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SPring-8放射光を用いたナノ材料の粒子・空孔サイズの
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今回開発したのは、次世代の半導体デバイス・磁性デバイスの性能向上を目的とした材料評価技術です。本技術の詳細は、9月27日から東京で開催されている国際会議Advanced Metallization Conference(ADMETA2004)において発表します。
現在、次世代のデバイスの性能向上を目的として、ナノサイズの粒子や空孔を持った多くの新材料が開発され、そのサイズ分布測定技術の重要性が高まっています。たとえば、磁気記録媒体用の鉄プラチナ膜や燃料電池用プラチナ触媒では数ナノメートルの金属粒が使われていますが、その記録密度や触媒活性は、ナノ粒子のサイズや均一性に大きく影響されます。また、先端LSIの多層配線に用いられる低誘電率ポーラス絶縁膜は、膜中に空孔を導入することで低誘電率化を図っていますが、膜の機械的強度などに空孔のサイズ分布が直接影響を与えています。
従来、ナノサイズの粒子や空孔のサイズ測定には、電子顕微鏡による直接測定が行われましたが、平均サイズやばらつきを評価するには手間が掛かりました。また、空孔サイズについては、ガス吸着による測定も行われましたが、閉じた空孔のサイズ測定はできませんでした。
X線評価技術においては、古くから材料中の粒子や空孔により散乱された弱いX線(小角散乱X線)により、そのサイズを評価する方法がありました。しかし、この方法は、X線が透過できる試料についての測定法であり、デバイスで多く用いられる基板上に形成された薄膜の測定には不向きでした。これは、粒子・空孔からの散乱X線の強度が非常に弱いことに加え、試料表面や基板からのバックグラウンドが大きいためで、実際の測定では厚膜試料を用意する必要がありました。しかし、薄膜の構造は、膜厚に依存して変わることも多く、実際のデバイスに利用する厚さでの直接測定方法が求められていました。
今回開発した技術は、産業用専用ビームライン建設利用共同体(注3)が建設したSPring-8ビームライン16XU(注4)のきわめて高輝度な放射光を利用したもので、ナノサイズの粒子や空孔により散乱された小角散乱X線を高い精度で測定し、粒子や空孔のサイズ分布を解析するものです。
今回、X線を試料に極めて浅く入射させると同時に、X線の全反射現象を利用することで、測定上の有効膜厚を10倍以上に増やしました。さらにX線反射面内に生じる強いバックグラウンド散乱を低減させるために、検出器をX線反射面から傾けて測定できる「オフアクシス微小角入射X線散乱法」を新たに開発しました。
また、測定したX線データの解析用に、粒子・空孔のサイズが揃っている場合のモデルと連続的に変わる場合のモデルとを複合させたソフトウエアを新たに開発しました。
今回開発した技術を、高密度磁気記録媒体に使われるプラチナ合金薄膜に対して用いたところ、厚さ16ナノメートルの超薄膜における粒子のサイズ分布の評価が可能となりました。16ナノメートルはプラチナ合金粒子4個分の厚さに相当します。
また、低誘電率膜を対象とした測定では、従来必要とされた膜厚の10分の1である100ナノメートルの薄膜でも空孔分布が測定でき、次世代デバイスに用いる200ナノメートルの膜の直接評価が可能となりました。
今回開発した技術は、次世代磁性デバイスや次世代半導体など、最先端デバイスの開発に向けた材料評価技術として利用していく予定です。
以上
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