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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0004
2004年1月15日
富士通株式会社

世界初! ドライプロセスを利用した多層カーボンナノチューブの直径制御に成功

富士通株式会社は、株式会社富士通研究所(注1)と共同で、世界で初めて、ドライプロセスを利用した多層カーボンナノチューブ(注2)の直径制御技術の開発に成功しました。ドライプロセスを用いた直径制御に成功したことで、多層カーボンナノチューブのLSI適用に向けた研究開発は、大きく前進したといえます。

今回開発した技術は、45ナノメートル世代以降のLSI多層配線の微細化や低抵抗化を目指したものです。

本研究は、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)より財団法人ファインセラミックスセンターに委託された、経済産業省ナノカーボン応用製品創製技術プロジェクト(NCTプロジェクト)の一環として実施されました。

開発した技術の詳細は、専門誌Chemical Physics Lettersの12月5日号(Chem. Phys. Lett. 382 (2003) 361-366)に掲載されています。

【開発の背景】

多層カーボンナノチューブは、直径0.4から数十ナノメートル、長さ1から100マイクロメートルのナノ構造体で、将来のLSI配線に適した物理的な性質を持っています。たとえば、非常に微細化が進んだLSIにおいて高速な回路を実現するためには、高い電流密度で電気を流す必要がありますが、多層カーボンナノチューブは銅よりも1000倍以上の高い電流密度を可能とします。また将来の微細LSIでは発生する熱をどのように逃がすかということが課題となりますが、多層カーボンナノチューブは銅の約10倍の高い熱伝導率を持つため、配線を通じて熱を逃がすことが可能です。

このような多層カーボンナノチューブを実際のLSI配線に応用するためには、ナノチューブの直径を制御し、高密度にLSI基板上に成長させる技術が必要となります。

【課題】

位置や方向制御が可能なカーボンナノチューブの生成方法として、化学的気相成長法(CVD法)があります。また、ナノチューブの成長を促す触媒金属を微粒子化し、これを直径制御することで、カーボンナノチューブ自体の直径制御もできると考えられています。

しかし、従来の方法では、触媒金属微粒子のサイズを均一にするために有機溶媒中での化学反応を利用するとともに、生成した微粒子を界面活性剤で保護する必要があり、有機物による汚染(コンタミネーション)など、半導体プロセスへの悪影響が懸念されていました。また、触媒金属からのカーボンナノチューブの成長のしやすさ(活性度)という面からも理想的な方法とはいえませんでした。

【開発した技術】

今回新たに、半導体プロセスと整合性の高いドライプロセス(真空装置内での製造工程)による触媒金属の直径制御技術と多層カーボンナノチューブ成長技術を開発しました。開発した技術の特長は、以下のとおりです。

  1. ドライプロセスのみを用いた触媒微粒子直径制御技術

    レーザーを金属に照射することで発生する金属蒸気をヘリウムガスで冷却することで微粒子を生成するレーザーアブレーション装置、発生した微粒子を結晶化させる電気炉、サイズによって異なる微粒子の電気的な移動度の差を利用して目標の直径の微粒子を選別する微分型静電分級器を組み合わせた真空プロセス装置を設計・開発し、世界で初めて、ドライプロセスのみを用いた触媒微粒子の直径制御を可能としました。

  2. 熱フィラメントCVD法による多層カーボンナノチューブ成長技術

    通常のCVD法では、欠陥のない高品質のカーボンナノチューブを生成するのに800℃程度の高い基板温度が必要であるのに対し、基板温度を600℃以下に抑えることができる熱フィラメントCVD法を開発しました。これにより、触媒微粒子の凝集や半導体素子への悪影響を招くことなく多層カーボンナノチューブを生成することが可能となりました。

【効果】

今回開発した触媒微粒子直径制御技術により、触媒金属としてニッケルを用いた場合、結晶性が高く、7ナノメートル、5ナノメートル、3ナノメートルなど任意のナノサイズのニッケル微粒子を、バラツキ10%(幾何標準偏差1.1から1.2)という良好なサイズ分布で得ることができました。この値は金属微粒子の直径制御としても世界最高の水準となります。また、平均直径5.1ナノメートルのニッケル触媒微粒子に対して、生成した多層カーボンナノチューブの外径の平均は5.0ナノメートルとなり、触媒微粒子サイズによる多層カーボンナノチューブ外径制御を実証することができました。

今回開発した技術は、ニッケル以外の触媒金属にも適用可能であり、従来の有機溶媒と界面活性剤を用いた方法に比べ、触媒金属の選択肢を大きく拡げるもので、多層カーボンナノチューブの研究開発の進展に大きく寄与すると考えられます。

【今後】

今後は、触媒微粒子を高密度に堆積することにより、外径の揃ったカーボンナノチューブの高密度成長を実現し、LSIの層間配線(ビア)応用に向けた開発を加速してまいります。

装置概念図

図1 装置概念図

多層カーボンナノチューブ写真

図2 多層カーボンナノチューブ写真

以上

用語説明

(注1)
株式会社富士通研究所:社長 藤崎道雄、本社 川崎市
(注2)
多層カーボンナノチューブ:カーボンナノチューブは、炭素原子が円筒状に結合したナノメートルサイズの直径を持つチューブのこと。多層カーボンナノチューブは、そのチューブが同心円状に複数あるもの。強靭な機械的強度、化学的な安定性、高い熱伝導率、低い抵抗値、高い許容電流密度といった優れた物理的な特長を有している。

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