[ PRESS RELEASE ](技術) |
2005-0106
2005年7月6日
株式会社富士通研究所 |
携帯電話向け燃料電池の充電容量を3倍に
〜FOMA端末用充電器をドコモと共同試作〜
今回共同試作した燃料電池は、7月13日から15日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されるワイヤレスジャパン2005(ドコモブース)、および、7月14日から15日まで、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催する「富士通フォーラム2005」(環境コーナー)で展示します。
【開発の背景】
マイクロ燃料電池は、燃料カートリッジの交換などによって、長時間、携帯電話などのモバイル機器を駆動させることを目的に研究・開発が進められているものです。従来のリチウムイオン電池よりも理論性能で約10倍、実効性能で約3倍となる高い密度でエネルギーを蓄積できる上、バイオ資源から得られるメタノールを燃料として使用できるため、環境負荷の低減にも寄与すると期待されています。
マイクロ燃料電池の性能は、どれくらい小型化できるかと、同じ体積の燃料でどれだけ高いエネルギーを生み出せるかという容量とで決まります。マイクロ燃料電池の高容量化は、1つのカートリッジで充電できる回数が増えるなど、ユーザーの利便性の向上に貢献します。
【課題】
メタノールなどを燃料として用いるマイクロ燃料電池では、メタノールと空気中の酸素との反応でエネルギーが作られるため、使用するメタノール水溶液の濃度を上げることで高容量化が可能です。しかし、小型軽量化に適しているパッシブ型(注3)の燃料電池では、直接高い濃度の燃料を使用すると、電池の電極間で燃料の染み出し(クロスオーバー)が起こり、発電効率が低下してしまうという問題がありました。
【今回開発した技術】
今回開発したのは、99%以上の高濃度メタノール燃料が使用可能なパッシブ型マイクロ燃料電池に関する技術です。電極間の燃料の染み出し(クロスオーバー)が当社従来比2分の1の新たな材料を開発すると同時に、発電時に発生した水分によって燃料を実質的に希釈することで、高濃度の燃料を用いたときの発電効率の低下を抑制しました。また、この技術を用いて、実際に使用可能なFOMA端末用充電器を試作しました。
【効果】
今回開発した技術により、クレードル(注4)タイプのパッシブ型マイクロ燃料電池としては、世界で初めて、平均約1ワットの高い発電能力を99%以上の高濃度メタノール燃料を用いて実現しました。
また、試作したFOMA端末用充電器において、1つのカートリッジ(燃料容積18cc)で携帯電話内蔵のリチウムイオン電池3個分の充電が可能であることを実証しました。これにより、30%の濃度に希釈したメタノールを用いる燃料電池に比べ、1回のカートリッジ交換で使用時間を3倍に伸ばすことが可能になり、大幅にユーザーの利便性が向上します。また、廃棄やリサイクルに回るカートリッジの量を削減できるため、環境負荷の軽減にも効果的です。
【今後】
今後、さらなる高性能材料の開発によって、より小型で長時間駆動可能なマイクロ燃料電池の開発を進めてまいります。
【試作品の概要】
表1 試作したFOMA端末用充電器の主な仕様
サイズ | 150 x 56 x 19 mm |
本体重量 | 190 g |
使用燃料 | メタノール、濃度99%以上 |
カートリッジ容積 | 18 cc、12 cc |
発電容量 | 最大 9 ワット時 |
携帯電話との接続方法 | クレードル型 |
充電仕様 | 最大 5.4 ボルト・700 ミリアンペアー |
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図1 試作したFOMA端末用充電器の写真(注5)
写真左は充電器本体と携帯電話、写真右は携帯電話を実際に充電している様子
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【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- (注1)株式会社富士通研究所:
- 社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
- (注2)マイクロ燃料電池:
- 容易に持ち運びのできる超小型の燃料電池。
- (注3)パッシブ型:
- ポンプやファンなどの機械的動作部品を用いない燃料電池の方式。
- (注4)クレードル:
- 携帯電話や携帯情報端末を充電したり、PCに接続してこれらと情報を交換したりするための置き台。クレードル(cradle)とは、元々ゆりかごという意味。
- (注5)試作したFOMA端末用充電器の写真:
- 写真で使用しているカートリッジの容積は12cc。
関連リンク
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