[ PRESS RELEASE ](技術) |
2004-0207
2004年11月8日
国立大学法人広島大学情報メディア教育研究センター
独立行政法人理化学研究所情報基盤センター
株式会社富士通研究所
富士通株式会社 |
次世代キャンパスグリッドに関する共同研究を開始
〜教育インフラと研究インフラの融合による新たなサービスの創出に向けて〜
【共同研究の背景と目的】
従来から、キャンパス内の教育用基盤としてPCが積極的に利用されていますが、使用されているのは授業時間帯や放課後の短時間に限られ、夜間は膨大な量のCPU資源が使用されないまま眠っています。
本共同研究は、教育インフラと研究インフラの融合による新たなサービスの創出に向けて、下記を目的として実施するものです。
次世代キャンパスグリッドの提供
教育用基盤の膨大なCPU資源と研究用基盤として用いられている計算用の高性能サーバをグリッド技術により融合させることにより、これまでの環境では難しかった医療、工学、バイオ、理学研究などの大規模シミュレーション計算を、キャンパス内の幅広い利用者に向けて提供するサービスの創出を目指すものです。
次世代キャンパスグリッドを用いた地域社会への貢献
従来、キャンパス内に限定されていた計算機利用サービスを広く地域社会へ提供する新たなキャンパスのあり方を目指し、その実現へ向けた技術課題の明確化と解決策の提言を実証的に行うものです。
【共同研究における取り組み】
本共同研究では、下記の3つの取り組みを相互に連携させて実施します。
次世代キャンパスグリッドの構築・運用に関する研究
次世代キャンパス内の従来その利用が授業時間帯や放課後の短時間に限られていた教育用PC群(500台)を、教育に用いていない時間にはOS自体も入れ替え、キャンパス内の共通的なグリッド計算リソースとして運用することで、キャンパス内で学生から研究者まで幅広く利用してもらうために必要な運用方法・サービス提供方法についての研究をIMCが中心となって実証的に実施します。キャンパスグリッド全体の性能向上を目指して、教育用PC群500台のOSを自動的に切り替えて運用する今回の取り組みは、世界でも類を見ないものです。
次世代キャンパスグリッドの地域社会への提供方法に関する研究
特別な知識を必要とせずに誰でもIT資源が利用できるグリッドポータルを構築することで、地域の民間企業などに対して、大規模なシミュレーション計算やコンサルティングなどのサービスを提供するための研究を理研が中心となって実施します。対象となる計算リソースはIMCによって提供します。キャンパスグリッドの地域社会への提供は、グリッドの新たな利用に向けた画期的な取り組みです。
自律的な環境構築など新たなグリッドモデルとそのアルゴリズムの研究
将来のより高度なサービス実現に向け、地理的に分散かつ異なる機種から構成される多数の教育用PC群と研究用サーバ群が自律的に連携して次世代キャンパスグリッドとして機能するシステムのモデル・アルゴリズム・運用方法の研究を、IMC、富士通研究所、富士通が中心となり実施します。
【共同研究スケジュール】
本共同研究に基づき、IMCでは次世代キャンパスグリッドの構築を進め、キャンパス内での運用を2005年4月より開始します。本共同研究は2005年4月以降も継続し、IMCのキャンパスグリッド環境を利用しながら、より利用しやすいキャンパスグリッド運用に関わる研究、地域社会へのキャンパスグリッドの提供、集中管理によらない負荷分散型のP2Pグリッド(注4)の研究など、次世代キャンパスグリッドに関する先進的な研究開発を展開していく予定です。
【キャンパスグリッド利用例】
次世代キャンパスグリッドの提供に関して
IMCとして想定しているひとつの利用例は、医療画像の利用に向けた大量の計算処理です。現在、CTの検査画像など医療画像データは増加の一途であり、さらに今後、検査装置の高精度化に伴いデータ量は一挙に膨大になります。この大量の画像データから類似症例画像を見つけ、実際の医療の教育研究の現場で活用するためには、画像の特徴から抽出するインデックスの作成(インデキシング)処理とインデックスを用いた高速画像検索処理が必要となります。
IMCは、現在、教育や研究用に提供するために、CTの検査画像を時系列アーカイブとして構築する医用画像ディジタルアーカイブの研究をVizGridプロジェクト(注5)の一環として実施しています。すでにデスクトップPC64台を用いたグリッドシステムを構築しており、来年度には、今回の共同研究の成果を活かしながら、デスクトップPC500台以上を用いたキャンパスグリッドによる分散処理環境を構築する予定です。
IMCでは、上記を含め、キャンパスグリッドによって、学内のすべての研究者が研究室の計算サーバの不足をこのグリッドで補うことができる環境の構築、HPCサーバやスパコンの代わりに使える環境の構築を考えています。
地域産業への貢献に関して
理研では、地域の製造業を中心に、製品設計で活用されているCAE(Computer Aided Engineering)(注6)の計算プラットフォームとしてキャンパスグリッドを活用することを計画しています。キャンパスグリッドを利用する企業は、自社だけではまかないきれない計算を短時間で実施したり、短期的な計算需要の増大に迅速に対応したりすることが可能となります。グリッドコンピューティングに対応するCAEソフトウェアとしては、理研が開発した熱流体解析ソフト等を想定しています。
以上
注釈
- (注1)国立大学法人広島大学情報メディア教育研究センター:
- センター長 石井光雄、 所在地 広島県東広島市。
- (注2)独立行政法人理化学研究所情報基盤センター:
- センター長 姫野龍太郎、所在地 埼玉県和光市。
- (注3)株式会社富士通研究所:
- 社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市中原区。
- (注4)P2Pグリッド:
- サーバを中心としたサーバ・クライアント型のシステムとしてグリッド全体を構築し運用するのではなく、個々のコンピュータ同士が直接的に情報のやり取りすることによってグリッドを構築し運用しようという考え方。P2Pは、Peer to Peerを簡略化していったもの。
- (注5)VizGridプロジェクト:
- 文部科学省ITプログラムのひとつとして、スーパーコンピュータネットワーク上でのリアル実験環境の実現を目指し、グリッド技術を用いた高臨場感を伴う高度コラボレーション支援環境の構築に関する研究を行なっている。http://www.vizgrid.org/index.htm
- (注6)CAE(Computer Aided Engineering):
- コンピュータを用いた製品の設計開発支援のこと。製品の強度や熱分布など、コンピュータを用いて製品の機能や性能をシミュレーションすることで、開発期間の短縮やコストの低減を図るためのもの。
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
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