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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0148
2004年8月6日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

世界初、樹脂基板上に高誘電率のセラミック膜を形成・多層化する技術を開発

富士通株式会社と株式会社富士通研究所(注1)は、独立行政法人 産業技術総合研究所(注2)と共同で、世界で初めて、樹脂基板上に誘電率(注3)400のセラミック膜をほぼ室温で形成・多層化する技術を開発しました。今回開発した技術により、FR4(注4)などのプリント基板中にコンデンサーなどの素子を埋め込むことが可能となり、実装基板の小型化・低コスト化が可能となります。

本技術は、樹脂材料とセラミック材料とを集積化させることで、ユビキタス時代の機器のさらなる小型化を実現するための基礎研究として開発したものです。

本技術の詳細は、8月9日からフランス・グルノーブルで開催される国際会議「International Conference on Crystal Growth (ICCG) 」で発表します。なお、今回の技術開発は、経済産業省ナノテクノロジープログラム「ナノレベル電子セラミックス材料低温成形・集積化技術プロジェクト」の下で、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託により実施したものです。

【開発の背景】

ユビキタスネットワーク社会を実現していくためには、機器の多機能化・小型化・高周波化・低価格化が鍵となります。これらの要求を満たす技術として、現在、プリント基板への高密度実装技術がクローズアップされています。例えば、携帯端末機器にはGPSや無線LANなど複数の機能が搭載され始め、この結果として回路基板は大型化しています。小型化のためには、基板表面に搭載されているセラミックチップコンデンサーなどの様々な高周波部品の数を減らし集積化することが必要です。

世の中に広く普及している低価格エポキシ系の樹脂材料を主体としたプリント基板に、高い誘電率を持つセラミックコンデンサーを埋め込むことができれば、機器の多機能化・小型化・高周波化・低価格化が可能となります。

【課題】

しかし、エポキシ系の樹脂基板の耐熱温度は300℃程度であり、形成に高い温度が必要なセラミックスを用いたコンデンサーを埋め込むことは基本的に不可能でした。一方、樹脂中にセラミックスを分散させた複合材料を用いる方法もありましたが、この場合、誘電率は数10程度と低く、高周波に対応する要求性能を満たせませんでした。

基板自体をセラミックスで作製する技術は、基板形成に必要な温度が1000℃程度と高いために、工程が複雑でコストを下げることが困難でした。また 工程中に体積が10%以上収縮するため寸法の精度を上げられず、微細化の要求に応えられないという問題点がありました。

【開発した技術】

今回開発したのは、樹脂基板上に高誘電率のセラミック膜を低温で形成する技術と、コンデンサー構造を多層化する技術です。開発した技術の特長は以下の通りです。

  1. 樹脂基板上へのセラミック膜の低温形成技術

    今回開発した技術は、セラミック粉体をガスの気流で巻き上げた後、基板に向けて高速に噴射し、基板に衝突する衝撃によって膜を形成するエアロゾルデポジション法を利用し、樹脂基板上にセラミック膜をほぼ室温で形成する技術です。化学的に表面の状態が不安定なセラミック粒子を用いることで、セラミックスが密着しにくい樹脂基板の上にほぼ室温でセラミック膜を形成することに成功しました。なお、本技術は、独立行政法人 産業技術総合研究所先進製造プロセス研究部門の明渡純(あけど じゅん)グループ長のグループが開発したエアロゾルデポジション法をベースに、同グループと共同で開発したものです。

  2. セラミック膜の高誘電率化技術・多層化技術

    セラミック粒子に結晶性のよいものを混在させることと、セラミック粒子の流速をコントロールすることで、形成するセラミックスの微構造を制御し、高誘電率化を実現しました。また、形成したセラミック膜の内部応力(注5)を緩和させ、さらに、セラミック膜に密着しやすい金属組成の電極を選択することで、樹脂基板上に多層コンデンサーを形成することに成功しました。

【効果】

今回開発した技術を用いることで、FR4プリント基板上にセラミック膜を室温で形成することに世界で初めて成功しました(図1図2)。形成したセラミック膜の誘電率の最高値は400で、この値はセラミックスと樹脂を複合させた材料の誘電率の約10倍、600℃の高温で熱処理を施したスパッタ法によるセラミック膜と同レベルとなります。また、FR4プリント基板上に3層構造からなるコンデンサーの形成にも成功しました。形成したコンデンサーの容量密度(注6)は1平方センチメートルあたり300ナノファラッドと、実用レベルとして非常に高い値を達成しています。

今回開発した技術は、以下のような製品に応用が可能であり、ユビキタス時代の様々な製品の多機能化・小型化・高周波化・低価格化に貢献するものです。

  • コンデンサーを内蔵したプリント基板およびパッケージ
  • 様々なセラミック製素子(フィルター、アンテナなど)を集積化したモジュール
  • 高周波電子部品

【今後】

より高い誘電率を有するセラミック誘電体の低温形成にむけて取り組むとともに、様々な素子応用に適した特性を持つセラミック膜の開発を進めていきます。また、プリント基板中へのコンデンサー形成の実用化を目指し、開発を進めていきます。

図1
図1 樹脂基板(FR4)上に形成した多層コンデンサーの外観

図2
図2 樹脂基板(FR4)上に形成した多層コンデンサーの断面写真

以上

注釈

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 村野和雄、本社 川崎市中原区。
(注2)独立行政法人 産業技術総合研究所:
理事長 吉川弘之、東京都千代田区。
(注3)誘電率:
電気の蓄積しやすさを表す指標であり、値が高いほどたくさんの電気を蓄積することができるため、優れたコンデンサーの材料となる。
(注4)FR4:
Flame Retardant Type 4の略。ガラス繊維とエポキシ樹脂の複合材料からなる難燃性のプリント基板材料の名称。最も幅広い分野で使用されているプリント基板。
(注5)内部応力:
機械的・熱的な原因で材料の内部に蓄積された歪による力。
(注6)容量密度:
コンデンサーなどにおいて単位面積当たりに蓄えられる電荷量を表す数値。この値が大きいほど、効率よく電気を蓄えることができる。

関連リンク

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