[ PRESS RELEASE ](技術) |
2005-0067
2005年5月18日
富士通株式会社 |
世界初!高速移動環境のデータ通信を実現する技術を開発
〜マルチパスを正確に推定〜
今回開発した技術は、超高速データ通信を必要とする携帯端末の受信品質を高め、より快適に利用することに貢献します。
本技術の詳細は5月16日から韓国ソウルで開催される国際通信会議(ICC2005:2005 IEEE International Conference on Communications)で発表しました。
なお、本技術は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)からの委託研究により研究開発を進めています。
【開発の背景】
2010年頃の実用化を目指し、100Mbps以上のデータ受信を高速移動環境で実現する移動通信システムの研究開発が進められています。移動しながら無線通信を行うとマルチパスが複雑に変化し受信品質を劣化させます。次々世代の高速移動通信ではマルチパス干渉がより厳しくなり、正確にマルチパスを推定し、受信性能を向上させることが必要です。
【課題】
マルチパスを正確に推定するためには、ノイズを効果的に除去することが必要です。さらに、高速移動中はマルチパスの状態が急激に変化するので、この通信環境の変化に瞬時に追従するための高速な演算処理が必要です。低速移動時においては非常に高い推定精度を達成する手法としてMMSE推定(注2)法がありますが、ノイズを除去するための演算量が大きく急激な変化への追従が必要となる高速移動受信システムへの採用は現実的ではありませんでした。
【開発した技術】
今回、通信環境の変化に瞬時に対応できる高精度なマルチパス推定技術を実現しました。従来のノイズ除去法の精度が低い原因として、ノイズ除去に適用するモデルの不適切さに注目しました。実用的モデルを適用することでノイズを効果的に除去し、精度を向上させることで瞬時に高速な演算処理が可能となりました。
【効果】
今回開発した技術により、時速300kmの新幹線の高速移動時においても品質を落とすことなく100Mbpsの高速データ通信を行うことが計算機シミュレーションによって確認できました。ノイズを除去しない場合に対して10倍以上の推定精度が得られ、これは低速移動時におけるMMSE推定法と同等の性能です。さらにMMSE推定法に対して、演算量が2万分の1程度となる世界初の技術です。
【今後】
今年度上半期に、次々世代向けの携帯端末試作機による室内実験を行うことで実環境における有効性を確認し、2年から3年以内に実用化レベルの技術確立を目指します。
以上
注釈
- (注1)マルチパス:
- 基地局から送信した電波がビルなどの反射により複数の経路(パス)で携帯端末に届く状態
のこと。
- (注2)MMSE推定:
- Minimum Mean Squared Error(最小自乗誤差)推定。マルチパスの推定誤差が最小となるように動作するアルゴリズム。
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
![](https://www.fujitsu.com/img/space.gif)
|