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世界初、通信波長帯において単一光子発生に成功:
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本技術の成果の第一報は、7月15日発行のJJAP(Japanese Journal of Applied Physics) Express Letterに掲載されます。さらに、本技術の内容の詳細は、7月26日から米国アリゾナ州で開催される半導体物理国際会議(International Conference on the Physics of Semiconductors;ICPS-27)で発表します。
なお、本技術の研究開発の一部は、文部科学省の研究開発委託事業である「ITプログラム〜世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト〜」の中の1 課題である「光・電子デバイス技術の開発プロジェクト」によるものです。また、独立行政法人 物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所(注5)の協力も得ています。
インターネット上での電子商取引の普及に伴い、より安全性の高い通信に対する需要が高まっています。その中でも量子暗号通信は、盗聴の可能性をゼロにできる極めて安全性の高い究極の暗号通信として、世界で研究開発が活発に進められています。
量子暗号通信の実現には、1パルスに含まれる光子を1個に制限できる単一光子発生器が必要となります。しかし、実用的な光ファイバー通信に用いられる波長帯(1.3-1.55マイクロメートル)では単一光子発生技術が存在せず、従来の量子暗号通信の実験では、単一光子の代わりに通常のレーザー光源を用いざるを得ませんでした。
しかし、量子暗号通信にレーザー光源を用いる方法では、1パルスに2個以上の光子が入る可能性があり、盗聴の可能性をゼロにはできません。2個以上の光子が発生する確率を低くするためには光の強度を極めて弱くする必要があり、このために、レーザー光源を利用した量子暗号では、長距離での通信速度が数100bpsと、著しく遅い速度でしか実現できないという大きな問題がありました。
今回開発したのは、1.3から1.55マイクロメートルの実用的な通信波長帯で、単一光子を発生・計測する技術です。開発した技術の特長は、以下の通りです。
光学シミュレーションを用い、量子ドットと呼ばれるナノメートルサイズの構造から効率よく光子を発生できる半導体素子を設計しました。また、極めて小さな構造である量子ドットにダメージを与えない半導体プロセス技術を新たに開発しました。これにより、従来実現されていなかった通信波長帯での単一光子の発生が可能になりました。なお、使用した量子ドットは、独立行政法人 物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所の佐久間主幹研究員のグループと富士通研究所が共同で作製したものを用いています。
開発した半導体素子から出る光を効率よく集光し、量子ドットから放出された光だけを通信用光ファイバーに送る単一光子送信システムを設計・開発しました。また、光ファイバーを通過した光を2手に分け、2手に分けた光の受信のタイミングを正確に測定できる単一光子受信システムを設計・開発しました。2手に分けた光が同時計測されないことを確認することで、発生した光が単一光子であることを証明することが可能です。
今回開発したシステムを用いて実験を行ったところ、2手に分けた光が同時計測されることは、ノイズによる誤差の範囲でゼロであることが確認でき、通信波長帯で量子ドットから単一光子が発生していることを検証できました(図3)。
なお、今回、単一光子を検証した光の波長は1.3マイクロメートルですが、すでに、より一般的な通信波長である1.55マイクロメートルでの量子ドットからの発光も観測できています。
通信波長帯で単一光子の送信が確認できたことにより、送信側の発光強度を弱めなくても量子暗号通信が可能となります。この特長により、100キロメートル程度の伝送距離において、従来のレーザー光源を利用した量子暗号通信に比べ約400倍となる100kbpsの通信が可能となり、高度な情報セキュリティが必要とされる官公庁、金融、医療等の現場において、量子暗号通信技術が実用化される可能性が飛躍的に高まりました。
今後、波長1.55マイクロメートルでの単一光子の伝送検証、単一光子の取り出し効率の向上などを図り、2007年頃の単一光子発生器実用化を目指した研究開発を推進していきます。また、量子ネットワーク実現に向け、量子中継技術や量子計算技術開発も進めていきます。
以上
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
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