[ PRESS RELEASE ](技術) |
2004-0228
2004年12月20日
株式会社富士通研究所 |
LSIのソフトエラー発生率を高精度に予測する技術を開発
今回開発した技術は、微細化が進むLSIの誤動作を減らすことに貢献するためのものです。なお本技術の詳細は、12月13日から米国サンフランシスコで開催された国際電子素子会議(IEDM:International Electron Devices Meeting)で発表しています。
【開発の背景】
ソフトエラーは、主に地上に届く二次宇宙線の中性子が、LSIチップを構成する材料の媒質中に発生させる電荷が原因(注4)で、LSI中のメモリや論理回路が一時的に誤動作する現象です。近年、LSIの高集積化および素子の微細化が進むにつれ、SRAMやロジック回路のソフトエラーが深刻な問題になりつつあります。このような状況のもと、LSIの開発段階にソフトエラー発生率を正確に予測し、ソフトエラーに対して高耐性のLSIの開発に結びつけることが必須となっています。
【課題】
微細化が進むLSIのソフトエラー発生率を正確に予測するには、高精度に予測できるシミュレーション技術が必要です。富士通研究所は、90年代半ばにソフトエラー解析シミュレーターを開発し、ソフトエラー評価に活用してきましたが、素子の微細化に伴い、より高精度なシミュレーション技術が必要になっていました。
【開発した技術】
次世代LSIのソフトエラー発生率を高精度に予測できる中性子ソフトエラー・シミュレーション技術を確立しました。大阪大学核物理センターとの共同研究により、新たに開発された中性子ホワイトビーム(注5)活用によりソフトエラー発生率を高精度に測定することに成功し、その測定データに基づき、シミュレーターを改良したことで実現しました。開発した技術の特長は、以下の通りです。
ソフトエラー発生率高精度測定
大阪大学が開発した中性子ホワイトビームを照射することによって、130ナノメートル(以下、nm)、90nm テクノロジーのSRAM及びラッチ回路(注
6)のソフトエラー発生率を加速評価しました。大気中の中性子のエネルギー分布を精度良く再現し、ソフトエラー率を高精度で測定することに成功しました。
高精度ソフトエラー・シミュレーション技術
発生した電荷が集められるドレイン電極周辺の範囲を正確に測定できるように改善することにより、計算精度を著しく向上しました。130nm、90nmテクノロジーのSRAMについて、これまでソフトエラー発生率を測定値の約50パーセントと過小評価していましたが、測定値に対して誤差を15パーセント以内と、実用に十分なレベルに予測精度を向上させることができました。
【効果】
今回確立した高精度ソフトエラー・シミュレーション技術により、微細化に伴い中性子の影響が大きくなるLSIのソフトエラー発生率を、LSIの開発段階から予測することが可能となりました。これにより、ソフトエラー発生の少ないLSIの開発、および開発期間の短縮に貢献します。
【今後】
今回開発した技術を次世代の65nm世代以降のLSIのソフトエラー予測に適用し、ソフトエラーに対して高耐性なLSIを開発していきます。また、45nm世代のLSI開発に適用し、早期開発を図っていきます。
 図1 SRAMの中性子ソフトエラー発生率
以上
注釈
- (注1)株式会社富士通研究所:
- 社長 村野和雄、本社 川崎市中原区。
- (注2)二次宇宙線:
- 宇宙線の種々の成分のうち、陽子やヘリウム原子核などの荷電粒子が地球の大気に入射した際に発生させる、中性子やミュー粒子等の二次的粒子。
- (注3)中性子:
- 物質を構成する原子は周囲を取巻く電子と中心にある原子核よりなる。原子核は、電荷を持つ複数個の陽子と電荷を持たない複数個の中性子より構成される。
- (注4)原因:
- 放射性不純物起因のα線によってもソフトエラーは発生する。材料対策による線量の低減など対策が比較的容易なため、中性子によるソフトエラーが重要課題になっている。
- (注5)中性子ホワイトビーム:
- 1千万電子ボルトから3億電子ボルトのエネルギーをもつ中性子からなる高エネルギー中性子ビーム。
- (注6)ラッチ回路:
- ロジック回路中で、情報を一時的に保持する目的で使用される。
関連リンク
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