[ PRESS RELEASE ](技術) |
2004-0063
2004年4月6日
株式会社富士通研究所 |
光触媒の新用途に道!光触媒機能を持つ樹脂形成が可能に
【開発の背景】
光触媒として広く利用されている酸化チタンは、クリーンエネルギーである紫外領域の光を用い、臭い成分や、汚れなどを酸化分解により、炭酸ガスと水に分解することができます(図1)。たとえば、ウイルスや細菌類をその死骸や毒素を含めて分解、無毒化します。現在は、この特性を生かして、抗菌タイルや防汚ガラス、防汚テントから、空気清浄フィルタなどの環境浄化製品にいたる幅広い分野で製品化されています。
【これまでの課題】
樹脂などの有機物を基材とする製品に酸化チタンを直接適用すると、光触媒作用により、基材自身が分解、劣化してしまいます。そのため、酸化チタンの表面の一部に保護膜を形成する方法が採用されていますが、これでは光触媒機能の効率が低下してしまいます。もし、基材を劣化させずに汚れだけを分解することができれば、樹脂に直接、光触媒材料を練り込むことが可能となり、各種情報機器の樹脂筐体、さらには衣類や衛生用品など、適用が大きく広がることになります。
【今回の開発】
東京大学先端科学技術センターと共同で開発した光触媒アパタイトを、樹脂へ直接練り込み、樹脂基材の劣化に関する実験を行った結果、樹脂基材の劣化がほとんどないことを確認しました。また、光触媒アパタイトの粉末を、射出成形(注4)により樹脂中に均一に分散させる技術を開発し、樹脂に効率的に光触媒機能を付加することに成功しました。
【効果】
一般的な樹脂であるポリプロピレンに、酸化チタンと光触媒アパタイトを練りこんで比較実験を行いました。酸化チタンでは樹脂が分解され、酸化チタンの粒子が表面に露出して白く変色するチョーキング現象が観察されたのに対し、光触媒アパタイト粉末を練り込んだ樹脂は、基材自身が光触媒作用により分解することはほとんどありませんでした。(図2)。
また、光触媒アパタイトを練りこんだポリプロピレンにおいても、有機物の分解効果が保たれていることを確認しました。(図3)
【今後】
今後、様々な樹脂について光触媒アパタイトの練り込みの効果を調べるとともに、情報機器の筐体への応用を目指した検討を進めていきます。また、光触媒機能を持った樹脂が幅広い分野で応用できるよう、ライセンス供与についても検討を予定しています。
以上
| 図1 光触媒材料の有機物分解のメカニズム [クリックすると拡大表示されます]
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| 図2 光触媒を練り込んだ樹脂の紫外線照射による劣化比較の実験結果 酸化チタンでは紫外線照射後に酸化チタン粒子が樹脂基材の表面に露出するチョーキング現象が見られるが、光触媒アパタイトでは、表面の変質がほとんどない。 [クリックすると拡大表示されます]
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| 図3 光触媒アパタイトを練り込んだ樹脂の光触媒機能 光触媒アパタイトを練り込んだ樹脂は、表面に着色した色素が、紫外線照射により分解、脱色していることが分かる。 [クリックすると拡大表示されます]
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| 図4(脚注) 光触媒アパタイトのアセトアルデヒドの分解能力の比較 [クリックすると拡大表示されます]
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用語説明
- (注1)株式会社富士通研究所:
- 社長 藤崎道雄、本社 川崎市
- (注2)光触媒:
- 紫外線などの光を吸収し、そのエネルギーで有機物を酸化、分解する材料。汚れや臭い、さらにはウイルスや細菌まで、分解することができる。
- (注3)光触媒アパタイト:
- 歯や骨の主成分であるカルシウムヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンの一部をチタンイオンと置き換えた結晶構造を持つ新しい光触媒で、東京大学先端科学技術研究センターと共同で開発した材料。蛋白質などの有機成分を吸着する能力に優れており、汚染物質の分解効率は、酸化チタンに比べて2倍以上高い特性を示す(図4)。
- (注4)射出成形:
- 樹脂成形法の1つであり、熱可塑性樹脂を加熱融解して、金型内の空洞に小さい孔から高圧で注入充填した後、固化させて成形品を取り出す方法。複雑形状品の製造に適する成形法。
関連リンク
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