるようになります。

  • 分析時間 : 汎用的な化学分析に比べて10分の1の、30分以下。
  • 分析精度 : 検出下限約700ppm、定量精度±30%以内(目安)。

本手法を、チップ部品の受入検査などに適用することで、RoHS指令に対する検証を効率的に実施することが可能となり、規制への対応を強化することができます。


今後

本技術は、2007年中に富士通グループの製造拠点や、受託分析会社である富士通クオリティ・ラボ株式会社(注4)へ展開し、RoHS指令対応のいっそうの強化を図ります。

さらに、従来の汎用的な方法では分析が困難であった、とくに高濃度の鉛を含有する快削金属上の無電解ニッケルめっきなど、薄膜中の鉛の定量分析への適用の検討を進めます。


以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 RoHS:
the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipmentの略。電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令。
  注3 ICP-AES:
Inductively coupled plasma atomic emission spectrometerの略。誘電結合プラズマ発光分光分析装置。
  注4 富士通クオリティ・ラボ株式会社:
代表取締役社長 木村弘正、本社 神奈川県川崎市。

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技術に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
基盤技術研究所
電話: 046-250-8361(直通)
E-mail: rohs@ml.labs.fujitsu.com


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