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次世代大容量フォトニックネットワークによる動画像伝送実験に成功〜GMPLS技術により経済的な広帯域ネットワークを実現〜このたび、日本電信電話株式会社(以下、NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)、日本電気株式会社(以下、NEC、本社:東京都港区、社長:金杉明信)、株式会社富士通研究所(以下、富士通研、本社:川崎市、社長:藤崎道雄)、古河電気工業株式会社(以下、古河電工、本社:東京都千代田区、社長:石原廣司)、株式会社 日立製作所 (以下、日立、本社:東京都千代田区、執行役社長:庄山悦彦)、三菱電機株式会社(以下、三菱電機、本社:東京都千代田区、執行役社長:野間口有)の6社は、次世代の経済的で高速大容量なフォトニックネットワークをマルチベンダ装置環境で構築し、GMPLS(Generalized MultiProtocol Label Switching)技術を用いてGbit/s級の通信回線を自由に制御することに成功しました。 光通信が持つ高速大容量性を最大限利用したフォトニックネットワークは、IP通信や専用線などさまざまな通信サービスを収容する次世代の基幹通信ネットワーク技術として注目されています。本実験では、各社で開発したGMPLS技術を搭載した様々な種類の通信機器を相互に接続して、実用に近い形態のバックボーンネットワークを構築しました。このGMPLS技術を用いたネットワークには、通信回線や通信装置の故障時に予備の回線に自動的に迂回する機能も具備しています。この予備回線は、普段は優先度の低いトラヒックを流してネットワークの資源を有効に利用することができます。このネットワークで、動画像通信実験を行い、エンドエンドでの高速大容量通信を実現しました。 本技術は、高速大容量が要求される次世代ネットワークの高い信頼性と経済性の両立を実現させるためのものです。これにより、IP網での音声伝送やデジタルシネマ等の超高精細映像伝送を、より一層、経済化することが可能となります。 なお、1月26日〜27日に東京都江東区で開催される「ギガビットネットワークシンポジウム2004」(*1)にて、超高精細の動画像通信を動態展示し、この実験結果を公開します。 <背景>ブロードバンドの普及に従い、VoIPやストリーミングなどを用いて、音声や映像をIP網で伝送するサービスが年々成長しており、ネットワークに要求されるトラヒック容量も加速度的に増大しています。 VoIPやストリ―ミングなどの音声や映像は、ユーザ端末でIPパケット化されて、ネットワークに送られます。現在、インターネット上でのストリーミングなどでは、数百kbit/s〜数Mbit/sの音声、映像データ信号が流れていますが、ハイビジョンやデジタルシネマ(フィルムを使わずデジタル形式で保存された映画コンテンツ)級の超高精細映像となると、この数千倍の数Gbit/sのデータ信号を扱う必要があります。これまでのIP網では、IPパケットがメトロ網、バックボーン網と経るに従い、他のユーザからのIPパケットとパケット多重されていました。パケット多重する際にパケット同士の待ち合わせが起こるために、受け手ではIPパケットの到着時間の揺らぎ(ジッタ)が生じ、映像や音声が乱れる原因となっています(図1)。このジッタを低減するためには、アプリケーションの送受信に必要な容量の数〜十倍程度の帯域を割り当てることが必要であると言われています。従って、このようなサービスが普及するに従い、インターネット人口の増加やアクセス速度の高速化以上にネットワークの大容量化が必要となります。そして、これまでの技術の延長では、大幅なコスト増となることが予想され、安価な通信料金水準の維持が難しくなります。 <技術のポイント>高速大容量かつ安価なネットワークを実現するために、MPLS(*2)とGMPLS(*3)という技術が注目されています。MPLSは、IP網の通信品質を制御するための技術であり、GMPLSは、IP網でのMPLSの通信経路設定手法を、パケット、TDM(*4)、光波長、光ファイバという複数の異なるネットワークでの通信経路設定手法に拡張したものです。デジタル通信ネットワーク(TDMクロスコネクト装置を用いる)や、光波長ネットワーク(光クロスコネクト装置を用いる)など、さまざまなネットワークでの通信経路を統一的に制御管理することにより、経済的・高速・大容量のネットワークを実現します。 GMPLSやMPLSでは、電話網のような回線という概念を用いることで品質要求の異なるトラヒックを区別して扱うことができます。MPLS網で遅延やジッタに敏感なアプリケーションのトラヒックを、他のトラヒックと別回線に収容し、GMPLS網の中ではその回線をパケット多重の生じないデジタル通信ネットワークや光波長ネットワークへ収容することで、パケット多重を行う回数を最低限に抑えることができます。これにより、ジッタを低減するための余分な帯域の増加を押さえることが可能となります(図2)。 つぎに、動態展示する検証実験の構成を示します(図3)。この実験系は、複数のメトロ網が大規模バックボーン網に接続された網構成を模擬しています。 メトロ網に相当するMPLS網は、富士通株式会社および古河電工のMPLSルータ(それぞれGeoStream R920、FITELnet-G21)で模擬しています。バックボーン網に相当するGMPLS網は、NTTのHIKARIルータ(IP/波長)(*5)、古河電工のGMPLSルータFITELnet-G80(IP/TDM/波長)、NECのTDMクロスコネクトSpectralWave U-Node(TDM/波長)、三菱電機、日立、富士通研、NTTの光クロスコネクト(波長/ファイバ)というさまざまな通信装置からなる大規模なネットワークを構築しました。それぞれの通信装置間は、1Gbit/sから10Gbit/sのデータ信号回線と通信経路の情報など、通信装置の制御信号をやりとりする制御回線で接続されています。それぞれの装置の制御部には、複数レイヤの処理が可能な制御ソフトウェアを各社で開発・実装しています。( )内は、各社が実装したレイヤを表しています。 GMPLS網では、ルータやクロスコネクトなどさまざまな通信機器が混在するため、各社の開発した通信装置間での相互接続性を確認することが必要です。これまでに、6社は、相互にGMPLSのマルチレイヤのルーティングとシグナリング技術を連携させて、制御ソフトウェア動作の検証を行い、各装置間で自律分散的に通信可能かどうかの情報を収集し、自由に通信経路を設定できることをマルチベンダ環境で実証いたしました。これにより、要求される通信品質に応じて、パケット、TDM、波長、ファイバというさまざまな通信経路を使い分けることが可能となっています。 さらに、このGMPLSバックボーン網では、メトロ網との親和性・高信頼性を実現する2つの機能が実現されています。一つ目は、現在IPパケットのトラヒックを要求される条件で使い分けるためのIP網高度化技術であるMPLSとの連携技術(*6)です。この技術の相互接続については、昨年10月に世界で初めて実証実験に成功しましたが、本検証環境では市販のMPLSルータを用いて実用性を検証しました。二つ目は、ある通信回線や通信機器に故障が生じたときに、自動的に迂回路を設定する機能(リストレーション)です。この機能によりバックボーン網での故障時にも通信が可能になります。本リストレーション技術では、複数の利用中の回線に対して、故障時に用いる予備回線を共有します。また、この予備回線に、普段は優先度の低いトラヒックを流すことで、ネットワーク全体を効率的に利用することができます(図4)。 この検証実験では、MPLS網とGMPLS網を通して、デジタルシネマなどの超高精細な映像信号を転送することに成功しています。これにより、超高精細映像伝送が可能な高信頼で経済的な高速大容量IP網が実現可能であることを実証しました。 尚、本実験で用いたNECおよび日立の装置には、TAO(通信・放送機構)の委託研究の成果の一部が適用されています。 ■今後の予定本検証実験は、次世代フォトニックネットワークの分野で、日本発の世界標準化を推進するために創設したフォトニックインターネットラボ(略称:PIL)(*7)で実施されました。これまでに、標準GMPLSプロトコルについては、PIL内の通信機器だけでなく、海外のベンダも含めた世界の通信機器との相互接続性を実証しています。今後は、新しい通信制御方式など次世代先端技術および新たなネットワークサービスの研究開発とその標準化を推進していきます。 <用語解説>
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