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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0051
2004年3月24日
株式会社富士通研究所

40Gbpsの光信号を世界最高の感度で受信する受光素子を開発

株式会社富士通研究所(注1)は、世界で初めて、電流増倍層(注2)にインジウム燐(注3)を用いた毎秒40ギガビット(40 Gbps)で動作するアバランシェフォトダイオード(注4)を開発し、同速度で動作する光受信器としては世界最高の受光感度を実現しました。今回開発した技術は、40 Gbps光通信システムの設計自由度を広げ、その実用化に貢献するものです。

今回開発した技術は、次世代の高速大容量光通信向けに開発したものです。

なお、本技術の詳細は、2月23日からロサンゼルスで開催されたOptical Fiber Communication Conference 2004(OFC 2004)で発表しました。

【開発の背景】

ブロードバンド通信の普及に伴い、次世代の高速大容量光通信向けに40 Gbpsで動作するデバイスの開発が進められています。そこで用いられる受光素子には、40 Gbpsでの高速動作と同時に、信頼性の点から既存システムで実績のある材料による実現と、システム設計の自由度を広げるための高い受光感度とが求められています。

現在、10 Gbpsの通信においては高感度受光素子として、電流増倍層にインジウム燐を用いたアバランシェフォトダイオードが実用化されていますが、これまで同材料を用いて40 Gbpsで動作する素子は存在しませんでした。

【課題】

40 Gbpsで動作するアバランシェフォトダイオード実現のためには、素子の応答速度を決定する増倍立ち上がり時間(注5)とキャリア走行時間(注6)を短縮することが必要です。

従来、電流増倍層にインジウム燐を用いたアバランシェフォトダイオードでは、理論的にも構造的にも、応答速度を制限する要因を低減することはできないと考えられていました。

【本製品の特長】

今回開発したのは、アバランシェダイオードの応答速度を高めるための技術です。素子構造を大きく見直すことで、従来困難と考えられていた40 Gbpsで動作する素子を実現しました。開発した技術の特長は、以下の通りです。

  1. 光吸収層・電流増倍層の大幅な薄膜化

    アバランシェダイオードを構成する光吸収層と電流増倍層を大幅に薄くすることで40 Gbpsでの高速動作を実現しました。本成果は、電流増倍層の厚みと応答速度との関係を示す従来のモデルが正確ではないことを実験によって見出し、10 Gbpsシステムで実績のあるインジウム燐を電流増倍層に用いても、40 Gbpsでの高速な応答速度が可能であることを予測することで生まれました。同時に、大幅に薄くした構造で動作させるために、従来とは異なる薄膜接合形成技術を開発しました。

  2. 光導波路型素子構造の採用

    光吸収層を大幅に薄膜化しても光の利用効率が下がらないように、光が素子に垂直に入射する従来の構造から、光が素子に平行に入射する構造へと変えました。また、光のスポットサイズを収束させて効率的に利用するために光導波路構造を採用しました。これらにより、光ファイバーからの信号は効率的に素子に吸収され、従来構造を上回る光・電流変換効率を実現しました。

【効果】

今回開発したアバランシェフォトダイオードにより、-19 dBm(注7)の低入力光パワーに対して、10-12の誤り率という世界最高の受信感度を持つ、40 Gbps用高感度光受信器を実現しました。高い感度の光受信器の実現により、受信器の前段に光分散補償器が設置可能になるなど、40 Gbpsの信号処理システムの設計自由度を広げることができました。

また、スポットサイズを収束させる機能を持った光導波路構造の採用により、受光素子前段の光学レンズが簡略化され、素子の取り扱いが大きく簡略化しました。

【今後】

今後、素子の製造性・信頼性を確立し、2〜3年後の実用化を目指します。また、さらなる高速化に向けた研究を進めてまいります。

バランシェフォトダイオード(APD)の構造図
図 今回開発したバランシェフォトダイオード(APD)の構造図

以上

用語説明

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 藤崎道雄、本社 川崎市
(注2)電流増倍層:
光によって発生した電子と正孔を、電流として増幅するための層。
(注3)インジウム燐:
InP。III-V族化合物半導体の一種。光通信用半導体デバイス材料として幅広く使われている。
(注4)アバランシェフォトダイオード:
Avalanche Photodiode(APD)。高い電界で半導体中に電子もしくは正孔を走らせることにより、電子や正孔の数をなだれのように増倍させる現象(アバランシェ増倍現象)を利用したフォトダイオード。光吸収により発生した電子や正孔の数を増倍して電流を取り出せるため、PINフォトダイオードに比べて高い感度を有する。
(注5)増倍立ち上がり時間:
アバランシェフォトダイオードの増倍層の中で電流が増加するのに要する時間。
(注6)キャリア走行時間:
アバランシェフォトダイオードの光吸収層をキャリアが走行するのに要する時間。光吸収層が薄くなるほど時間は短くなる。
(注7)dBm:
パワーの単位。-19dBmは、12.6マイクロワットに相当する。

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