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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0028
2004年2月17日
株式会社富士通研究所

次世代光通信システム向け超低消費電力送受信ICを開発

〜 4:1多重化回路と1:4分離回路のチップセットで初めて消費電力1ワット以下を実現 〜

株式会社富士通研究所(注1)は、インジウム燐高電子移動度トランジスタ(InP-HEMT)技術(注2)を用い、毎秒50ギガビットで動作する4:1多重化回路(マルチプレクサ)(注3)と1:4分離回路(デマルチプレクサ)(注4)のチップセットを開発しました。今回開発したチップセットは、フルレート方式(注5)による高い信号品質と動作マージンを持ちながら、消費電力1ワット以下(従来技術の30%に相当)を、世界で初めて実現しています。

今回開発した技術は、毎秒40ギガビットで動作する次世代通信用ICに向けたものです。 本技術の詳細は、2月15日から米国サンフランシスコ市で開催されるISSCC 2004 (International Solid-State Circuit Conference)で発表します。

【開発の背景】

現在の回線容量をさらに10〜100倍に引き上げるために、テラビット級(テラは1兆)の光通信システムの開発が世界中で行われています。その実現にあたり、複数の毎秒40ギガビットの光信号を多重化する波長分割多重(WDM)(注6)方式が有効と考えられています。

WDM伝送方式では、光信号の多重化数と同数の電気信号処理回路が用いられるため、多重化数が増加するに従ってシステム全体の消費電力が増加します。このため、システムを構成する電気信号処理回路の消費電力低減が強く求められていました。

【課題】

しかし、毎秒40ギガビットもの高速信号を処理するマルチプレクサとデマルチプレクサにおいては、信号品質や動作マージンを低下させることなく消費電力を低減することが大きな課題となっていました。

【開発した技術】

今回開発した技術の特長は下記の通りです。

  1. マルチフェーズクロック技術

    回路内部で位相の異なるクロック信号(マルチフェーズクロック)を生成し、それを用いてデータ信号処理を行う回路アーキテクチャを新たに考案しました。このアーキテクチャでは位相制御回路がなくても高い信号品質を保つことができます。そのため、従来回路では必要だった位相制御回路を取り除き、消費電力を削減することができました。

  2. 電圧配分の最適化技術

    トランジスタサイズや各トランジスタの論理動作を考慮した電圧配分の最適化設計により、電源電圧を従来の半分以下(1.5ボルト)まで下げています。

  3. InP-HEMT技術

    高速性に優れたInP-HEMT技術を用いることで、高い信号品質と動作マージンを実現するフルレート方式が採用できました。これにより、クロックの立ち下りエッジのみをタイミング動作に用いる構成が可能となり、マルチプレクサで生成した出力信号の品質向上とデマルチプレクサ回路の動作マージン増大を実現できました。

【効果】

今回開発した技術により、CMOS技術で期待されるような低消費電力で、高速かつ高信号品質が実現することができました。

具体的には、

  1. チップセットとしては世界最小の1ワット以下(従来技術の30%に相当)という消費電力で、毎秒40ギガビット光通信システムでの使用に必要十分な毎秒50ギガビットの動作を実現することができました。
  2. 4:1マルチプレクサでは世界最高の信号品質となるジッタ283フェムト秒(フェムトは1000兆分の1)を、1:4デマルチプレクサではクロックマージン250°を達成しました。

今回開発したチップセットを毎秒40ギガビットの光通信システムに使用することで、システム全体の消費電力を大幅に低減できるものと期待されます。

【今後】

今回開発した技術をもとに、システムの標準候補となる毎秒2.5ギガビットインターフェースに対応した16:1マルチプレクサや1:16デマルチプレクサなど、より高機能・高集積回路の開発に取り組み、テラビット級通信システムの開発に貢献していきます。

以上

4:1マルチプレクサ回路チップ概観写真 図1 4:1マルチプレクサ回路チップ概観写真 (GIF:62KB)
4:1マルチプレクサ回路の毎秒50ギガビット出力信号波形図2 4:1マルチプレクサ回路の毎秒50ギガビット出力信号波形 (GIF:43KB)
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用語説明

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 藤崎道雄、本社 川崎市
(注2)InP-HEMT:
HEMT(High Electron Mobility Transistor)は、バンドギャップの異なる半導体材料の接合界面に生じる電子が、通常の半導体内に比べて高速で移動することを利用した電界効果型トランジスタ。基板にInPを用いることで、より電子の速度の速い構造を実現できる。
(注3)多重化回路(マルチプレクサ):
複数の低速信号を時分割多重して1つの高速信号を生成する回路。光通信システムの送信部で用いられ、信号の時間的ゆらぎ(ジッタ)の少ない高品質な信号を出力することが要求される。
(注4)分離回路(デマルチプレクサ):
一つの高速信号からもとの複数の低速信号を分離する回路。光通信システムの受信部で用いられ、長距離の伝搬によって波形の崩れたデータ信号が処理できるように、データとクロック間のタイミングに関し広い動作マージン(クロックマージン)が要求される。
(注5)フルレート方式、ハーフレート方式:
データ速度に等しい速度のクロック信号を用いる回路方式をフルレート方式と呼び、データ速度の半分のクロック信号を用いる方式をハーフレート方式と呼ぶ。例えば、データ速度毎秒40ギガビットに対するフルレート方式とは40ギガヘルツのクロックを用いる方式であり、20ギガヘルツのクロックを用いればハーフレート方式と呼ばれる。フルレート方式はハーフレート方式と比較して、ジッタの小さい高品質な信号処理が実現できる。
(注6)波長分割多重(WDM):
信号を搬送する光の波長を複数用いることで、一つの光ファイバに複数の光信号を多重する方式。波長の異なる光ビームは互いに干渉しないという性質を利用しているため、多重する光の数を増やすことによって光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることができる。最近では40波以上を多重することができるようになり、高密度WDM(DWDM)と呼ばれている。

関連リンク

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