[ PRESS RELEASE ] |
2004年10月1日
東京大学医学部附属病院 富士通株式会社 |
東大病院と富士通が「次世代医療安全システム」の共同研究を開始
〜患者様にとって安心・安全な、新しい医療環境の構築に向けて〜
【背景および現状の課題】
近年、医療機関のIT化が進み、各種検査指示、注射や点滴の指示、処方せん発行などをコンピュータで行うオーダリングシステムが普及してきました。また、医療機関相互および患者様との診療情報の共有化を推進することにより、医療の質の一層の向上を図るため、電子カルテシステムの開発や導入が始まっています。さらに政府も「e-Japan戦略II」の先導的7分野のトップに医療を挙げ、医療機関のIT化を支援しています。
一方、医療はますます複雑化、高度化するとともに、多職種チーム化が進んでおり、情報伝達の時間差や行き違いなどによって偶発的ミスが発生する要因が増えています。これらを解決する目的で導入した情報システムによって、医療スタッフはその操作に多くの時間を割き、かえって神経をすり減らすような状況も散見されます。
【共同研究の概要】
一人ひとりの患者様の身になって、電子化された診療データをもとに24時間365日休まず判断し、迅速に必要なアドバイスを行う「医学的な判断が可能な付添いさん」に相当する情報システムの開発を目指します。このシステムは同時に、医療スタッフの知的で綿密な作業をリアルタイムで支援する「医学知識をもった有能な診療秘書さん」機能も実現します。
「医学的な判断が可能な付添いさん」機能としては、医師や患者様に対し、投薬・注射の内容や間隔が適正か、検査が過剰でないか、実施しようとしている点滴が間違っていないかなどをアドバイスします。
「医学知識をもった有能な診療秘書さん」機能としては、患者様に急変はないか、最新の検査結果が到着しているか、検査結果が出たら異常値がないか、その結果により他の指示を変更する必要がないかなどもアドバイスします。
本研究では、このような次世代の診療情報システムを、これからのオーダリングシステムや電子カルテシステムに必須の基盤システムと捉え、既存システムと接続したり、あらかじめ組み込むことを想定して開発します。
【本産学連携について】
今回、東大病院の医学的知識や専門技術と、富士通の最先端IT技術や業務アプリケーション技術を融合し、次世代診療情報システムの研究を行います。
本研究の大学側担当である大江和彦教授チームは、その豊富な経験と高度な知識により、診療データ交換規格の標準であるHL7(注4)の日本初の採用、ウインドウシステムによるオーダリングシステムの実現、病名コードの標準化、標準的電子カルテモデリングの推進(注5)など、先進システムの研究開発において主導的役割を果たしてきました。
また、富士通は、約2900億円といわれる医療情報システム市場におけるトップベンダーであり、特に大学病院を中心とした300床以上の中核病院では約40%のシェアを占めています。これらの多くの病院でのオーダリングシステムや電子カルテシステムの導入実績を持つと共に、医療現場を熟知するIT技術者を数多く擁し、業界のリーダーとしての役割を担っています。
両者は、強力な産学連携により、今回の次世代診療情報システムの共同開発に取り組み、高い成果を挙げることで、患者様にとって安全で、医療スタッフに優しい、新しい医療情報システムの開発を目指してまいります。
【研究期間】
2004年10月1日より2007年9月30日まで(3年間)
【市場関連データ(ご参考)】
以上
注釈
- (注1)東大病院:
- 東京大学医学部附属病院、院長 永井良三、所在地 東京都文京区本郷7-3-1
- (注2)大江和彦:
- 東京大学医学部附属病院 副院長、企画情報運営部長、大学院医学系研究科 医療情報経済学分野教授
- (注3)富士通:
- 富士通株式会社、代表取締役社長 黒川博昭、本社所在地 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
- (注4)HL7:
- 1987年に米国で開発された医療情報交換のための標準規格。現在は事実上の国際標準になりつつある。日本では1994年に東京大学医学部附属病院の病院情報システムで採用されたのが最初。
- (注5)標準的電子カルテモデリング:
- 電子カルテシステムの開発や導入に伴うノウハウをモデル化して標準化するプロジェクト。
関連リンク
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