PRESS RELEASE
2006年8月30日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社
財団法人高輝度光科学研究センター
~ハードディスクの高密度化を加速~
株式会社富士通研究所(代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市 以下、富士通研究所)と富士通株式会社(以下、富士通)は、財団法人高輝度光科学研究センター(理事長 吉良爽、所在地 兵庫県佐用郡)と共同で、大型放射光施設SPring-8(注1)を利用して現在開発中のハードディスク(以下、HDD)の磁気ヘッド新材料が強い磁気を持つメカニズムを解明しました。この新材料は、鉄・コバルト(FeCo)とパラジウム(Pd)の二種類の膜を繰り返し層状に形成したものです。今回の測定により、通常では磁化しないパラジウムが鉄・コバルトと接することで磁化し、それに伴い、従来の鉄・コバルト材料よりも約20%磁化しやすくなることがわかりました。
本技術の詳細は、8月30日に滋賀県草津市の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催される第67回応用物理学会において発表します。また、SPring-8を用いた今回の測定は、文部科学省のナノテクノロジー総合支援プロジェクト、および先端大型研究施設戦略活用プログラムによる支援を受けて実施されました。
デジタルコンテンツの増大にともない、パソコンなどのIT系だけでなく、HDDレコーダやビデオカメラのようなコンシューマー市場においても年々HDDの大容量化が求められています。それを支えるのが、高い記録密度を持つディスク媒体や、高い磁気を持つヘッド材料の技術です。富士通では次世代のHDDヘッド用新材料の開発を行っており、鉄・コバルト層とパラジウム層を数十回繰り返し積層した材料(図)で、従来の鉄・コバルトのみによる材料に比べて、約20%磁化しやすい性質を見出しました(注2)。しかし、その現象のメカニズムは良く分かっておらず、今後、さらに高い磁気を持つ材料を開発するには、その発現メカニズムの解明が重要になっていました。
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従来のSQUID(注3)という装置を用いた磁気測定では、材料全体がどの程度磁化しやすいかは測定できましたが、材料中の個々の元素が材料全体にどのように寄与しているか不明でした。個々の元素別の磁化しやすさを評価できる測定法が求められていました。
今回、磁性材料の測定に用いる円偏光(注4)X線を利用できる世界有数の設備であるSPring-8放射光を用いて、上記素材における鉄、コバルト、パラジウムの各元素別のX線吸収率を測定することで各元素の磁化しやすさの測定に成功しました。
SPring-8のBL25SU(軟X線固体分光ビームライン)を利用した測定の結果、通常では磁化しないパラジウムが、鉄・コバルト層と接することで磁化していることが見出されました。一方、パラジウムと接する鉄・コバルト層も従来よりも磁化しやすくなっていることが分かりました。この結果、本素材が、従来の鉄・コバルト単体からなる素材に比べ、全体として約20%磁化しやすくなったと考えられます。
今回解明した磁化の構造を利用することにより、さらに高い磁気を持つHDDヘッド材料の開発が加速されると考えられます。将来的には1平方インチあたり1テラビットの高密度HDDの実現を支える技術の一つになります。
以上
株式会社富士通研究所
基盤技術研究所
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E-mail: materials-char@ml.labs.fujitsu.com
財団法人高輝度光科学研究センター
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