PRESS RELEASE (技術)
2006-0099
2006年6月13日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
独立行政法人情報通信研究機構
本技術の詳細は6月11日から米国サンフランシスコ市で開催されるマイクロ波の国際会議IMS2006 (International Microwave Symposium)で発表しました。
近年、凶悪犯罪の増加に伴い、住宅への不法侵入者を高精度で検知するセキュリティシステムへの関心が高まっています。侵入者の位置や行動の軌跡をリアルタイムで検知するには、cm単位で測位可能な高精度センサー技術が求められています。
このような用途向けのセンサーには、これまで赤外線、レーザー、超音波が利用されてきましたが、視野角が狭く死角が多かったり、対象物によっては反射されないなどの課題がありました。そこで、広い視野にわたり高精度で測位でき、ほとんどの物体からの反射信号を検出可能なウルトラワイドバンドレーダーが、車載レーダーや、セキュリティセンサーを実現する手段として期待されています。
|
UWBレーダーではパルス状信号を物体に放射、はね返った信号を検出し、往復に要した時間を計ることで距離を計測できます。パルス状信号の時間幅分の距離が誤差となるため、正確に距離を測定するには、パルス状信号の時間幅をできるだけ短くすることが必要です。たとえば5cmの分解能を得るには、時間幅が330ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)以下の信号が必要となります(図1)。しかし、従来のUWBレーダーに使用されていた信号生成技術では500~1,000ピコ秒が限界でした。
今回、極めて細いインパルス(注3)を特殊な帯域通過フィルター(注4)に通すことで、理想に近いパルス状信号を生成する送受信用のチップセットを開発しました(図2a, b)。主な技術は以下の2つです。
超高速のインジウムリン高電子移動度トランジスタで構成する論理積回路(注5)を使うことで、時間幅13.5ピコ秒以下という、トランジスタ回路としては世界で最も細いインパルスの生成に成功しました。
対象となる周波数帯域の外側の周波数もゆるやかに減衰させながら通過させる特性を持たせた帯域通過フィルターを世界で初めて開発しました。前項のインパルスをこの帯域通過フィルターに通すことにより、漏れ信号が少なく、準ミリ波帯では限界に近い320ピコ秒のパルス状信号の生成に成功しました(図1)。
|
今回開発したチップセットを用いてレーダー試作機を作製し、5 cmから10 mの範囲にある物体を、従来の準ミリ波帯レーダーの性能を約2倍上回る5 cmの高分解能で検出できることを実証しました。今回開発した技術とチップセットにより、高精度での車庫入れや幅寄せを可能にする車載センサーや、侵入者の位置や行動の軌跡を高精度に検知するセキュリティセンサーを実現することが可能になります。
今回開発した技術は、2010年を目処に製品化を目指します。
以上
電話: (直通) 046-250-8244
E-mail: ups_chipset@ml.labs.fujitsu.com
電話:(直通)046-847-5432
E-mail: mictg@wireless.nict.go.jp
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。