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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0045
2004年3月9日
株式会社富士通研究所
富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社
富士通株式会社

世界初、5Gbps・4000ピン対応の高多層プリント基板を開発

株式会社富士通研究所(注1)、富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社(注2)、富士通株式会社は共同で、毎秒5ギガビット(5Gbps)の高速伝送、4000ピン(0.8ミリメートルピッチ)の高密度実装を実現する大型高多層プリント基板製造技術を開発しました。 今回開発した技術により、高多層プリント基板製造の歩留まり向上と開発・製造期間の短縮が可能となります。

今回開発した技術は、高速伝送・高密度実装が必要となる次世代高速サーバや通信基地局用装置などに向けたものです。

【開発の背景】

コンピュータや通信機器の高性能化、高機能化にともない、ネットワーク基幹装置用の大型で高多層のプリント基板(600ミリメートル×600ミリメートル、20層以上)では、毎秒5ギガビットレベルのデータ伝送速度が要求されています。一方、CMOSテクノロジの進展により、プリント基板に実装するパッケージのピン数は増加しており、現状の2500ピン(1ミリメートルピッチ)に対して、2005年には4000ピン(0.8ミリメートルピッチ)への対応が求められています。また、同時に、製造歩留まり向上と開発・製造期間の短縮も求められています。

【これまでの課題】

従来、大型高多層プリント基板の製造は、貼り合わせ工法(注3)でおこなわれ、これだけではできない高密度実装の配線形成には、ビルドアップ工法(注4)を組み合わせて用いていました。しかし、ビルドアップ工法は、小型パッケージの高密度実装には有効ながら、積層の繰り返しが必要で、貼り合わせ工法に比べて製造に要する日数が多くかかり、また、歩留まりが低いという問題がありました。

さらに、毎秒5ギガビットレベルの高速伝送回路では、ビア(注5)など、配線の立体構造部による損失で伝送する信号が減衰してしまうという問題が発生しますが、従来の回路シミュレーションではこの損失を正確に予測することができませんでした。このため、実際の伝送損失を正確に予測し、設計精度を向上させられる技術が必要となっていました。

【開発した技術】

今回開発したのは、高速伝送層と高密度実装層をそれぞれ独立した多層プリント基板として作製した後に貼り合せて一体化させる大型高多層プリント基板製造技術と、その設計シミュレーション技術です。毎秒5ギガビットの高速伝送と、0.8ミリメートルピッチの高密度実装を両立させ、さらに、ビアなどの立体構造部を含む配線での伝送損失を正確に見積もることができる回路シミュレーション技術によって、設計段階でその効果を解析することができるようになりました。開発した技術の特長は、以下のとおりです。

  1. 高速伝送と高密度実装を両立させる高多層プリント基板製造技術

    別々のプリント基板として製造した高速伝送層と高密度実装層を貼り合わせて一体化する高多層プリント基板製造技術を開発しました。大型高多層プリント基板の貼り合わせには高精度の位置合わせが必要となりますが、この製品分野の製造で実績を持つ富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社の技術によって可能となりました。

    高速伝送層と高密度実装層は別々のプリント基板として製造するため、要求性能やコストに応じた層間絶縁材料の組み合わせが使用でき、さらに、高速伝送での損失原因となる立体構造を大幅に減らすことができました。

  2. 配線立体構造シミュレーション技術

    ビアなどの立体構造部を含む配線の伝送損失を正確に予測するためのシミュレーション技術を開発しました。高精度な伝送損失測定技術で求めた材料の実効的な物性パラメータ(注6)を、3次元電磁界解析(注7)に適用することで、立体構造部での損失を毎秒5ギガビットの帯域で正確に予測することができます。

    また、開発した手法で得られた物性パラメータを用い、配線の立体構造部をL(インダクタ)、C(キャパシタ)、R(レジスタ)回路で置き換え、従来の回路シミュレーション上で扱うことを可能にしました。

【効果】

今回開発した技術は、多層プリント基板における回路設計から基板製造、検査までを含む総合技術です。今回開発した技術により、最大60センチメートルの大型基板で、毎秒5ギガビットの伝送速度と、4000ピン(0.8ミリメートルピッチ)のBGA(Ball Grid Array)実装(注8)とを両立させることが可能となりました。全ての工程を貼り合わせ工法でおこなうことにより、一体化前の品質検査による歩留まりの大幅な向上、製造プロセスの簡略化、一体化後の強度特性の向上が実現しました。

さらに、ビアなど、配線の立体構造部で発生する伝送損失を正確に予測することができるようになり、設計段階で回路の伝送特性を解析することで、毎秒5ギガビットの帯域における高速伝送の回路設計精度が向上しました。これによって、開発段階で必要な伝送特性確認のための試作回数が低減し、開発期間を短縮させることができました。

【今後】

今後はさらに、毎秒10ギガビットを超える高速化に向けた大型高多層プリント基板に向けた技術開発を進めていきます。また、今回開発したプリント基板は鉛フリーはんだ対応でハロゲンフリー化も視野に入れたものですが、今後も引き続き、環境に配慮した製品開発をおこなっていきます。

今回開発した技術を活用した製品は、富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社により、2004年6月からサンプル出荷を開始し、同年12月より量産を開始する予定です。富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社では、関連製品により、2005年度には年間20億円の売上を見込んでいます。

開発した高多層プリント基板の断面図

以上

用語説明

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 藤崎道雄、本社 川崎市
(注2)富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社:
社長 竹田勇吉、本社 川崎市
(注3)貼り合わせ工法:
配線パターンをあらかじめ形成した素材を一括積層で一体化し、機械ドリルによる貫通ビア加工で層間の接続をとるプリント基板製造方法。
(注4)ビルドアップ工法:
コアとなるプリント基板上に絶縁層と配線層を交互に形成することで微細な配線を実現する方法。ノートPC、携帯電話、デジタルビデオカメラなどで採用され、製品の小型化、軽量化に貢献している。
(注5)ビア:
多層配線における層間接続部分をさす。
(注6)物性パラメータ:
誘電率、誘電損失など、シミュレーションをおこなうために必要な材料固有の物理的な値。
(注7)3次元電磁界解析:
立体的な構造内の電磁場強度分布を数値シミュレーションすることで、各種伝送特性を解析する手法。
(注8)BGA(Ball Grid Array)実装:
ICパッケージとプリント基板とを高密度で接続させる実装方法の一つ。ICパッケージに半球状の入出力端子を格子状に並べて、プリント基板に実装をおこなう。

関連リンク

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