[ PRESS RELEASE ] |
2005年3月23日
独立行政法人 理化学研究所
富士通株式会社 |
理化学研究所と富士通
『日本産業技術大賞・文部科学大臣賞』を共同受賞
〜「理研スーパー・コンバインド・クラスタ」の先進的技術が高評価〜
1. 概要
「理研スーパー・コンバインド・クラスタ」(2004年3月より稼動)は、世界で初めての、異なる3種類の計算機を統合した複合計算機システムです。中心には大規模なLinuxクラスタシステムを置き、単一プロセスで大量のメモリを必要とする計算のための共有メモリ型ベクトル計算機と、分子動力学計算を高速化する専用ボード(MD-GRAPE2)を搭載したLinuxクラスタシステムが高速ネットワークで接続されています。
理研は、利用者ニーズを分析し、(1)ゲノム検索や実験データ解析等の高まりつつある新たなニーズに適しているLinuxクラスタシステムと、(2)従来の利用者の持つプログラムや分割できない大規模プログラムに適している共有メモリ型ベクトル計算機と、(3)分子動力学計算専用であるが低消費電力で高性能なMD-GRAPE2を複合させることとし、富士通と共同で本システムを開発しました。
本システムは、全国に広がる理研の研究拠点からはもちろん、インターネット経由での利用も可能であり、利用者は複合した上記(1)〜(3)の計算機の存在を意識せずとも、最適に計算の実行が行われるシステムとなっています。
本システムの中心であるLinuxクラスタシステムは、日本初の大規模なLinuxクラスタシステム(2,048CPU、総演算性能12.5TFLOPS(注3))です。超高速インターコネクトInfiniBand(TM)(注4)を使用したシステムの開発で最も先行していた富士通は、株式会社富士通研究所と共同でLinuxクラスタシステム用ソフトウェアSCore(注5)に対応したInfiniBand通信アダプタを開発、システム性能を最大限に引き出し、導入直後の実効性能の測定で8.728TFLOPSを達成しました。この結果、2004年6月の世界のスーパーコンピュータ性能ランキングTop500(注6)では、地球シミュレータに次いで国内第2位、世界で第7位にランクされました(Linuxクラスタシステムとしては、国内第1位、世界第3位)。
2. 今後の展開
理研は、本システムを活用し、遺伝子やタンパク質の構造・機能解析を進め、薬剤の開発等を目指すとともに、これまで行われていた流体計算や核物理、量子化学などのコンピュータシミュレーションや計算科学の分野でも、精度等が飛躍的に改善することを期待しています。また、本システムの運用を通じて複合大規模並列システムでの運用制御やソフトウェア開発の知見を蓄積し、次世代スーパーコンピュータシステムの検討を開始する予定です。
富士通は、本システムの技術を発展させ、Linuxクラスタシステムの普及や、利用者の研究開発を、より快適かつ最適な環境で支える次世代センターシステムの実現に向けチャレンジを続けていきます。また、現在、富士通は、2010年に実効性能でTFLOPSの1,000倍を意味するPFLOPS(ペタフロップス)の演算速度を達成するペタスケール・コンピューティングの実現に向け次世代の超高性能スーパーコンピュータシステムの開発に着手しています。今後も、理研をはじめ科学技術分野での先進的な取り組みに積極的に参画し、その成果を活かすことにより、既存技術の技術的な壁を乗り越え、超高性能スーパーコンピュータシステムの実現を目指します。
【商標について】
記載されている製品名の固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- (注1)Linuxクラスタシステム:
- 一般に普及しているパーソナルコンピュータ(PC)と同種のプロセッサを用いた計算機を高速なネットワークにより接続することで、全体として高性能なスーパーコピュータとして動作させることが出来る計算機システムであり、PCクラスタの主流です。「Linux」とは、ソースコードが公開されたフリーソフトウェアの基本ソフトウェア(オペレーティングシステム)の名称です。
- (注2)日本産業技術大賞:
- 1972年より、毎年1回、その年に実用化された革新的な大型産業設備・構造物や先端システム技術の開発、実用化などで顕著な成果をあげた企業・グループを表彰し、産業界や社会の発展に貢献した成果を讃えると共に、技術開発を奨励することを目的としています。本賞では、最優秀と認められた企業・グループに「内閣総理大臣賞」を、次席に「文部科学大臣賞」が授与されます。
- (注3)TFLOPS(テラフロップス):
- 1秒間に1兆回の浮動小数点演算ができる演算能力です。
- (注4)InfiniBand(インフィニバンド):
- 複数のコンピュータ間およびコンピュータと周辺装置との間を最大毎秒8ギガビットで高速接続するインターフェース規格です。富士通は、2001年10月に世界で初めてInfiniBand接続のPCクラスタシステムを構築し、動作デモンストレーションを行っており、SCoreクラスタシステムの特性に合わせたInfiniBandドライバの開発を行うことで、高性能PCクラスタシステムの実現を可能にしました。
- (注5)SCore(エスコア):
- 技術研究組合新情報処理開発機構により開発されたPCクラスタシステム用ソフトウェアです。大規模なクラスタシステムを効率よく利用するために、高性能通信ライブラリや、PCクラスタシステムを単一のスーパーコンピュータとして扱うための機能を備えることで効率よいシステム運用・管理を可能にします。
- (注6)Top500:
- スーパーコンピュータの性能を測る標準的なベンチマークプログラム「LINPACK」(大規模な連立一次方程式を解くプログラム)を用いてスーパーコンピュータの性能を計測し、半年に一度、独マンハイム大学や米テネシー大学等が共同で、上位500のランキングを公表しています。
関連リンク
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