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[ PRESS RELEASE ](技術)
2005-0049
2005年4月13日
富士通株式会社
アユミ工業株式会社

世界初! 300ミリウェーハ対応のフラックスレスリフロー装置を開発

〜富士通三重工場、300ミリウェーハ対応の最先端ロジックLSI量産設備として稼動〜

富士通株式会社(以下、富士通)とアユミ工業株式会社(注1)(以下、アユミ工業)は、フラックス(注2)を用いずに、はんだバンプ電極(注3)(以下、はんだバンプ)の表面酸化膜除去とバンプ形状の整形を可能とする、300ミリウェーハ対応のフラックスレスリフロー装置(注4)を開発し、富士通三重工場の300ミリウェーハ対応最先端ロジックLSI量産設備としての良好な稼動を確認しました。本装置により、フラックスの洗浄工程が不要となるため、従来のリフロー装置に比べて工程が短縮するとともに、フラックス洗浄工程に起因する二酸化炭素の発生が抑制され、環境負荷を約30%削減することが可能です。アユミ工業では、本装置の製造・販売を予定しています。

【開発の背景】

リフロー装置とは、フリップチップLSI(注5)の製造工程において、はんだバンプ電極の表面酸化膜を除去し、はんだバンプの形状を整えるための装置です。従来の装置では、この工程でフラックスを用いているため、リフロー後に有機溶剤を用いたフラックス洗浄工程が必要でした。

富士通は、アユミ工業の協力のもと、2001年に、蟻酸を利用することでフラックスが不要となるリフロー技術を開発し、以来、富士通の6インチ(150ミリ)および8インチ(200ミリ)ウェーハ向け生産技術として利用しています。フラックスの洗浄工程が不要なため、洗浄工程に起因する二酸化炭素の発生を抑えることができ、今年2月に発行された京都議定書の温室効果ガス排出量削減の目標達成のためにも有効な技術です。同時に、アユミ工業は、この技術を利用した6インチおよび8インチウェーハ向け装置の製造・販売をおこなってきました。

今回開発した300ミリウェーハ対応のフラックスレスリフロー装置は、フラックスリフロー技術を300ミリウェーハ対応へと改良することで、富士通三重工場の300ミリウェーハ新棟を含め、広く本技術を普及させ、環境負荷の低減を促進するためのものです。

【開発した装置の特長と効果】

今回開発した300ミリウェーハ対応のフラックスレスリフロー装置の特長と効果は、以下のとおりです。

  1. 環境負荷の低減

    ウェーハ上に配列されたはんだバンプ表面の酸化膜を蟻酸の還元力を利用して除去し、清浄な状態のバンプを形成します。リフロー後の有機溶剤を用いたフラックス洗浄工程が不要になるため、使用した有機溶剤の燃焼処理が不要となります。二酸化炭素の発生が抑制され、環境負荷を約 30%削減することが可能です。

  2. 6インチ・8インチ用装置と同等の処理品質

    富士通は、量産適用中の6インチおよび8インチウェーハ向けのフラックスレスフロー装置と同等の処理品質と処理能力が、300ミリウェーハでも維持されていることを確認しました。

  3. リフロー工程のコスト削減

    フラックスの塗布、洗浄などがなくなるため、リフロー工程が簡略化します。富士通が見積もったリフロー工程のコスト削減効果は約50%です。また、フラックスを使用しないため、従来は必要であった定期的なリフロー炉のクリーニング作業等も不要となります。

  4. はんだバンプの信頼性の向上

    本装置では、減圧下で加熱リフロー処理を行うため、はんだバンプ中へのガスの取込みがなく、はんだバンプ内に空洞部分(通称、ボイド)ができません。このことによりはんだバンプの信頼性が向上します。

  5. フリップチップLSIの信頼性の向上

    フラックスを使用しないため、バンプ表面やデバイス表面にフラックス残渣が発生しません。このことにより、フラックス残渣による腐食の心配が無くなり、信頼性の高いLSIの製造が可能です。

【今後】

富士通は、今回開発した300ミリウェーハ対応のフラックスレスリフロー装置を、三重工場で2005年4月より稼動の300ミリウェーハ対応の最先端ロジックLSIの量産設備として利用します。また、アユミ工業は、今回開発した装置をワールドワイドで販売する予定です。

両社は、今後とも、環境調和型技術の開発と利用を進めることで、地球環境への負荷を緩和に貢献していきます。


図1 リフロー工程の比較(従来工程、フラックスレス工程)

以上

注釈

(注1)アユミ工業株式会社:
社長 阿部泰三、本社 兵庫県姫路市。
(注2)フラックス:
はんだ整形工程などで用いられる物質。フラックスには、対象接合面の酸化物を除く、はんだ自体の表面張力を下げて合金化を促進する、加熱による対象物の酸化を防止する、という3つの機能がある。
(注3)はんだパンプ電極:
表面がはんだで覆われた、ICやLSIの突起状端子。
(注4)リフロー装置:
フリップチップLSI(注5)の製造工程において、はんだバンプ電極の表面酸化膜を除去し、はんだバンプの形状を整えるための装置。従来の装置では、この工程でフラックスを用いているため、リフロー後に有機溶剤を用いたフラックス洗浄工程が必要だった。
(注5)フリップチップLSI:
ワイヤーボンディングを使用せず、LSIの回路面を下にしてパッケージ表面と直接接続するタイプのLSI。実装面積を小さくできる。LSIとパッケージを直接接続するため、信号の伝播遅延が短くなるなど、高速信号伝送や高周波伝送にも向いている。

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