FUJITSU
Worldwide|サイトマップ
THE POSSIBIliTIES ARE INFINITE
Japan
元のページへ戻る English
[ PRESS RELEASE ](技術)
2005-0183
2005年12月5日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

世界初!カーボンナノチューブを半導体チップの放熱基板に活用

富士通株式会社および株式会社富士通研究所(注1)は、世界で初めて、カーボンナノチューブ(注2)を用いた半導体チップの放熱基板の開発に成功しました。カーボンナノチューブを高周波高出力増幅器の放熱基板に用いることで、放熱性と高い増幅率を同時に実現することが可能になります。

今回開発した技術により、カーボンナノチューブの利点である高い熱伝導率を利用した応用は実用化に向けて大きく前進したといえます。次世代以降の無線通信システムに向けた高性能な高周波高出力増幅器の実現が可能になります。

本技術の詳細は、12月5日から米国ワシントンDCで開催される国際会議IEDM (International Electron Devices Meeting)で発表する予定です。なお、本研究は、NEDO (独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)より財団法人ファインセラミックセンターに委託された、経済産業省ナノカーボン応用製品創製プロジェクト(NCTプロジェク ト)の一環として実施しました。

【開発の背景】

世の中の情報量は増加の一途であり、たとえば無線通信の情報を送信する携帯電話基地局の増幅器も高周波化、高出力化が求められています。高出力増幅器は、出力源である高出力トランジスタの発熱量も大きくなるため、放熱性が非常に重要になります。従来は、高出力トランジスタチップをパッケージに直接接合し、チップを通して熱を逃がす、いわゆるフェイスアップ構造(図1)を用いることで放熱性を確保していました。

フェイスアップ構造
図1 フェイスアップ構造

【課題】

フェイスアップ構造の増幅器は高周波化が進むと、その増幅率が低下するという問題があります。その原因は、トランジスタチップの電極とパッケージの電極を電気接続する金属ワイヤーのインダクタンス(注3)にあります。

解決策として、トランジスタチップを裏返し、チップ電極とパッケージ電極を金などの短い金属バンプ(注4)で接続するフリップチップ構造(図2)があります。しかしながら高出力増幅器の場合、高出力トランジスタで発生した大量の熱を逃がすには、従来の金属バンプでは放熱性の点で不十分でした。このように、従来は高周波において高い増幅率と放熱性を兼ね備えた高出力増幅器を実現することは困難でした。

【開発した技術】

今回開発したのは、高周波、高出力増幅器において高い増幅率と放熱性を同時に実現する技術です。高い熱伝導率を持つカーボンナノチューブを、世界で初めてフリップチップ構造におけるバンプに適用しました(図2,3)。開発した技術の特長は、以下のとおりです。

  1. カーボンナノチューブ成長技術

    触媒にFe(鉄)膜を用いることで、基板に垂直に長さ15マイクロメートル(以下、µm)以上のカーボンナノチューブ成長を可能とする技術です。通常フリップチップ用のバンプには10µm以上の長さが要求されます。

  2. カーボンナノチューブバンプとフリップチップの接合技術

    カーボンナノチューブの微細加工性を用いて、高出力トランジスタの微細電極パターン(幅10µm以下)に合わせた微細カーボンナノチューブバンプを形成し、これを用いてバンプとフリップチップとの接合を可能にします。

カーボンナノチューブによるフリップチップ構造
図2 カーボンナノチューブによるフリップチップ構造

【効果】

今回開発した技術により、高出力トランジスタの微細電極へのカーボンナノチューブバンプ接合が可能になりました。チューブ1本あたり1,400 ワット毎メートル毎ケルビン(以下、W/mK)と金属に比べて非常に高い(注5) 熱伝導率を持つカーボンナノチューブを用いたバンプを発熱源直近の微細電極上に接合できるため、フリップチップの高増幅率を持ちながら、フェイスアップ構造と同等の放熱性を確保できました。従来のフェイスアップ構造に比べて、インダクタンスは半分以下に低減することができ、5ギガヘルツ以上の高周波での増幅率を2デシベル以上に向上させることができました。

カーボンナノチューブ(CNT)バンプ
図3 カーボンナノチューブ(CNT)バンプ

【今後】

今後は、バンプ中のカーボンナノチューブの高密度化を行うことにより、さらなる放熱性の向上を実現し、カーボンナノチューブバンプを用いた高周波、高出力増幅器の実用化に向けた開発をすすめ、3年後位を目処に第3世代以降の携帯電話基地局への適用を目指します。

以上

注釈

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
(注2)カーボンナノチューブ:
鉛筆の芯の材料であるグラファイトのシートがチューブ状に丸まったもののこと。ナノチューブの太さはその名の通り1ナノメートル(nm)から10nm程度で、長さはその数千倍に達する。強靭な機械的強度、化学的な安定性、高い熱伝導率、低い抵抗値、高い許容電流密度といった優れた物理的特徴を有している。
(注3)インダクタンス:
金属配線などを流れる電流の変化が誘導起電力となって現れる性質のこと。
(注4)バンプ:
半導体チップの素子面あるいは受け側の基板に、蒸着法、めっき法、または印刷法などにより形成された突起電極。
(注5)金属に比べて非常に高い:
熱伝導率は、銅 400 W/mK、金 300 W/mK程度。

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。

元のページへ戻る ページの先頭へ

All Right Reserved, Copyright (C) FUJITSU