PRESS RELEASE (技術)
2007-0030
2007年2月14日
株式会社富士通研究所
本技術の詳細は2月11日から15日に米国サンフランシスコで開催されている国際固体素子回路会議ISSCC(International Solid State Circuits Conference)で発表します。
半導体プロセスの微細化により、集積度が向上するとともに、消費電力の増大も懸念されています。低消費電力に向けては、電源電圧をできるだけ低下させる技術がますます重要になっています。一方、回路動作に伴ってLSI内の電源電圧には変動が生じます。今後、電圧変動をこれまで以上に低く抑えてかつ信頼性のあるLSIを実現するためには、LSI内部の電源電圧の動きをリアルタイムに観測してその性質を理解し、誤動作につながらないような対処をすることが必要になります。
図1 開発したテストチップ |
これまで、LSI内の電源電圧変動を測定する代表的な手法として、等価サンプリング手法がありました。これは、周期的な電圧変動に有効で、周期的に少しずつずらしながらサンプリングを行い、電圧変動の波形を再現する手法です。この手法は測定器を小さくでき、データを取り出すための帯域を小さくできるという特徴がありますが、測定する波形に周期性を仮定しなければならないという欠点があります。実際のLSIが動作している状態では、電圧変動は周期的ではないため、現実にはこの手法は適用できませんでした。
また、実際のLSIの動作中に電圧変動の波形をリアルタイムに観測する実時間サンプリング手法も提案されています。しかし、この手法は高速なサンプリングを実現しなければならないため、面積の大きな測定器と広い帯域のデータ通信が必要で、実際のLSIに実装するのはコスト増が大きいため現実的でないという問題がありました。
LSIの電圧変動では、ピークが下限電圧を下回る場合が特に問題になります。またピークの発生頻度は低いという特徴もあります。今回、このような性質に着目した新しい実時間サンプリング手法を考案しました。
本手法では、電圧変動のピークのレベルを検出し、ピーク付近の電圧と発生時間のみを捉えます。測定は2つのステップからなります。第1ステップで、電圧のばらつきをヒストグラムで集計します。第2ステップではヒストグラムから測定すべき周辺の範囲を絞り込み、狭い範囲内だけで電圧の変動のピークとその発生時間を探します。検索範囲を限定することで、不必要なデータを捨てることができるため、測定器の小型化とともに外部へのデータ通信の帯域を低く抑えることが可能となり、実際のLSIに省スペース、低コストで実装できるようになりました。
今回の開発では、測定器となる電源電圧変動センサーをエイアールテックが設計し、上記の測定手法を実現するための全体アーキテクチャーと回路の設計を富士通研究所が行いました。
今回開発した実時間サンプリング手法により、従来手法と比較して電圧検出に必要な測定器の面積を14パーセントに、またデータ発生量を1万分の1以下にまで低減することに成功しました。これによって、実時間サンプリング手法を実LSI上に実装できるようになりました。実際に当社の90ナノメートルテクノロジーを用いてテストチップを作成し(図1)、LSIでアプリケーションが動作している状態で、世界で初めて電圧の変化をリアルタイムに観測することができました。
今後、本測定手法の実用化に向けた検証を行い、富士通株式会社の汎用LSIの設計や製品などへの適用を目指します。
以上
株式会社富士通研究所 システムLSI開発研究所 SOC設計技術研究部
電話:044-754-2657(直通)
E-mail: noise-measure@ml.labs.fujitsu.com
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