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[ PRESS RELEASE ](ソフト・サービス)
2005-0153
2005年10月3日
富士通株式会社

並列計算に対応した電磁波解析ソフトウェア「Poynting/MPI」販売開始

〜シミュレーションの大幅なスピードアップと適用分野拡大が可能に〜

当社は、並列計算に対応した電磁波解析ソフトウェア「Poynting(注1)/MPI(注2)(ポインティング エムピーアイ)」を本日より販売開始します。

今回、これまでのスタンドアロン版にラインナップを追加し、PCクラスタ(注3)上での並列計算を可能にしました。

これにより、通信機器、基板回路設計において、近年一般的になってきた電磁波シミュレーションを大幅に高速化するとともに、パソコン1台当たりのメモリ使用量を削減し、これまで計算規模が莫大なため適用が困難であった場合でも利用可能となり、お客様の設計作業のさらなる高品質化・効率向上に貢献します。

通信機器、基板回路設計に際しては、試作前に、それらの高周波特性や、回路を伝搬する電気信号の電磁波的な挙動を考慮する必要があります。当社は、その影響をパソコン上でFDTD法(注4)により解析するソフトウェア「Poynting」を、2002年より提供しております。しかしながら、解析対象によっては、計算時間が非常に長くかかったり、パソコンの搭載限界以上のメモリが要求されたりすることがあるため、設計へのフィードバックに時間がかかる、適用範囲が限定されるという課題がありました。

上記の課題を解決するため、今般、当社は、株式会社富士通研究所(代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市)と共同で並列計算に対応した電磁波解析ソフトウェア「Poynting/MPI」を開発し、販売開始します。

これにより、PCクラスタによる並列計算を行うことで、製品開発の上流工程での解析工数を従来の10分の1程度(注5)に短縮し、大幅なスピードアップを実現するとともに、パソコン1台当たりのメモリ使用量を削減することで、これまで電磁波解析ソフトウェアの適用が困難で、実験でしか確認せざるを得なかった現象についてもシミュレーションが可能になります。

具体的には、大規模なアレーアンテナ(注6)の解析、自動車と搭載アンテナの一体解析、プリント回路基板全体のノイズ解析(注7)などのシミュレーションが実現できます。また、フォトニック結晶(注8)の光伝搬特性、近接場光(注9)デバイスの光学特性解析などへの適用も可能です。これにより、設計作業のさらなる高品質化・効率向上に貢献できると考えます。

なお、本製品は、「マイクロウェーブ展2005」(会期:11月9日から11月11日 会場:パシフィコ横浜 展示ホールD)に出展いたします。

【販売価格、および出荷時期】

(対応CPU数) 販売価格(税別) 出荷時期
Poynting/MPI (2CPU) 350万円 10月3日
Poynting/MPI (4CPU) 500万円
Poynting/MPI (8CPU) 800万円
Poynting/MPI (16CPU) 1,200万円
Poynting/MPI (32CPU) 2,000万円

販売価格には、グラフィカル・ユーザー・インターフェース部は含まれません。また、対応CPUが32個を超える場合については、下記《お客様お問い合わせ先》までお問合せ下さい。

【販売目標】

2007年度末までに売上10億円 (当社の決算期は3月末日です。)

【動作環境】

ハードウェア:PRIMERGY(プライマジー)などのIAサーバ(PCサーバ)

CPU : Intel®Pentium®4 3GHz 以上

メモリ:256MB以上(推奨:1GB以上)

OS : Red Hat®Enterprise Linux ES 3.0 以上

MPI : MPICH(注10)1.2.6 以上

【参考】

メッシュ数(注11)約1,500万(所要メモリ約1GB)のモデルをPCクラスタ上で計算した例では、1台での計算速度に対し、4台で4.0倍、8台で7.4倍、16台で13.6倍、32台で21.0倍に速度が向上しています。

また、1台のパソコンでは計算不可能なメッシュ数約2億1,300万(所要メモリ約8GB)のプリント回路基板モデルのノイズ解析を、16台構成のPCクラスタを用いて数時間で計算できます。

【商標について】

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

(注1)Poynting:
電磁気学において電磁波エネルギーの流れを表す Poynting Vector (ポインティング ベクトル)に因んだ言葉。
(注2)MPI(Message Passing Interface):
計算機間でデータ交信しながら並列処理するプログラムを実現するためのインターフェース。
(注3)PCクラスタ:
PCを複数台つなげることで並列分散処理を行うシステム。
(注4)FDTD法(Finite-Difference Time-Domain Method):
電磁波の挙動をコンピュータで計算する手法の一種。
(注5)10分の1程度:
16台のPCクラスタを使用すれば計算時間を10分の1以下に短縮できると予想される。
(注6)アレーアンテナ:
複数個のアンテナを規則的に配列し、各々を制御することで一つのアンテナとして機能させるもの。
(注7)ノイズ解析:
デジタル信号の波形品質が、反射、遅延、干渉、電源グランドの電位変動などにより劣化する状態や、不要な電磁波が、漏洩、放射する状態をシミュレーションすること。
(注8)フォトニック結晶:
光の波長と同程度の周期的な屈折率分布をもった結晶。
(注9)近接場光:
ナノサイズの小さな物体に光を当てた時に発生する伝搬しない光であり、高分解能の顕微鏡や高密度の光記録媒体に応用される。
(注10)MPICH:
分散メモリ型の並列計算を行うためのMPI規格を実装したフリーのライブラリ。
(注11)メッシュ数:
計算のために領域を分割した際にできる微細な直方体の総数。

関連リンク

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