Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

PRESS RELEASE (技術)

2007-0031
2007年2月14日
株式会社富士通研究所

世界最小消費電力のA/D変換器を開発

~0.8Vの低電圧、6.5mWの低消費電力を実現~

株式会社富士通研究所(注1)は、分解能10ビット、変換速度毎秒80メガサンプル(以下、MS)でのA/D変換を動作電圧0.8ボルト(以下、V)、6.5ミリワット(以下、mW)の消費電力で実現するパイプライン方式A/D変換器を開発しました。今回開発した技術により、画像機器や通信機器向けシステムLSIの低消費電力化が可能となります。

本技術の詳細は2月11日から15日に米国サンフランシスコで開催されている国際固体素子回路会議ISSCC(International Solid State Circuits Conference)で発表します。

背景、課題

近年のモバイル通信機器では、電池駆動という電源条件下で、より長時間安定して動作することが求められています。こうした低消費電力を実現する一番の解が低電源電圧化です。

A/D変換器のようなアナログ回路は、電源電圧範囲内の中間に位置する電圧を扱い、それを最適な状態で動作させることが必要となります。電源電圧が低くなるとその最適状態のマージンが減るため、アナログ回路の特性も劣化することになります。

このため、多くのLSI内でも利用されているA/D変換器のようなアナログ回路の性能を保ったまま、低電源電圧化することは困難であり、これまで動作電圧として1.2V程度が最低でした。しかし、LSI全体の低電源電圧に向けては、A/D変換器も1Vを下回るさらなる低電源電圧動作が求められていました。

技術の概要

製造時の素子特性ばらつき、動作時の温度、電源電圧などが変動しても、回路内に設定されたトランジスタに必要な電圧設定を最適に保持する機能をもつアナログ回路技術を開発しました。これにより、最小マージンで動作点を設定でき、電源電圧が下がってもアナログ特性を維持することが可能となりました。この技術は他のアナログ回路にも幅広く応用することが可能です。

効果

今回開発した低電源電圧回路技術を、分解能10ビット、変換速度毎秒80MSのパイプライン方式A/D変換器に適用し、世界最小の消費電力6.5mWを実現しました。パイプライン方式A/D変換器のスペックは以下の通りです。これは、従来の技術に比べて約3倍となる、世界最高の電力効率になります。

分解能 10 ビット
変換速度 毎秒80 MS
テクノロジー 90nm CMOS
電源電圧 0.8から1.3V
消費電力 6.5mW (0.8V時)

今後

今回開発した技術を、今後ほかのアナログ回路にも適用し、2007年度に、富士通株式会社のデジタル家電向け、および通信機器向けシステムLSI製品などへの搭載を目指します。


以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。

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本件に関するお問い合わせ

技術に関するお問い合わせ先

株式会社富士通研究所 システムLSI開発研究所 アナログ回路研究部
電話:044-754-2690(直通)
E-mail: adc_info@ml.labs.fujitsu.com


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